ポルシェ

【国内試乗】スポーツカーにおける永遠のベンチマーク! やっぱりこの存在は唯一無二なのだ‼「ポルシェ 911」

ドイツを、いや世界を代表するスポーツカーの定番「ポルシェ911」が満を持しての登場。紹介するのは執筆活動のみならず、自動車情報番組のMCとしてもおなじみの岡崎五朗氏だ。

911をカタチ造る3つのキーワード

太鼓判を押すならカッコよさとハードウェアの優秀性は絶対に外せないところ。とはいえ相手が911ならそこは安心だよね、と多くの人が考えていることだろう。というわけで、まずは他のクルマにはない911だけの魅力から紹介していくことにする。

同モデル内でもキャラクターの棲み分けが実に上手い

3つのキーワードを挙げる。1.ドライビングプレジャー、2.ラグジュアリー、3.日常性。911のアドバンテージは上記3要素をとてつもなく高いレベルでバランスしていることにある。たとえばフェラーリ・ローマやアストン・マーティン・ヴァンテージは1.と2.はすごいが3.が弱い。ベントレー・コンチネンタルGTは2.は突き抜けているが1.と3.が弱い。同様の観点でいろいろなクルマを眺めてみて欲しい。なるほど911は唯一無二の存在だなと再確認できるはずだ。

今回試乗車はカレラT。軽量化などによって走りの楽しさを追い求めたグレードだ。

こうした特徴をさらに補強しているのが超ワイドバリエーションだ。素のカレラに始まり、四輪駆動のカレラ4、ハイパワー版のカレラS、充実装備のGTS、超ハイパフォーマンスのターボ、さらにその上を行くターボS。これだけでもすごいのに、ボディはクーペの他にカブリオレとタルガを用意する。そこにGT3やS/Tといった特別なモデルが加わり、現在ポルシェジャパンのホームページに並んでいるのは実に26種類! の911。さらにほぼ無限とも思えるオプション類や、130色のボディカラー(331万4000円支払えば完全オリジナルカラー塗装も可能)を駆使すれば、世界にたった一台の自分だけの911作りに挑戦することもできる。そう、ドライビングプレジャー、ラグジュアリー、日常性という完璧な三拍子を備えたうえで、ユーザーの好みに合わせてバランスをどこかに寄せたり、全部を引き上げたりできるのが911なのだ。まさに蟻一匹通さない完璧なフォーメーション。こうしてポルシェは、911をライバルたちが束になっても叶わない圧倒的人気モデルに仕立てているのである。

トランスミッションは写真の7速MTのほか、8速PDKも選択できる。

やっぱりこれ! と唸らせるまさにポルシェマジック

今回試乗したのは911T。日常性を少しだけ犠牲にしてスポーツ性を高めたモデルだ。エンジンはカレラと同じ3Lフラット6ターボ(385ps)ながら、リアシートや遮音材の省略、軽量ガラスや軽量バッテリーの採用により、カレラ比35kgの軽量化を果たしている。ただしそれはカレラでは選べないMT仕様の話で、PDK仕様どうしで比較すると重量は同じ。じゃあリアシートを取り外してまで頑張った軽量化分はどこへ行ったのかといえば、20/21インチタイヤやスポーツクロノパッケージ、PTV(ポルシェトルクベクタリング)、スポーツサスペンション(車高マイナス10mm)、スポーツエグゾーストなどの走りにまつわる装備。つまり、軽量化は決して無駄ではないということだ。

ポルシェ定番のスポーツクロノは標準装備。

試乗したのは7速MT仕様。走りだしてオッと思ったのが低速域での軽快な身のこなしだ。軽量化の恩恵かと思ったが、体感的には35kgどころじゃない。そこでオプションリストを見るとリアアクスルステアリング(37.5万円)と、パワーステアリングプラス(4.4万円)が付いていた。リアアクスルステアリングは低速域で後輪を逆相に切り、パワーステアリングプラスは低速域で操舵力をうんと軽くする。この組み合わせが、いささか911らしくないライトウエイトスポーツ的ヒラヒラ感を生みだしている要因だ。もちろん、速度を上げていけば911らしい濃密な接地感が出てくるし、リアアクスルステアリングは高速域でのスタビリティ向上にも繋がるが、385psのパワーなら必要性は相対的に低くなる。好きな人は好きだろうが、僕だったら両方とも選ばないなと思った。

リアシートは撤去されているが、無償で装備することも可能だ。またカレラT専用オプションとして「スポーツエグゾーストシステム」や「リアアクスルステアリング」も用意。

MTにはショートシフターが入っているがシフト操作に過剰な重さはない。クラッチペダルも同様で、「MT恐るるに足らず」と申し上げておく。むしろ緻密な電子制御スロットルのおかげで、アイドル付近でクラッチをミートしてからおもむろにアクセルを踏み込んでいく、という911流儀のドライビングはかつてと比べると圧倒的にイージーになった。絶望的な渋滞にハマれば話はまた別だが、2000rpm弱で最大トルクを発生するエンジン特性と相まって街乗りでも扱いやすさは上々。遮音材の省略とスポーツエグゾーストの相乗効果による刺激的なサウンドを肴にMTを操る非日常感が楽しくて楽しくて「やっぱり911はこれだよこれ」と膝を打った。

ポルシェ911カレラT

ただしこれで終わらないのがT。スポーツエグゾーストをオフにするとサウンドは穏やかになり、やや硬めだが決して粗っぽくない乗り心地を含め、これなら毎日乗っても嫌じゃないと思わせてくれる。このあたりのバランス取りの巧妙さこそ911ワールド。その上で、よりGTカー的性格がお好みならカレラ、有り余るパワーは要らないけれど911に乗るならスポーティに行きたいねと考えるならカレラTと、棲み分けが実に上手にできている。エンジンもボディも同じ。にもかかわらずわずかな違いをもとにキャラクターの異なる商品をきちんと成立させ、しかも大人気モデルに仕立てあげてしまうのがポルシェマジックであり、それを支えるのが911のもつ底知れぬポテンシャルなのである。

カレラT専用オプションとして「スポーツエグゾーストシステム」や「リアアクスルステアリング」も用意。

リアシートは撤去されているが、無償で装備することも可能だ。

パワートレインは3L水平対向6気筒ターボエンジンで385ps/450Nmを発揮。

ホイールはオプションの20/21インチを装備し、サイズは前245/35ZR20、後305/30ZR21。タイヤはピレリPゼロを装着。

【岡崎五朗の推しポイント】驚異的なキャラクターの多面性

岡崎五朗/超一級品のスポーツカーでありながら快適な長距離移動ができるGTカーであり、毎日乗れる実用車であり、魅惑的なラグジュアリーカーでもある。この驚異的な多面性こそが、他のクルマにはない911だけの魅力だ。

【SPECIFICATION】ポルシェ911カレラT
■車両本体価格(税込)=17,570,000円
■全長×全幅×全高=4530×1852×1293mm
■ホイールベース=2450mm
■車両重量=1470kg
■エンジン形式/種類=─/水平対向6気筒DOHC24V+ターボ
■内径×行程=91.0×76.4mm
■総排気量=2981cc
■最高出力=385ps(283kW)/6500rpm
■最大トルク=450Nm(45.0kg-m)/1950-5000rpm
■燃料タンク容量=64L(プレミアム)
■トランスミッション形式=7速MT
■サスペンション形式=前:ストラット/コイル、後:マルチリンク/コイル
■ブレーキ=前後:Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前:245/35ZR20、後:305/30ZR21
問い合わせ先=ポルシェジャパン TEL0120-846-911

フォト=郡 大二郎 ルボラン2024年6月号より転載

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