自動車メーカーの思想や進むべき方向性を如実に示すのが販売の最前線だ。メルセデス・ベンツ、BMW、そしてアウディの最新ショールームを取り上げ、それぞれの個性や魅力を掘り下げながら「いまとこれから」を感じてみたい。最後の3店舗目は、アウディ編。
充電するひと時を含めてアウディ流プレミアムを
単なる正規販売店ではない。2023年10月にオープンしたアウディ八王子の店長、木村敬之氏は「チャージングハブ」としての社会的意義を強く推した。敷地面積1150.42平方メートルの広大な敷地には新車から認定中古車(トリプルA)までがずらりと並ぶものの、最大の特徴は社屋の屋根一面にソーラーパネルを設置して蓄電していること。それはパワーエックス社の蓄電池型超急速EV充電器「ハイパーチャージャー」で活用される。自動車業界では記念すべき初導入であり、アウディウルトラチャージャーとして稼働する。2つのポートを持ち、1台充電時の最大出力は150kW、2台同時でも1台あたり最大120kW(合計240kW)という高出力での充電が可能となる。充電スピードは想像以上に速く、みるみるうちに電池残量の数字が上がっていくのには驚く。生活圏内にハイパーチャージャーがあれば、自宅に充電設備が不要だと思えるほど。実際、同店ではそんな乗り方をするユーザーも出てきている。
アウディは2026年以降に投入する新型車をすべてBEVに、さらに2033年を最終期限として内燃機関の生産を終了すると発表している。日本でも矢継ぎ早にe-tronモデルの拡充が進むが、同店はその電力供給を支える意味で極めて重要な拠点だと言える。
「24時間いつでも充電できる体制を整えました。アウディにお乗りの方ではなくても、プレミアムチャージングアライアンス(PCA)の会員さまを対象に、VWやポルシェも大歓迎。手続きはスマホのアプリで完結するので簡単だし、営業時間内ならショールームでくつろぐことも可能です」
ショールームは落ち着いた雰囲気で、過度な売り込みをされることもない。充電スピードの速さを含めてまったくのストレスフリーだ。アウディが提供するプレミアムは「充電する時間の過ごし方」も含まれるのだと知った。
もちろん、アウディ正規ディーラーなだけに、もし気になるモデルがあるのなら、実車をじっくりと吟味し、そして相談できる体制はきっちりと整えられている。今では会社を挙げてBEVを推進しているようで、実際に展示車や試乗車、そして認定中古車を含めてe-tronが豊富に存在する。
「e-tronコンサルタントというスペシャリストを置き、モデル固有のご説明だけではなく、住環境やクルマの用途に応じて、充電器設置にまつわる相談から電気料金プランまで、カーライフの包括的なアドバイスをしています」
そうした活動こそアウディに限らずBEVの普及にとって何より重要だと力説する。新しいモビリティであるからこそ、クルマのスペックを説明するだけでは役不足で、ともに過ごすための最適な方法論を一緒になって考えるライフアドバイザーが必要だという。
「e-tronを含めたBEVの実情と、付き合い方をご理解いただくのが我々の任務です。決してすぐにお乗り換えいただかなくても、BEVの実情を知っているのといないのとでは、カーライフだけではないライフプランまでが変わってくる。モータリゼーションがBEVへ舵を切ったいま、その説明義務は我々にあります」
という木村氏が率いるアウディ八王子は、アウディだけではなくBEVの魅力を世に訴える伝道師のような存在だと思えた。
アウディ八王子
住所:東京都八王子市堀之内3-1-39
営業時間:10:15-18:45
定休日:第一・第三水曜日・火曜日
電話:042-653-9039