魅惑の自動車カタログ

フルチョイス・システムの説明に腐心!「初代セリカ・クーペ&LB」【魅惑の自動車カタログ・レミニセンス】第24回

フロント周りの造形を統一した中期型

1970年1月に登場した初代セリカは、我が国初のスペシャリティカーである。新奇で見栄えの良いデザインと、実用的な4座のキャビンを備えた、スポーツカー風味の乗用車――というコンセプトは、アメリカのフォード・マスタングやシボレー・カマロなど、いわゆるポニーカーを日本的に翻案したものだ。

【画像28枚】バナナテールがカッコイイLBほか、初代セリカの詳細を見る!

当時の国産車としてはきわめて斬新かつ個性的なスタイリングは、前年の東京モーターショーに出品されたコンセプトカーEX-1のモチーフを量産化したもので、メカニカル・コンポーネンツは、同時に開発された中級乗用車カリーナと共有している。DOHCの2T-Gエンジンを積むトップグレード・1600GTを唯一の例外として、グレードを設定せずST/LT/ETの3種の外装と8種の内装、1.4L/1.6L/1.6Lツインキャブの4気筒OHVエンジン3種、3AT/4MT/5MTの3種のトランスミッションを自由に組み合わせる、“フルチョイス・システム”というユニークな販売方法も話題で、登場するや大ヒットとなった。

1972年にはマイナーチェンジでテールランプのデザインや燃料タンク/給油口/スペアタイヤ位置の変更を行った後、1973年には、ハッチゲートを持つリフトバック(セリカLB)を追加。これは前年の東京モーターショーで発表した「SV-1」を市販化したもので、前述のEX-1がセリカとはだいぶかけ離れた形であったのと比べると、LBのスタイリングはSV-1にかなり近かった。

セリカLBはファストバック・スタイルを採用し、ルーフからなだらかなスロープを描いたラインがボディ後端でスポイラー状に持ち上がる形となっているが、これもやはりマスタングからの影響と言える。リアエンドは5本の縦型テール、フロントマスクも下あごのしゃくれた独自の形状のものが与えられていた。

このLB用のエンジンには1.6LのOHVとDOHCがあり、クーペ同様に1600GTが設定されていたが、LB専用のトップグレードとして、2L DOHCである18R-Gを搭載した2000GTも登場している。この18R-GはすでにマークⅡに採用されていたエンジンで、最高出力145psを発揮。2L車にはOHCもあり、このエンジンはクーペにも搭載された。

クーペのダッシュボード一覧だけで、これだけ壮観なものとなってしまう。もっとも、普通のクルマでもグレードによって装備やメーターが異なるところ、セリカではそれらにいちいち「デラックスS」「デラックスSW」などと名前をつけているのだから、これも当然であろう。

1974年1月のマイナーチェンジでは、クーペのフロントエンドもLBのそれと統一され、またクーペにも2000GTを設定、さらに2L OHCにはEFI仕様も新設されている。そして1975年のビッグマイナーチェンジでは、クーペ/LBともにボディサイズを若干拡大。すでにモデル末期である初代セリカがさらに長く生き延びたのは、排ガス対策のせいもあったようだ。LBはボディ前後のデザインも変更し、特徴的な5本テールは3本に。このときLBには2LのGTとGTVに、衝撃吸収タイプの大きなバンパーがオプション設定された。こうしてマイチェンを繰り返しつつ、初代セリカは1977年まで生産されたのである。

あまりスペシャリティなイメージはない、説明に徹したカタログ
さて、ここでご覧いただいているカタログは、クーペのフロント周りがLBと統一されてからのものだ。カタログの表4にも「このカタログの内容は昭和49年1月現在のもの」と断り書きがされているので、1974年1月のマイチェンと同時に作られたものと思ってよいだろう。サイズは297×246mm(縦×横)、表紙を含めて全34ページである。

カタログの内容としては特に変わったところはなく……と言うより、スペシャリティカーのカタログにしては、イメージの訴求に傾いたページがあまりなく、グレードと装備の組み合わせを説明することに、最初から最後まで徹しているような印象がある。初代セリカのフルチョイス・システムは、デビュー当初にしか存在しなかったように思っている方も少なくないようだが、このシステムはモデル末期までしっかり継承されている。また、LBにもフルチョイス・システムは適用されていた(選択の幅はクーペより狭いが)。

それはともかくとして、その組み合わせが完全にオーナーの自由であるというのがフルチョイス・システムの所以であるから、装備やメカニズムの設定に関する説明は、逆に簡単なものとなるのが本当のはずである。それがそうでないというのは、フルチョイスとは言っても……という事情を問わず語りしているのがこのカタログであると言えるだろう。あるいは登場から3年の間に、フルチョイス・システムが分かりづらいという声が少なくなかったため、こうした構成のカタログが作られたのかもしれない。

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