岩手山を望む雄大な景色を楽しめる場所に建てられた、日々の生活を癒すための”理想郷”ガレージハウス
宮沢賢治が書き残した物語にたびたび出てくる”イーハトーブ”という地名。氏による造語であり、理想郷を指す言葉だ。それは一般的に岩手のことをイメージしているといわれている。先だってアメリカのニュース情報誌である『ニューズウィーク』誌の”今年行くべき都市”の第2位に盛岡が選ばれたこともあり、世界的にも注目を浴びている岩手県に、ここで紹介するN邸は建てられた。
筆者は長年バイク関係のメディアに携わっており、日本全国はもちろん海外ツーリングなどにも出向くのだが、その経験から岩手を中心とした東北の道は、世界に誇れる最高のロケーションだと思っている。雄大な大自然の中を快走できるルートが無数に存在し、何度訪れても飽きない、まさしく理想郷といえる場所なのである。そんな自然豊かな環境を活かした地に、Nさんの住まいはあるのだ。
「これまでは、盛岡市内の分譲マンションで生活をしていました。マンションでも一戸建てでもメリット、デメリットはあることはわかっていますが、少なくとも駐車場に関しては不便に感じていました。それというのもサイズの大きいモデルに乗り換えたところ、機械式駐車場に入れることができず、600m離れた月極駐車場を借りていたのです。
バイクもハーレーを所有しているのですが、その置き場問題もありました。そこで盛岡の市街地からクルマで北上すること20分の、牧場や農園をされている妻のご両親の土地を分けてもらい、家を建てようということになったのです」とNさんは話してくれた。
年中ガレージや住まいを取材して回っている中で、時々見られる農地や市街化調整区域の宅地化問題。Nさんの場合もそれに当てはまるものであり、建築許可を得るまでにはかなりの労力があったということである。ただ苦労をした分、よいものは作られる。これは無意識的な法則として存在していると私は考えている。
周囲を緑に囲まれたN邸。まず注目したのは大切にしている限定モデルのハーレーを収めるために作られた、ビルトインガレージだ。大柄な車格を持つハーレーが悠々と収まり、さらにはアルコールが入ったグラスを傾けながら、ゆったりとくつろぐこともできる広々とした空間が持たされている。北国である岩手はバイクに乗れるシーズンも限られている。そんなオフシーズンでもバイクの存在を愛でるためのガレージをこしらえた、というわけである。
居住スペースへと場所を移すと、目いっぱい天井高を引き上げた大空間が現れた。窓越しには草原が広がり、圧倒的な開放感を得られている。「家という場所は日常生活を送る場所ですが、そこに非日常を感じられるように設計をしてくれた『フリーダムデザイン』さんにオーダーしました」と話すNさん。どの部屋を拝見してもテーマとストーリーを持たせておりメリハリがあり、施主の希望を上手く形に落とし込んだイーハトーブに相応しい素敵なガレージハウスとなっていた。
◆Planning Data
施 主:Nさん
家 族:ご夫婦
所在地:岩手県滝沢市
竣 工:2023年2月
敷地面積:487.9平米
延床面積:207.07平米
ガレージ部面積:15平米
構 造:木造SE工法
外装/内装仕上げ:漆喰/漆喰
愛 車:2016年式 ハーレーダビッドソン・CVOストリートグライド
設 計:株式会社フリーダムデザイン
◆Owner’s Check
・ここがお気に入り
仲間が集まりワイワイ楽しめるところや、日常に非日常を感じることができることなど。
・ちょっと失敗
大満足です。
・これからの夢
ガレージにバーカウンターを設置するなど、さらに非日常を求めていきたいです。
・読者へのアドバイス
建坪や坪単価を考えると諦めてしまいがちなビルトインガレージですが、思いきって作ることで生活に大きな彩りを与えてくれます。クルマ、バイク好きならぜひガレージを!
◆Comment from an Architect:フリーダムデザイン 小池康也さん
オーナー様のこだわりをしっかりと組み取り、それを設計図に落とし込むことで、大変魅力的な空間を生み出すことができました。環境も良く、これから四季折々の風景や空気を楽しみながら、人生の時間を楽しんでいただければと思います。
株式会社フリーダムデザイン 岩手県盛岡市本町通3-5-8
Phone:019-681-6255 https://www.freedom-design.biz/
『ガレージのある家 Vol.50』掲載