テールフィンとSF調装備の見事なマッチング!
キャデラックといえばアメリカを代表する高級車だが、映画の世界でもっとも有名なキャデラックは、高級車やリムジンとしての車両ではない、そう言ってよいだろう。『ゴーストバスターズ』シリーズに登場する、救急車バージョンのキャデラックをベースとした劇中車ECTO-1、別称Ectomobileこそ、それである。ここでご覧いただいているのは、自動車模型専門誌「モデルカーズ」284号(2019年)の劇中車特集に掲載されたECTO-1のプラモデル作例なのだが、まずは当該号から、作者・北澤氏による説明をお読みいただこう。
【画像41枚】劇中の雄姿が蘇るECTO-1作例と、その制作工程を見る!
「1984年のアメリカ映画『ゴーストバスターズ(Ghostbusters)』は、超常現象を研究する冴えない学者3人組が大学を追い出された挙げ句、幽霊退治会社を設立し、強大なパワーを持つ悪霊と戦うという、コメディタッチのSFホラームービーだ。ビル・マーレー、ダン・エイクロイド、ハロルド・ライミスというコメディ名優3人とシガニー・ウィーバーという豪華キャストに加え、ユーモラスなゴーストのデザインや特殊効果の見事さもあって大ヒットし、1989年には続編も製作された。
その劇中で活躍したECTO-1は、特装車メーカーのミラー・メテオが1959年型キャデラックを元に製作した救急車をベースにしている。ホイールベースが延長された専用シャシーにハイルーフのワゴンボディを架装したもので、ルーフラックにレーダーやパラボラアンテナ、サイレン、スポットライト、電磁キャノン砲、エレクトロン発生装置などを搭載、前後にバー型回転灯も装備している。ボディ側面から突き出したダクトやケーブル、無理矢理に括り付けられたハシゴなど、優雅な50sのスタイリングとのミスマッチ感が独特の魅力となり、多くのレプリカが造られるほどの人気車となった。
ECTO-1は2本の映画の撮影用に3台が製作されたが、画面への露出が最も多かった1台は撮影中に大破し、残る2台も撮影終了後は長く放置されていた。現在はすべて修復されて、ファンイベントなどでその姿を見ることができるが、ディテールは撮影時とはかなり異なっているようだ。
ウィンドウ形状の修正で、「?」なボディを化かす!
ECTO-1のプラモデルにはAMTとポーラーライツがあるが、前者は現在入手困難なため、今回は普通に入手出来る後者をチョイス。2002年に発売されたスナップキットで、スケールは1/25。クルマ本体側はシャシーもインテリアもあっさりとしたモールドで、前後の灯火類もすべてメッキ部品だが、劇中車としてのディテールはきちんと再現されている。
このキットで最も問題なのは側面の窓の形状で、ハイルーフ化によって後方がぐいっと高くなっている前ドア窓のサッシ形状がまったく再現されていない。またそのせいで、キャビン後端部の上部サッシがリアエンドに向けてせり上がるような、不自然なラインになっている。ミラー・メテオ以外のメーカーの救急車にはハイルーフではない個体もあり、あるいはポーラーライツは、そうしたECTO-1のレプリカ車を取材してキットを設計したのかもしれない。
作例はルーフ自体は嵩上げせず、窓の開口部を上に2mmほど削り拡げ、上部サッシをプラ板で作り直した。前ドアの上側サッシにカーブをつけ、キャビン後端のサッシを水平に伸ばすことで、実車の流麗なルーフラインを再現出来たと思う。また、ヘッドライトとバンパーの補助灯は刳り貫いて透明化し、’59キャディならではの目ヂカラを表現した。
AMTと比べてどーも今ひとつ、という評価のポーラーライツ製ECTO1だが、手を加えると意外に『化ける』のである」
北澤氏が述べている制作の詳細については、制作途中の写真に添えたキャプションでさらに詳しく述べているので、じっくりとお読みいただきたい。また、工程の続きは後編の記事にて公開する予定である。なお、映画について補足的に述べておくと、文中で触れられている1989年の続編の後、2016年にはリブート版『ゴーストバスターズ』、2021年にはこれとは関係なく1、2作目から続く続編『ゴーストバスターズ・アフターライフ』が公開されている。