コラム

アルコールは運転に影響する! ビール1缶でも酒気帯びになる飲酒運転の危険性を解説!

罰則が強化されてもゼロにならない飲酒運転。2023年の飲酒運転事故の件数は全国で2,346件でした。事故や検挙されなかった件数を含めれば、さらに件数が多くなるでしょう。ダメなことだとわかっていてもする人が絶えない飲酒運転は、なぜ危険なのでしょうか。今回は、飲酒が及ぼす影響を解説します。

アルコールは脳に影響を及ぼす

アルコールを摂取すると、知覚や運動能力が低下します。お酒を飲みすぎて記憶をなくしたり、千鳥足になったりする人がいることからも、アルコールによって知覚や運動能力が低下することは容易に想像できるでしょう。

なぜアルコールを摂取することで知覚や運動能力が低下するのでしょうか。それは、脳が麻痺するからです。この脳が麻痺した状態が「酔う」という感覚なのです。

では、どのくらいの飲酒で脳がどのように麻痺するのでしょうか。

酔いの状態と飲酒量と麻痺する脳の部分
【軽い酩酊】
軽い酩酊状態は、爽快期〜酩酊初期の段階で、大脳が少し麻痺している状態です。また、呼吸や血圧などの中枢であり意識の維持に関与する網様体が麻痺すると、理性を司る大脳皮質の活動が低下し、大脳辺縁系(本能や感情をつかさどる部分)の活動が活発になります。その結果、気分が高揚したり、体温が上がったりします。それぞれの段階ごとの血中アルコール濃度や酔いの状態などは次のとおりです。

■爽快期
・血中アルコール濃度:0.02~0.04%
・酔いの状態:さわやかな気分になる、皮膚が赤くなる、陽気になる、判断力が少しにぶる など
・酒量:ビール中びん(~1本)、日本酒(~1合)

■ほろ酔い期
・血中アルコール濃度:0.05~0.10%
・酔いの状態:ほろ酔い気分になる、手の動きが活発になる、抑制がとれる(理性が失われる)、体温が上がる、脈が速くなる など
・酒量:ビール中びん(1~2本)、日本酒(1~2合)

■酩酊初期
・血中アルコール濃度:0.11~0.15%
・酔いの状態:気が大きくなる、怒りっぽくなる、立つとふらつく など
・酒量:ビール中びん(3本)、日本酒(3合)

【強い酩酊】
強い酩酊状態は、酩酊期の段階です。脳の麻痺の範囲が大脳だけでなく小脳にも広がります。小脳まで麻痺の範囲が広がると、運動失調状態になるため、千鳥足になったり、まっすぐ歩けなくなったりします。

血中アルコール濃度や酔いの状態などは次のとおりです。
・血中アルコール濃度:0.16~0.30%
・酔いの状態:千鳥足になる、何度も同じことをしゃべる、呼吸が速くなる、吐き気やおう吐が起きる など
・酒量:ビール中びん(4~6本)、日本酒(4~6合)

【麻痺】
麻痺の状態は、泥酔期の段階です。大脳・小脳・海馬(記憶の中枢)が完全に麻痺し、今やっていることや起きていることなどを記憶できない状態になります。

血中アルコール濃度や酔いの状態などは次のとおりです。
・血中アルコール濃度:0.31~0.40%
・酔いの状態:まともに立てない、意識がはっきりしない、言語がめちゃめちゃになる など
・酒量:ビール中びん(7~10本)、日本酒(7合~1升)

【死亡】
脳の麻痺が全体に広がると、呼吸中枢(延髄)も危険な状態となります。この状態(昏睡期)になると、死亡するケースがあるため大変危険です。

血中アルコール濃度や酔いの状態などは次のとおりです。
・血中アルコール濃度:0.41~0.50%
・酔いの状態:ゆり動かしても起きない、呼吸がゆっくりと深い など
・酒量:ビール中びん(10本超)、日本酒(1升超)

血中アルコール濃度の計算式や呼気アルコール濃度の計算方法

ここまで、酔いの状態と麻痺する脳の部分や血中アルコール濃度などを紹介してきましたが、これだけわかっていても飲酒運転の検査(呼気検査)との関連性がわかりません。そこで、血中アルコール濃度の計算式と呼気アルコール濃度の算出方法を紹介します。

血中アルコール濃度の計算式
血中アルコール濃度は、体重と飲酒量によって、推定値を計算することができます。計算式は次のとおりです。

【血中アルコール濃度の計算式】
血液中のアルコール濃度=(飲酒量ml×アルコール度数)/(833×体重)

例えば、体重65kgの人が500mlのビール(アルコール度数5%)1缶分飲んだ場合の計算式は「(500ml×5)/(833×65)」となり、導き出される答えは「0.0461…」となります。つまり、おおよその血中アルコール濃度が0.05%(ほろ酔い期)となります。

血中アルコール濃度を呼気アルコール濃度に変換する簡単な方法
体重や飲酒量・アルコール度数などから算出した血中アルコール濃度を5倍すると、飲酒運転の検査で用いられる呼気アルコール濃度になります。

体重65kgの人が500mlのビール(アルコール度数5%)1缶分飲んだ場合は、「血中アルコール濃度0.05×5」となるため、呼気アルコール濃度が0.25ml/Lとなります。

呼気中のアルコール濃度が0.15ml/L以上になると、酒気帯び運転となるため、呼気中のアルコール濃度0.25ml/Lは明らかな酒気帯び運転です。

たった1杯でも脳は麻痺する

アルコールによって脳が麻痺すると、知覚や運動能力に影響します。そのため、お酒を飲んだら運転してはいけないと言われる理由がわかるのではないでしょうか。

また、お酒を飲んで、気分が良くなって、楽しい状態のときでも脳は麻痺しています。このようなときに運転できそうな気持ちになるかもしれませんが、麻痺している脳では正しい判断や操作ができず、重大事故を起こしてしまう可能性があります。

たった1杯のお酒で人の命を奪ってしまったり、事故を起こしたりしないためにも、お酒を飲んだら絶対に運転しないようにしましょう。

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