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【海外試乗】2+2シートの採用と荷室も拡大されるなど実用性もアップ。コンセプトを一新し着実な進化を遂げた2代目“GT”「メルセデスAMG GT」

初のAMG独自開発モデルとして2014年にデビューしたAMG GTが、2代目へと進化した。その最大の目玉は、2+2のシートの採用と荷室の拡大で実用性が格段にアップしたこと。さらに動力性能とハンドリング性能も向上し、スポーツ性と快適性も両立しているのだ。

走りの実力は明確にレベルアップしている

SLS AMGの後継モデルとして2014年に登場した初代AMG GTは、ハイパフォーマンスカーとして一定の地位を築いた。パフォーマンスや価格的に競合するポルシェ911と、ビジネス的に完全に互角の戦いができたかというと、必ずしもそうとは言えないが、ニュルブルクリンク24時間レースでの戦いぶりや、F1世界選手権においてセーフティカーとして走る姿などが、その名を世界中に知らしめたことは間違いない。

ロングノーズ/ショートデッキな印象は薄れたが、滑らかなルーフラインにより、サイドビューは一層伸びやかになったように感じる。

豪快なエキゾーストノートを轟かせるAMG製V8ツインターボによる走りは、素晴らしくダイナミックで、特にGT Rやブラックシリーズは、スポーツカー好きのハートを射抜くだけのスポーティネスとエモーションを備えていたが、2022年に生産が終了していた。 そして今年8月のペブルビーチで2代目が発表。今回はヨーロッパ市場でのデリバリーに先駆けて、スペイン・グラナダで行なわれた国際試乗会で、その走りを体験することができた。

今回もAMG独自開発となるニューAMG GTは、先に登場したAMG SLとプラットフォームを共用している。全長4728mm、全幅1984mm、全高1354mmのサイズは、先代よりひと回り大きくなった。2700mmのホイールベースも70mm伸び、AMG SLと同一である。

キャビンは初代より明らかに大きくなった。だがリアウインドーの傾斜はより強まり、一層エレガントなリアビューを実現している。

初代とパッケージング面で最も異なるのは、2シーターではなく、「2+2」の4シーターとなった点だ。リアシートは身長150cm以下という制限があるので、実質的に子供用または小柄な女性用といったところだが、実用性が大幅に向上したことは間違いない。

ラゲッジスペースも、通常時で321L、リアシートバックを倒せば、最大で675Lに拡大し、ちょっとした旅行程度の荷物であれば、全く問題なく積載可能となっている。ちなみにリアシートは、レス仕様も選択可能だ。

フロントグリルの開口部はメルセデス最大。下部に高速域でせり出すカーボン製アクティブエアロダイナミクスを装備する。

実用性の向上とともに、新型の開発段階で重視されたのが快適性だ。先代もスポーツカーとして快適性が低いわけではなかったが、新型は乗り心地を一層向上させて、卓越したGT性能を実現した。

スポーツカーにとってとても重要なデザインは、基本的に初代のイメージを継承しながら、最新のメルセデスのデザインフィロソフィ「センシュアル・ピュリティ」に沿ったものとなっている。

2+2となったことで、キャビンが大きくなり、初代のような典型的なロングノーズ/ショートデッキスタイルではなくなっているが、その分ルーフラインをリアに向かって滑らかに傾斜させることが可能になり、エレガントなイメージを盛り込むことに成功。

リアディフューザーの容量は、初代の約2倍に拡大した。

同時に容量を約2倍に拡大したディフューザーや、フロントバンパー下部のアクティブエアロダイナミクス、5段階に可変するアクティブリアスポイラーとの組み合わせで、空力性能も大幅に向上。速度域を問わず低ドラッグ/高ダウンフォースを実現した。ちなみにCd値は0.32と、スポーツカーとしては低い値を達成している。

インテリアは、AMG SLとの共通点が多く見られるものの、マテリアルの使い方や色使いにより、AMG GTらしいスポーティネスに溢れた空間に仕立てられた。

今回試乗した新型AMG GT63 4マチック+クーペは、585psと800Nmを発揮するAMG製4L V8ツインターボを搭載。エンジンや9速ATなどの制御ソフトは、新たにゼロから開発し直された。

今回の試乗車は、市場導入時に最初に用意される「AMG GT634マチック+クーペ」。最高出力585ps/5500-6500rpm、最大トルク800Nm/2500-5000rpmを発揮するAMG製4L V8ツインターボを搭載し、9速ATのAMGスピードシフトMCT9Gトランスミッションを組み合わせた電子制御フルタイム4WDの仕様である。

アルミニウムやマグネシウムといった軽量素材をふんだんに使用したというが、車両重量は1970kgと、1700kg前後だった初代と比較すると約270kgも重くなっている。だが、実際にドライブしてみると、そんなことは微塵も感じさせない、凄まじい加速と俊敏なハンドリングに驚かされた。

ワインディング路でのスポーティネスは驚異的

今回はグラナダの旧市街を起点に、市街地と高速道路を経由して、北東の山岳地帯や、スキーリゾートとして有名なシエラ・ネバダ国立公園のワインディングロードなどを、合計500kmほど走行したのだが、その走りの実力は、初代から明確なレベルアップを果たしていることが感じられたのだ。

インパネ周りのデザインは、AMG SLとの共通点も多い。センターディスプレイはドライバー側に6度傾いている。

まず街中では、コンフォートモードを選択しているかぎり、とてもジェントルで快適な走りが味わえる。さすがに全幅が2m近いので、道幅が狭い路地などでは若干気をつかうが、フロントタイヤと逆位相に最大2.5度ステアするリアアクスルステアリングのおかげで、取り回しは悪くない。

高速道路では、まさにグランドツーリングカーとしての本領が発揮される。動力性能は余裕たっぷりで、静粛性も含めて快適性はすこぶる高く、直進安定性とステアリング操作に対する正確性が極めて高いので、100km/hで走行していても50km/h程度に感じられるほど安心感が高い。これならアウトバーンを200km/h超で走行しても鼻歌交じりだろう。

ラゲッジスペースは通常時で321L、左右一体のリアシートバックを倒せば、675Lに拡大する。前後方向に長いので、2人乗車でゴルフバッグ2個は問題なく積めそうだ。

そしてワインディングロードでは凄まじくダイナミックな走りが楽しめた。走行モードをスポーツやスポーツ+に入れたときのスポーティネスは驚異的。0→100km/h加速が初代ブラックシリーズと同じ3.2秒というのは伊達ではない。また新たに開発し直したというV8エンジンや9速ATの制御も、パワートレインのさらなる高効率化と高レスポンス、そしてスムーズネスを実現している。

さらに素晴らしいのは、スタビリティの高さだ。新型は4輪のショックアブソーバーの油圧ラインを、前後および左右で繋ぎ、さらに油圧を緻密に制御することで、減衰力に加えてロールやピッチングを最適にコントロールする、「アクティブロールスタビライザー付きAMGアクティブライドコントロールサスペンション」と、AMGパフォーマンス4マチック+、そして卓越したエアロダイナミクスが、この圧倒的なスタビリティを実現しているのだ。

アクティブリアスポイラーは、車速に応じて5段階に角度が変わる。約80km/hでせり上がり、約60km/h以下で閉じる。マニュアル操作でも可能。大型リアウイングが装着されるAMGエアロダイナミックパッケージ装着車は固定式となる。

ビークルダイナミクスの開発を主導したAMGのレネ・シュチェペック氏は、「新型のキーワードは“高効率”です。63のパフォーマンスレベルは、先代のGT R以上を実現しています。同時に高い実用性と快適性も兼ね備え、スポーティネスとGT性能の双方をカバーするモデルに仕上がりました」と自信を見せた。

最初からこれほどの完成度で登場したとなると、2代目AMG GTは、果たして今後どこまで進化するのか、末恐ろしくさえ感じる。2代目が初代を超える名声を手に入れるのは、おそらく間違いない。

【SPECIFICATION】メルセデスAMG GT63 4マチック+クーペ
■車両本体価格(税込)=—
■全長×全幅×全高=4728×1984×1354mm
■ホイールベース=2700mm
■トレッド=前:1683、後:1686mm
■車両重量=1970kg
■エンジン型式/種類=─/V8DOHC32V+ツインターボ
■内径×行程=—
■圧縮比=8.6
■総排気量=3982cc
■最高出力=585ps(430kW)/5500-6500rpm
■最大トルク=800Nm(81.6kg-m)/2500-5000rpm
■燃料タンク容量=70L(プレミアム)
■燃費(WLTC)=—
■トランスミッション形式=9速AT
■サスペンション形式=前後:5リンク/コイル
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前:295/35ZR20(10.5J)、後:305/35R20(11J)

リポート=竹花寿実 フォト=メルセデス・ベンツAG ルボラン2024年1月号より転載
LE VOLANT web編集部

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