黒岩知事が提唱する「神奈川版ライドシェア」とは?
やっぱり、コンちゃんと一緒に現地確認に行ってみよう。11月上旬、神奈川県三浦市周辺を巡ってみることになった。コンちゃんの地元である神奈川県で、なにやら妙な動きがいろいろあって筆者としても即実行ということになったわけだ。
何かといえば「ライドシェア」についてだ。最近、なにやら話題が多い「ライドシェア」。各方面から筆者にもいろいろ問い合わせが来る。
なぜならば、筆者は2010年代初頭にアメリカで生まれた「ウーバー」や「リフト」といったアメリカ型ライドシェアについて、これまで様々な現地取材をして様々な媒体向けに記事化しているからだ。
また、日本ですでに行われているライドシェアともいえる、自家用有償旅客運送については、全国各地での取材に加えて、福井県永平寺町での町の施策に直接係わる、永平寺井エボルーション大使として、永平寺町での自家用有償旅客運送「近助タクシー」の立ち上げにも深く係わっている。自家用有償旅客運送とは何かなどについては、追って説明する。
そうした永平寺町での活動にも、コンちゃんと一緒に関東圏から福井までロングドライブをすることがある。そんな筆者のバックグランドがあるため、「日本でのライドシェアはこれからどうなるのか?」といった問い合わせが来るというわけだ。
一例としては、テレビ朝日系のインターTV番組「ABEMA Prime」にゲストで呼ばれ、他局の番組でも何度かご一緒しているロンドンブーツ1号2号の田村淳さんのMCで、30分間強のディスカッションを六本木のスタジオで行った。正直なところ、レギュラー出演者が多く、またオンライン参加のゲストもいたため、十分な議論に至らなかったと反省しているが……。
その際、「神奈川版ライドシェア」を念頭に、タクシー事業との整合性や革新性について話が及んだ。「神奈川版ライドシェア」とは何か?
これは黒岩知事が2023年9月にフジテレビの番組で初公開したもので、ここでいう「ライドシェア」とは、普通免許を持つ人が乗用車をタクシーのように利用者から料金を受け取って行う旅客行為のことだ。
一般的には、「白タク」と呼ばれるように、白ナンバーの乗用車をタクシーのようにして使うことは違法だ。アメリカの「ウーバー」や「リフト」は当初、慈善行為として料金ではなく寄付というい形で実施し、その後にアメリカの各自治体と事業化への道を探ってきたという経緯がある。
一方、日本では公共交通機関が少ない地方や中山間地域、または福祉目的として自家用車を有償で旅客目的で使うことを認めている。これが、自家用有償旅客運送だ。
ただし、こうした例外を認めるには、地域社会で交通事業者、自治体、地域住民がじゅうぶんに議論することが必要になるのは当然のことである。この自家用有償旅客運送の枠組みを踏まえて、神奈川県では県内での事前調査を独自で進め、最初に検証する地域として三浦半島の南部に位置する三浦市を選定した。
実際に三浦市にコンちゃんと一緒に行ってみた
そんな三浦市だが、人口は約4万人と以外と少ない。三浦半島といっても、逗子市、葉山町、そして横須賀市の面積が大きく、三浦港は三浦半島の最南端で面積は32平米キロメートルと小さい。
久しぶりに訪れた三浦港では、まず三浦市役所で神奈川版ライドシェアについて意見交換をした。市役所がある地域は、海岸線にほど近くアップダウンがかなり急な地形になっている。
次に、ライドシェアの必要性があるとされる、三崎港周辺の飲食街の様子を見に行った。三浦市によると、夜間になると三崎漁港周辺はタクシーがいないという。配車してもらいたくても、夜間のタクシー営業がないため、ここにライドシェアを導入したはどうか、という提案である。三崎漁協周辺をいろいろ見てから、城ヶ島大橋を渡って城ヶ島を巡ることにした。
城ヶ島には以前、海洋深層水を使ったホテルの日帰り温泉があり、家族で何度か来たことがある。身体の芯から温まるとして、家族では評判が高かったが、そのホテルはもう営業していないようだった。また、以前何度か通った、いかにも大衆食堂という感じの飲食店の姿もなく、その周辺は時間貸しパーキングエリアに変わってしまっていた。
そんな中、スマホで情報収集して現在の人気店を洗い出し、ランチへ。以前から好物の、マグロカツが美味で大満足。それから、三浦市周辺のタクシー事情を調査するため、地元のタクシー事業者の様子を確認したり、タクシー事業者の親会社である鉄道会社関係者や、神奈川県タクシー協会関係者らと、コンちゃんを移動オフィスとして、電話やメールで神奈川版ライドシェアに対する事実確認を行った。
横浜市内を目指す帰路では、京浜急行の三崎口駅や三浦海岸駅の周辺状況を把握するために、コンちゃんとウロウロ。さらに、横須賀市に入ってからは久里浜港に寄った。ここからは、東京湾を隔てた対岸の千葉県金谷港までカーフェリーが運航している。このカーフェリー、幼少期には、いまはなき川崎~木更津間のカーフェリーを含めて、家族でよく使ったが最近はご無沙汰だ。
近い将来、コンちゃんと一緒に久里浜~金谷間のショートトリップに出かけてみようかと、久里浜カーフェリーターミナルの前でふと、考えた。こうして、三浦市周辺での現地取材を終え、ディナータイム。
向かったのは、横浜の伊勢佐木町。JR関内駅に近い、伝統あるアーケードである。ここにも幼少期から通っているが、きょうのお目当ては北海道のスープカレー。以前、小樽や旭川で入ったお店の横浜店で、相変わらずのボリューム満点。コンちゃんには近くの時間貸しパーキングで一息ついてもらった。
はてさて、ライドシェアについては、国は”実施ありき”といった雰囲気でどんどん話が進んでいるように感じる。これが本当に、日本の地域社会にとって良いことだろうか?
今後も、コンちゃんと一緒にライドシェアの現場巡りをしてみようと思う。
この記事を書いた人
専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。日本自動車ジャーナリスト協会会員。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、自動運転、EV等の車両電動化、情報通信のテレマティクス、そして高齢ドライバー問題や公共交通再編など。