赤信号無視の罰金は6000カタールリアル(約24万6千円)!!
少しずつ日照時間も長くなり、三寒四温にも似た周期でゆっくりと春の訪れを待つミュンヘン。晴れた日の近所の公園では、野生のクロッカスやスノードロップが美しく咲き乱れています。特にイイコトがあったワケでもなんでもありませんが、春が近いというだけでちょっと心浮き立つ今日この頃です。
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長かった冬がやっとそろそろ終わりを告げて、2月29日~3月2日に開催されたWEC(世界耐久シリーズ)の今年の開幕戦は、世界でも有数のお金持ちの国、カタールで開催されました。その取材の為に人生初めて中東を訪れ、いまはその楽しかった思い出に浸っているところです。
私の住むミュンヘンから6時間ちょっとのフライトを経て、砂漠の中に近代的な建物が立ち並ぶドーハの街へ降り立ちました。日本へのフライト時間の約半分程とあり、随分と体力的にはラクでした。
到着した時点で、既にもう午前0時近くの夜中。空港で落ち合ったカメラマンの友人と共に、早速レンタカーをピックアップしに行きました。私たちに貸し出されたのは、日産のサニー! ドイツでは全く見掛けない車種だけに、懐かしくてちょっとテンションが上がりました。友人は「サニーでこんなにテンション上がる?」と笑っていました。オマケにナンバープレートには、昨年このカタールで開催されたサッカーのワールドカップの優勝トロフィーのマーク入りではありませんか!
ぐっすり寝て、おいしい朝食を頂いた後は、まるで夏日のような強い日差しの中、ホテルから約20分の距離にあるサーキットへ高速道路を利用して向かいました。サニーはさすがにパワーウィンドウでしたが、私的にはクルクル窓だともっと嬉しかったかも(笑)。
道中の高速道路は、部分的に120㎞/hや100、80規制となっています。特にサーキットのある北部へ向かう道路は非常に空いており、うっかりしたらスピードを出し過ぎてしまいそうです。交通標識や看板のアラビア語記載に異国情緒たっぷりで見入ってしまいます。大半の看板の下に英語表記もされていますので、少しは安心です。
このカタールには私がオーストリアの大学へ留学していた時の友人愛ちゃんが住んでいます。彼女はカタール在住歴15年とあり、事前に色々と教えて貰っていたものの、やはり初めて自分で足を踏み入れたカタールはイメージと違った部分も多く、実際に行ってみないと分からないものだと思いました。
リアルのカタール人は一体どれくらいの割合で居住されているのかは分かりませんが、ホテルのスタッフの方々をはじめ、サーキットもとにかく外国人だらけ。お陰で自分もその中の外国人という事で、全く差別的な対応に遇う事もなく過ごす事ができました。ドイツはまだアジア人を見ると、ん!? となる方も、避ける方もおられるので、そんな事が一切なかったのも好感触でした。
さて、そのカタールで体験した交通事情について少しお話したいと思います。とにかくトヨタのランドクルーザー、それも白が多い事ったら。こんなにランクルを多く見たのは初めてです。ヨーロッパでは見た事のないGRモデル、更にはその70周年アニバーサリーエディションなど、とにかくランクルだらけ。他のメーカーの高級巨大SUVが人気のようです。また、ドイツ車ではBMWとメルセデスのAMGが多かったように思います。
基本的に車種に限らずクルマの色は白が多く、その次に黒や濃いグレーといった感じでしょうか。私の好きなカラフルな色のクルマは全くと言って良いほど見掛けず残念。また、欧州でも日本でも人気のコンパクトカーが殆ど走っていないように思いました。
カタールでは驚いた事に道路のあらゆるところにオービスが設置されており、スピード違反と赤信号違反を取り締まる専用の物があり、特に赤信号を無視するととんでもなく高額の罰金が請求されるそうです。現地在住の愛ちゃんによると、赤信号無視罰金は6000カタールリアル(約24万6千円)!! うっかり黄色で進入し、途中で赤に変わってパシャっと光ってしまうと大ショックですよね。
スピード違反は速度によるそうですが、500カタールリアル(約2万円)からのようです。地元の方はオービスがどこにあるかお分かりなので、ビックリする位に飛ばしているクルマもいましたが、恐ろしい罰金を考えると私たちはいつも速度制限以下で走る事を心掛けていました。
とにかくランクルのような巨大なクルマがとても多いカタールなのですが、内輪差をあまりよく分かってなのか、複数車線のあるラウンドアバウトや交差点での左折等で強烈な幅寄せには何度も悲鳴を上げてしまいました(苦笑)。
また、車間距離が狭いのなんのって! ウィンカーを出す人の少なさ、やたらめったらクラクションを鳴らしまくり、フラッシュライトを何度もパシャパシャ。日本でこれをやったら、めちゃくちゃ大変な騒動になり得ないレベルです(笑)。カタール歴15年の友人愛ちゃんとの久々の再会には、たくましくVWトゥーランのステアリングを握ってホテルまで迎えに来てくれました。このめちゃくちゃなトラフィックに慣れた彼女には、逆にドイツのアウトバーンの秩序正しいトラフィックの方がとても怖く感じるそうですよ。
夏は連日日中最高気温が50℃を超えるカタールでは、夏場のハンドルの熱々度も半端じゃないようです。しかし、バスを待つのも地下鉄の駅へ歩いて行くのも死活問題となる事から、クルマの運転は出来た方が良いのですが、熱すぎるがゆえ、車内のルーフの内装部分の塗料が溶けてしまい、布がダラ~んと落ちて来るそうなのです。カタールで販売される自動車は熱帯地仕様なのでしょうか? 灼熱のエアコンの効きも気になりますね。
少し早めに仕事が終わったこの日は、思い切ってUberに乗ってひとりで街へ繰り出してみました。ホテルの方に伺うと治安は良いので夜にひとりで出掛けても大丈夫との事。民族衣装を着た地元の方々が集うスーク。異国情緒満載の細い路地裏を歩いていたら、私の名前を大声で呼ぶ人が? ふと見たら、フランス人の友人らでした。「また明日サーキットでね!」と別れたものの、その後にまた他の場所で出会うというなんとも偶然(笑)。私は地元メシを探していた途中だったのですが、一緒にディナーを食べようと誘ってくれました。地元メシではなくイタリアンでしたが、楽しく賑やかな夕食になりました。
WECのハイライトはなんと言ってもハイパーカークラス!古巣トヨタGazooレーシング、去年にデビューしたフェラーリ、ポルシェ、キャディラック、プジョーに加え、今年はBMW、アルピーヌ、ランボルギーニとイゾッタ・フラスキーニが加わり、一気に華やかになり、正しく新時代の幕開けとなりました。各自動車メーカーの代表的なトップワークスドライバーが集い、高いレベルの戦いに拍車をかけます。
一方で、今季から新設されたLMGT3クラス(FIA GT3規格のマシン)には、プロ・アマドライバーがタッグを組み、ち密な戦略の元、GTカーの世界王者を目指します。特にコルベット、フォードGTマスタング、アストン・マーティンは新モデルのWECデビュー戦となる事から、そのポテンシャルがどう発揮されるのかもみどころのひとつですね。
MotoGP時代と同じく#46を掲げてWECにBMW M4 GT3を駆り、初シリーズ参戦を果たすヴァレンティーノ・ロッシのファンな私。MotoGP現役時代の2012年に2度フェラーリのGT3マシンでレースに参戦した際に、偶然同レースで取材をしていた私は、彼の親しみやすく、明るい人柄に一瞬でファンになりました。
今回のカタールでは、一瞬だけピットロードでロッシと対面する機会があり、「いつも日本人ライダーに高いリスペクトを掲げてくれてありがとう!」と思い切って伝えてみたところ、物凄くキラキラした瞳で見つめられ「Grazie!I am Vale, nice to meet you!」とあちらから握手を求めてくれたのです。めちゃくちゃ感動しました!
その日は暫く手を洗えなかったのは言うまでもありません(笑)。幸福の時間はこれだけでは終わりません。セッション前にふとピットを見ると、あれれ?これはこれは!!MotoGP現役ライダーのアレックス・リンス選手がロッシと一緒にいるではありませんか!!写真を撮らせて貰い、ヤマハに所属しているだけに「ありがとう!!」と日本語で言うと、なぜか「ございます!」と言われ(笑)。
しかも、決勝レースの日の後半戦にパドックを歩いていると、向こうから光輝くリンスが私の方に向かって歩いてきて、満面の笑顔で握手をしてくれたのです。ホントですよ!(笑)。一緒にいた友人が、なんでアンタ達が知り合いなの?と聞いてきたのですが、リンス選手が数日前の事を覚えてくれていたというステキな瞬間でした。もちろん、このWECの翌週にカタールで開催予定のMotoGPを頑張ってね!と声を掛けました。本当にナイスガイで、もちろんMotoGPを自宅で応援したのは言うまでもありません。
初めて行く国のクルマ事情や文化はとても刺激的で新鮮な毎日でした。民族衣装を着た方の運転される巨大なランクルの幅寄せには迫力満点(苦笑)。一方で、どこかで見た事があるようなないような、何となくアレに似てる? 的な中国車もチラホラ。
この記事を書いた人
武蔵野音楽大学および、オーストリア国立モーツアルテウム音楽院卒業。フリーランスの演奏家を経て、ドイツ国立ミュンヘン大学へ入学。ミュンヘン大学時代にしていた広告代理店でのアルバイトがきっかけでモータースポーツの世界と出会い、異色の転身へ。DTM、ル・マン/スパ/ニュルブルクリンクの欧州三大24hレースを中心に取材・執筆・撮影を行う。趣味は愛車のオープンカーでヨーロッパのアルプスの峠をひたすら走りまくる事。蚤の市散策。