ルノー

【比較試乗】スタイリッシュなクーペSUV『ルノー・アルカナ』はE-TECHとMHEVのどちらが買いなのか?

日本車のお家芸だが走りの楽しさはイマイチ。そんなフルハイブリッドのイメージを覆したルノー・アルカナE-TECH。じつは昨年末からマイルドハイブリッド(MHEV)版が登場、つまりもうひとつの異なるハイブリッドが追加されているのだ。果たしてどこが違っていて、どちらが買いなのか? 早速乗り比べてみた!

スポーティな乗り物としてまるで別モノの仕上り

2035年のガソリン車販売禁止に向かって欧州は電動化を推進中だが、エネルギー政策がEUの描くシナリオ通りにならなかった時、技術的に保険をかけておかなかったらそれこそ迂闊という感覚が自動車メーカーにはある。そこがE-TECH(イーテック)という独自のフルハイブリッドをルノーが生み出した背景だ。

ルノーのE-TECH3兄弟の兄貴分となるルノー・アルカナE-THCHハイブリッド。

今回は久々にアルカナE-TECHに横浜で相まみえたが、およそ45km/hの走行条件ではほぼ電気モーターですべてをこなしてしまう。同じかそれ以下の走行負荷になる高速巡航でもエンジンの存在感が妙に希薄で「サボって」くれる。でも登り坂や追越加速のような場面では、電気側のトルクがエンジンのレスポンスを補って、グイっと小気味よく車体を引っ張り上げる。

【写真11枚】仕上がりはまるで別モノ! 2つのハイブリッドをラインナップするアルカナの詳細を写真で見る

全域で力強いパワー感と走行感覚ながら、エンジン単体では出力は94ps/5600rpm、148Nm/3600rpmと、今どき珍しく下がスカスカだ。いわゆるダウンサイジングターボと真逆で、エンジン的に効率の高まる美味しい領域でこそ力を発揮する制御なのだ。つまり郊外路や高速道路で巡航する以外の、街乗りストップ&ゴーといった高負荷仕事は電気が担う。メインモーターが49ps/205Nm、スタータージェネレーターを兼ねるサブモーターが20ps/50Nmながら、動力源の3要素がすべて足し算ライクに働くのはスポーツモードの時。そのキビキビ感とダイレクトな駆動レスポンスは、シンクロすら省いた軽量コンパクトなドグクラッチ式トランスミッションであるE-TECHとその制御に任せられる。ルノーF1のノウハウが生きているのはまさにこのあたりで、だからRSラインのインテリアトリムにも、なかんずく腑落ちもする。

この度新たにラインナップに加わったMHEVのアルカナ。エンジン以外の内外装の装備は基本的にほぼ同じだ。

ところがマイルドハイブリッド(以下MHEV)のアルカナに乗り替えて驚くのは、駆動用リチウムイオンバッテリーも積むとはいえ12Vシステムなのに、48VシステムのE-TECH以上にエンジンが積極的に(無論いい意味で)サボりまくること。もちろん、スタータージェネレーターを兼ねた5ps/19.2Nmごときの電気モーターに任せられる範囲はE-TECHほど広くはない。だがゼロ発進時だけがっつり仕事するタイプというよりは、電気モーターは低圧ターボのように低回転域からバックグラウンドで介入してくる。しかしアクセルペダルを緩めたり離した瞬間に、アルカナMHEVはスパっと小気味よくエンジンを

休ませる鬼コースティングに入る。ちなみにコースティングの有無はタッチモニターの「MySense」ドライビングモード内で、「クルージングON/OFF」で選べる。だからこそE-TECHならBモード(回生ブレーキ強)に入れるであろう下り坂のような局面で、MHEVはパドルシフターでエンジンブレーキをすぐさま発動させることができる。

いわばE-TECHがホットハッチをワンランク穏やかにした「GTグレード」的、ある意味伝統的なルノー・スポール風味であるのに対し、アルカナMHEVの走行感覚は、ひと蹴りしたら慣性や風を捉えて進んでいくキックボードやウルトラライトプレーンに通じるところがある。それでいて再加速時には、電気モーターらしくラグのない加速レスポンスをアテにできる。つまり高負荷仕事は電気に可能な範囲で任せ、元より車重は軽くシャシーは効率よく、スポーツモードではエンジンも電気も総動員する。

結局、制御の根底にある思想は両車ともにまったく一緒だ。なので優劣をつけづらいが、ビシバシに走らせるならE-TECH、質の異なる新たなスポーツ経験をするならMHEVといえる。

【Specification】ルノー・アルカナRSライン(E-TECHハイブリッド)
■全長/全幅/全高=4570/1820/1580mm
■ホイールベース=2720mm
■トレッド(前/後)=1550/1560mm
■車両重量=1470kg
■乗車定員=5名
■エンジン種類=直4DOHC16V
■総排気=1597cc
■最高出力=94ps(69kW)/5600rpm
■最大トルク148Nm(15.1kg-m)/3600rpm
■メインモーター最高出力=49ps(36kW)/1677-6000rpm
■メインモーター最大トルク=205Nm(20.9kg-m)/200-1677rpm
■サブモーター最高出力=20ps(15kW)/2865-10,000rpm
■サブモーター最大トルク=50Nm(5.1kg-m)/200-2865rpm
■燃費(WLTC)=22.8km/L
■トランスミッショッン形式=ドッグクラッチマルチモードAT
■サスペンション形式(前/後)=ストラット/トーションビーム
■ブレーキ(前/後)=Vディスク/ディスク
■タイヤ(前&後)=215/55R18
■車両本体価格(税込)=¥4,290,000

【Specification】ルノー・アルカナRSライン(マイルドハイブリッド)
■全長/全幅/全高=4570/1820/1580mm
■ホイールベース=2720mm
■トレッド(前/後)=1550/1560mm
■車両重量=1380kg
■乗車定員=5名
■エンジン種類=直4DOHC16V+ターボ
■総排気=1333cc
■最高出力=158ps(116kW)/5500rpm
■最大トルク270Nm(27.5kg-m)/1800rpm
■補助モーター最高出力=5ps(3.6kW)/1800-2500rpm
■補助モーター最大トルク=19.2Nm(2.0kg-m)/1800rpm
■燃費(WLTC)=17.0km/L
■トランスミッショッン形式=7速AT
■サスペンション形式(前/後)=ストラット/トーションビーム
■ブレーキ(前/後)=Vディスク/ディスク
■タイヤ(前&後)=215/55R18
■車両本体価格(税込)=¥3,990,000

フォト=望月浩彦 ルボラン2023年4月号より転載

この記事を書いた人

南陽一浩

1971年生まれ、静岡県出身、慶應義塾大学卒。ネコ・パブリッシング勤務を経てフリーランスのライターに。2001年より渡仏し、パリを拠点に自動車・時計・男性ファッション・旅行等の分野において、おもに日仏の男性誌や専門誌へ寄稿し、企業や美術館のリサーチやコーディネイト通訳も手がける。2014年に帰国して活動の場を東京に移し、雑誌全般とウェブ媒体に試乗記やコラム、紀行文等を寄稿中。2020年よりAJAJの新米会員。

南陽一浩

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