クルマ好きなら一度は思う(?)「他人と絶対に被らないクルマが欲しい」。そんな気持ちにお答えするべく、所有欲を異常に満たしてくれる2台の劇レアなイタリア製チューコ車をチョイス。まずはランチアのミニバン「フェドラ」を紹介したい。
ランチアの高貴な雰囲気を持つミニバン
できれば他人と被らない車種に乗りたい」と望むクルマ好きもいると思う。そうなると選択肢としては国内外新車の限定車、中古車、もしくはヤングタイマーやヒストリックカーを選ぶことになる。これらに乗れば確かに街中で見かけることは稀だ。しかし、「絶対に被らないクルマを!」となると、そもそも日本では流通していないクルマを選ぶか、正規で販売したけれど絶対数が少なかったクルマを選べば、その望みは達成されるはず。
かくいう筆者はこれまで19台ほど所有してきた(執筆時)が、その中には正規車なのに当時から全く売れず+購入時の残存数一桁というクルマを多く乗り継いできた。具体的にはルノー19TXE(レア度マックスの4ドア)、シトロエンVISA・GT、サーブ900 2.3S(2代目、左ハンドル、ノンターボ、3ドア)、そして今持っているプジョー309SI(エスアイ。日本専売、5ドア右ハンドル)など、現存稼働車が一桁という「フェラーリF40やポルシェ959よりも日本での台数が少ない」クルマたちである。これらは、派手なスポーツカーと違い、いずれも地味な実用車。現地では当たり前でも日本では全く売れなかったクルマなので、知名度はとても低い。FBMなどフランス車イベントに乗りつけても多くの人がスルーしてしまうほどだ。でもマニアや「知っている人」が見れば、「わあ! なんてすごいクルマに乗っているんだ!」と声をかけてくれる。「他人と絶対に被らないクルマ」に乗ると、そんな嬉しさがある。所有欲を異常に満たしてくれるのである。
そこで今回、「他人と被らないクルマ」として2台のイタリア車をご紹介したい。まずはランチアのミニバン、「フェドラ」だ。ランチアのミニバン!? と思うかもしれないが、ランチアは1994年発売の「ゼータ」ですでにミニバンをラインナップしていた。ゼータは、「ルノー・エスパス」に触発されて1994年にフィアット、ランチア、プジョー、シトロエンの4社が共同開発した「ユーロバン」の一つで、実質的にはPSA(プジョー・シトロエン)が開発の主導権を握っていた。ユーロバンは2002年にフルモデルチェンジを行ったが、初代では商用兼用だったのに対して2代目では純乗用となった。車名は「フィアット・ウリッセ」「ランチア・フェドラ」「プジョー807」「シトロエンC8」(初代ではそれぞれウリッセ、ゼータ、806、エヴァシオン)で、2代目もPSAの設計による。
【写真18枚】ランチアの高貴な雰囲気を持つミニバン『フェドラ』の詳細を写真で見る
しかし、高級車ブランドであるランチアのフェドラは、ボディ内外装に質の高いデザインと素材を用いることで、他の3車との差別化に成功している。フェドラは正規で輸入されなかったため絶対数が少ないだけでなく、輸入から10〜15年ほど経っていることからその台数すら漸減している。このクルマも国内残存数一桁は間違いない。
取材した車両は上品なブルーメタに身を包み、車内は座り心地の良いシートが7脚。エンジンは406クーペやXmなどでおなじみの3L V6 24バルブで、アイシン製の4ATを組み合わせる。ファミリー向けミニバンというよりは高級ピープルムーバーといった趣きだ。車内や外観の詳しい説明はギャラリーのキャプションを是非ご覧いただきたい。
(後編に続く)
【Specification】ランチア・フェドラV6 3.0
■全長×全幅×全高:4750×1863×1760mm
■ホイールベース:2823mm
■トレッド(F/R):1570/1548mm
■車両重量:1760kg
■エンジン:V型6気筒DOHC
■総排気量:2959cc
■最高出力:204PS/6300rpm
■最大トルク:27.5kg-m/4500rpm
■サスペンション(F/R):ストラット/トレーリングアーム
■タイヤ(R&F):215/65R15
この記事を書いた人
1971年生まれ。東京都在住。小さい頃からカーデザイナーに憧れ、文系大学を卒業するもカーデザイン専門学校に再入学。自動車メーカー系レース部門の会社でカーデザイナー/モデラーとして勤務。その後数社でデザイナー/ディレクターとして働き、独立してイラストレーター/ライターとなった。現在自動車雑誌、男性誌などで多数連載を持つ。イラストは基本的にアナログで、デザイナー時代に愛用したコピックマーカーを用いる。自動車全般に膨大な知識を持つが、中でも大衆車、実用車、商用車を好み、フランス車には特に詳しい。