あらゆるスピード域でも“最上”をもたらすR
GTIは伝統的にFWDのハッチバックスタイルを貫くのに対して、ゴルフRは最上位グレードに位置付けられるとともに、4WDが採用され、ハッチバックとステーションワゴンの2つのボディータイプが設定される。シャシーはMQBを強化・軽量化したMQB evoを採用。
かつてスポーツモデルの入門篇といえば、ホットハッチと相場が決まっていた。コンパクトなボディにパワフルなエンジンを押し込み、サスペンションをほどよく硬めたホットハッチであれば、その軽量さも相まってコントロール性が高く、スポーツドライビングの基本を学ぶにはうってつけの存在だったからだ。
エンジンは1984ccの直4 DOHC 16Vターボ。最高出力320ps、最大トルク420Nmを発揮する。
しかも、本格的なスポーツカーに比べれば価格が手ごろで、燃費が優れている点も魅力のひとつ。かくいう私も、20代から30代にかけて何台かのホットハッチを所有した経験がある。
そんなホットハッチが存続の危機にあるのをご存知だろうか?
電動化のあおりを受け、スポーツモデルを作る余力を残した自動車メーカーがそもそも減っているうえ、欧州諸国ではCO2排出量に応じた課税制度が導入されており、400~500万円のホットハッチに対して100万円ほどの税金がかかるケースが増えていることも、「スポーツドライビングの入門書」が激減する一因となっているようだ。
そうしたなか、孤軍奮闘しているのがフォルクスワーゲンである。しかも、ホットハッチの原点というべきGTIを筆頭に、パフォーマンス重視のR、日常性も加味したRラインと3タイプを用意。ここでは、その多彩な世界をご紹介することにしよう。
10.25インチのデジタルメータークラスター「デジタルコックピットプロ」。
パフォーマンスを高めれば高めるほど乗り心地はスパルタンになり、ドライブトレインも扱いにくくなるというのが、スポーツモデルのこれまでの常識。しかし、フォルクスワーゲンのスポーツモデルに関していえば、必ずしもこの常識はあてはまらない。
なぜなら、トップパフォーマーである“R”の足回りは実にスムーズかつしっとりとした感触で、ひょっとするとGTIやRラインを凌ぐくらい上質な乗り心地をもたらしてくれるからだ。
イメージカラーであるブルーのRロゴがあしらわれたヘッドレスト一体型のスポーツシートを備える。
今回、試乗したのはゴルフRヴァリアント。そのフロントに押し込められた4気筒ターボエンジンは、2Lの排気量としては限界に近いとも思える320psと420Nmを発揮。これに7速DCTを組み合わせるとともに、電子制御式油圧多板クラッチ方式の4WDシステム“4モーション”を用いて4輪にトルクを配分するというのが、ゴルフRの基本的な成り立ちである。
外装はシルバーマットクロームのミラーなどスポーティな装い。
しかし、街中を走らせていると、そんな高性能振りが信じられないくらいキャビンは静かで、乗り味は快適。しかも、トルク特性がフラットなパワートレインは扱いやすく、タウンスピードでも意のままにペースをコントロールできる。まさに自由自在のドライバビリティだ。
ワゴンとしてのユーティリティももちろん抜群。
けれども、ひとたびスロットルペダルを踏み込めば、文字どおり弾け出るようなダッシュ力を披露する。しかもコーナリングではバツグンのスタビリティを発揮。これぞ“R”の醍醐味である。
Volkswagen Golf R Variant
■全長×全幅×全高=4650×1790×1465mm
■ホイールベース=2670mm
■車両重量=1600kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ターボ/1984cc
■最高出力=320ps(235kw)/5350-6500rpm
■最大トルク=420Nm(42.8kg-m)/2100-5350rpm
■トランスミッション=7速DCT
■サスペンション(F:R)=マクファーソンストラット:4リンク
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=235/35R19:235/35R19
■車両本体価格(税込)=7,048,000円
問い合わせ=フォルクスワーゲン・グループ・ジャパンTel.0120-993-199
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