BMW

【国内試乗】ICEとBEVを同時にリリース。アナタの期待を裏切りません!「BMW・5シリーズ」

先月、国際試乗会の第一報をお伝えした新型5シリーズが、早くも日本上陸を果たした。嬉しいことに海外では試乗が叶わなかったICEモデルとBEVモデルを同時に借りだすことができた。果たして気になるそのパフォーマンスはいかに?

BMWならではの理想的重量バランス

新型5シリーズの国際試乗会ではBEVのi5しか試すことが出来なかったので、内燃機(ICE)を積んだモデルに乗るのはこれが初めてだった。動き出した瞬間に「軽っ!」と思わず口走ったその印象は、あまりにも当たり前かつ稚拙過ぎて自分でも呆れた。
念のため、今回の試乗車である523iエクスクルーシブとi5M60xDriveの車両重量を車検証で確認してみる。前者が1810kg、後者が2390kgで、その差は580kgもあった。ついでに前後の重量配分も調べてみたら、小数点以下を四捨五入すると前者が52:48、後者が50:50だった。523iだって後輪駆動にしては上出来なのだけれど、i5はBMWの大好物である理想的重量バランスを達成していた。相変わらずのこだわりもここまで来るともはや痛快だ。

左がBMW 523iエクスクルーシブ、右がBMW i5 M60 xDrive。どちらも、圧倒的な安定感と磐石な走りを提供する。

523iに搭載されるエンジンは基本的に従来型と同型式ではあるものの、ターボやバルブの制御プログラムを刷新。加えてツインインジェクションのミラー・サイクルとしている。さらに48Vのマイルドハイブリッドとも組み合わされて、190ps/310Nmを発生する。全般的に高効率と低燃費でありながら、過給機とモーターによってダイナミックな動力性能も両立するという、最近のICEのトレンドをなぞったユニットである。
しかしながら実際に走らせてみると、例えばメルセデスの直列4気筒よりも明らかにスムーズな回転フィールを感じる。4気筒エンジン特有の振動やザラザラした感触は皆無であり、少し大袈裟に言えば6気筒に近い回り方をする。つまり右足を深く踏み込むことが楽しくなるチョクヨンである。

従来モデルに対し、より低燃費かつダイナミックな走りを実現する523i。また、新型5シリーズには、車載カメラを使用した全方向(前後&左右)記録可能なBMWドライブレコーダーも標準装備。前方カメラを使ってドライビング中に前方の美しい景色を記録することも可能だ。

第一印象が「軽っ」で、確かにi5よりはずっと軽いのだけれど、4気筒搭載セダンとしては1810kgという車両重量は決して軽量な部類に入る数値ではない。そうなると190ps/310Nmそこらのパワースペックで過不足ないのか心配になっても当然である。ところがその加速感は数値をはるかに上回るもので、瞬発力はまったく問題ないどころか、エンジン回転の上昇とともに伸びのいい加速が味わえる。そもそもBMWの(“ツインターボ”ではなく)“ツインパワー・ターボ”はきれいな線形の出力特性を示すユニットだが、モーターによる上乗せ分がまるでそこに上手に染み込んでいるようで、電気的サポートを受けている印象はほとんど感じられない。前後重量配分だけでなく、エンジンにも一家言あるBMWらしいセッティングである。

Cピラー下部にあるエンボス加工された数字の5。

5シリーズの重量がそこそこ重い理由のひとつは、ボディサイズにあると考えられる。ボディサイズを従来型と比較すると、新型は97mm長く32mm幅広く36mm背が高く、ホイールベースは20mm長くなっている。これにより、全長はついに5mを、全幅は1900mmを超えてしまった。ホイールベースはかろうじて3mを切っているものの、堂々たるボリュームである。もし5シリーズがBEVと共有のボディではなくICE専用だったら、もう少し小ぶりにできたかもしれない。ホイールベース内にバッテリーを敷き詰めるというBEVの宿命は、ICEでも共有しなくてはならない結果だと思われる。

キドニーグリルには夜間走行時にライトアップするBMWアイコニックグローを備える。

5シリーズはホイールベースのみならず、前後のオーバーハングも長い。ホイールベースとオーバーハングは、操縦性の観点からすれば短ければ短いほどいい。これまでもBMWは、エンジンをできるだけ後方に配置して、特にフロントのオーバーハングが短いプロポーションにこだわってきた歴史がある。ホイールベースの長さは後輪操舵などの最近の電子デバイスによって相殺できるようになったけれど、長いオーバーハングはやっかいだ。ホイールベースよりも外側が長く(=重く)なれば、ピッチやヨー方向の動きに対してひきずるような悪さをする場合があるからだ。

ICEモデルにはいずれも2L直4のガソリンおよびディーゼルモデルをラインナップ。

試乗車の523iにはオプションのコンフォート・ドライビング・パッケージ(36万8000円)が装着されており、電子制御式ダンパーや後輪操舵が使える仕様だった。おそらくこれらのデバイスの効果もあって、懸念していたオーバーハングの長さはほとんど気にならないどころか、旋回中はボディサイズすら小さく感じる回頭性を披露した。フロントがイン側へ向けて回り込むように入り、しっかりとトラクションがかかった後輪によって後ろから押されるように向きを変えるターンインでの所作は、まさしくBMWのそれだった。

これぞまさしくBEV版のM5

i5のM60 xDriveは新型5シリーズの事実上のトップモデルである。“xDrive”の車名が示すように、フロントに261ps、リアに340psを発生するモーターをそれぞれ置く4WDの駆動レイアウトを採用する。システムトータルでの最高出力は601ps、最大トルクは820Nmで、パワースペックはスポーツカー並みである。

i5 M60 xDriveは、グリルがブラックアウトされ内外装に専用の装備が施される。さらにアダプティブMサスペンションプロフェッショナルを標準装備し、電気自動車の特性を最大限に活かした新時代の「駆けぬける歓び」を実現。

電子制御式ダンパーや後輪操舵は標準装備され、アクティブ・ロール・コントロール機能を備えた電制制御式スタビライザーを含むアダプティブMサスペンション・プロフェッショナルまで完備する。
ドライブした印象は、国際試乗会でのそれと変わらなかった。直進でも旋回でも、基本的には圧倒的な安定感を誇り、極めて盤石な走りである。特に四輪の接地性の高さには目を見張るものがある。直進安定性が抜群によく、いっぽうでターインからの過渡領域、旋回姿勢、そしてクリッピングポイントを過ぎてからの再加速といういずれの段階においても、タイヤが路面をしっかり掴んで離さず、安心してステアリングを握っていられる。これは主に、前後の駆動力配分を随時最適化するxDriveと電制スタビライザーの恩恵に因るところが大きい。特にロール方向の制御が緻密で、それでいてあくまでスムーズな動きにしているところが絶妙だ。デバイスによってコントロールされている感触は薄く、いわゆる「運転が上手くなったように感じる」味付けである。事実、自分の運転スキルだけだったら到底試さないような旋回スピードでコーナーをクリアしていた。

M60 xDriveの加減速やハンドリングのコントロール性の高さにはどことなく既視感があって、あらためて日本で試乗してそれがM5だと気が付いた。このクルマはBEV版のM5だと思えばすべてに合点がいったのである。
新型5シリーズは、ICE仕様に乗ればおそらく皆さんの期待を裏切らない走りになっていると思う。その風味が、BEV仕様でも味わえるところは、7シリーズとi7の関係に酷似していた。

【SPECIFICATION】BMW 523iエクスクルーシブ
■車両本体価格(税込)=7,980,000円
■全長×全幅×全高=5060×1900×1515mm
■ホイールベース=2995mm
■トレッド=前:1635、後1670mm
■車両重量=1760kg
■エンジン形式/種類=B48B20P/直4DOHC16V+ターボ
■総排気量=1998cc
■最高出力=190ps(140kW)/5000rpm
■最大トルク=310Nm(31.6kg-m)/1500-4000rpm
■トランスミッション形式=8速AT
■燃料消費率(WLTC)=14.4km/L
■サスペンション形式=前:Wウイッシュボーン/コイル、後:マルチリンク/コイル
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前後:225/55R18

【SPECIFICATION】BMW i5 M60 xDrive
■車両本体価格(税込)=15,480,000円
■全長×全幅×全高=5060×1900×1505mm
■ホイールベース=2995mm
■トレッド=前後:1625mm
■車両重量=2360kg
■モーター形式/種類=─/交流同期電動機
■モーター最高出力=前:261ps(192kW)/8000rpm
■モーター最高出力=後:340ps(250kW)/8000rpm
■モーター最大トルク=前:365Nm(37.2kg-m)/0-5000rpm
■モーター最大トルク=後:430Nm(43.8kg-m)/0-5000rpm
■バッテリー種類=リチウムイオン電池
■バッテリー容量=70.2kWh
■一充電航続可能距離(WLTC)=455km
■サスペンション形式=前:Wウイッシュボーン/コイル、後:マルチリンク/エア
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前:245/40R20、後:275/35R20

問い合わせ先=BMWジャパン 0120-269-437

【ANOTHER RECOMMEND】MERCEDES-BENZ E-CLASS(メルセデス・ベンツEクラス)

常に時代に先駆けて革新的な技術を採り入れ、世界のプレミアムセダンの指標とされてきた日本導入が待たれる新型Eクラス。今年7月の海外試乗記ではその優雅な乗り心地(オプションのエアサス装着車)にリポーター陣も絶賛。

リポート=渡辺慎太郎 フォト=郡 大二郎 ルボラン2024年1月号より転載
LE VOLANT web編集部

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