アルピーヌ

【海外試乗】ブランド初のBEVが登場!アルピーヌの未来を予感させるコンパクトBEV!「アルピーヌ・A290」

アルピーヌ初の電動モデル、A290が発表されたのは今年の6月。その国際試乗会がマヨルカ島で開催された。パフォーマンス、敏捷性、ライトウェイトの3つの要素を備えたこの電動スポーツモデルは、2025年中に日本導入予定だという。

これが新時代のBEVホットハッチ

1976年登場のルノー5アルピーヌの再来というエンスー的な胸アツ案件のアルピーヌA290は、先に本国デビューしているルノー5E-TECHをベースにしたBEVホットハッチだ。

Ampr smallプラットフォームに、バッテリーを前後輪の間に最適化配置することで、FFにも関わらず、前後重量配分は57:43を実現。52kWhのバッテリーが標準装備されており、WLTP航続距離は最大380km。

採用されたAmpR smallプラットフォームはエンジン車用のCMF-BをベースにBEV専用に開発。新規開発に比べて約30%のコスト削減が図れたという。そういった背景もあってFWDというのは当初から決まっていた。

ベース車はこのクラスには贅沢なマルチリンクを使っているが、A290では俊敏なハンドリングを狙ってトレッドを限界まで拡張。専用のオールアルミのサブフレームを盛り込んで、軽量化と重量配分の最適化も図られた。車両重量は1479kg(乾燥重量)で、BEVとしては軽く仕上がっている。

10.1インチのセンターディスプレイはドライバーに向かって角度が付けられており、シフトセレクターはA110と共通のスイッチ式を採用。

電気モーターは日産アリア用が選択され最高出力220ps、最大トルク300Nmで0→100km/h加速は6・4秒。超ハイパフォーマンスBEVのように驚くほどの速さではないが、Bセグホットハッチとしては十分以上だ。

サポート性の高いスポーツシートを装着

街中から高速道路、ワインディングロードと走らせてまず感じたのは、ノーズが軽くてハンドリングが想像以上に楽しいこと。開発にあたってベンチマークとなるモデルがないため、パワートレインも駆動方式もまったく違うA110をひとつの指標としたというが、ハンドリングにはそれが表れていた。エンジン車のFWDではあり得ないが、BEVはミドシップだから近づけることが可能なのだ。

乗り心地は、ホットハッチらしく引き締まってはいるものの、いやな硬さはなく、凹凸が多い路面でも不快感はない。BEV特有の低重心によってサスペンションをあまり硬くする必要がないうえに、アルピーヌお得意の油圧式バンプストップによって、フルストロークしても安定していて、しかもしなやかに感じられる。

GTおよびGTプレミアムバージョンは180ps/285Nm、GTパフォーマンスとGTSは220ps/300Nmとふたつの出力が用意される。220psを発揮するGTSの0→100 km/h加速は6.4秒をマーク。

加速感もBEV特有のドッカン系ではなくA110の伸びやかさを狙ったという。疑似エンジンサウンドも、フランスのハイエンドオーディオメーカーであるデビアレとともにこだわって造り込んだというだけあって、エンジン車のスポーツカー乗りにとっても自然なフィーリングだ。

懸念したのはトルクが図太く反応もいい電気モーターとFWDの組み合わせということだった。既存のFWD BEVは、タイトコーナー立ち上がりでアクセルを踏み込むと、簡単にホイールスピンしそうになってトラクションコントロールが働きドライビングの楽しさが薄れる。はたまた制御をカットすればアンダーステアが盛大に出るというモデルがあるからだ。

ヘッドライトのXのモチーフは、往年のラリーカーが灯火類にテープを貼っていたことに着想を得たもの。

A290はワインディングロードをちょっと攻めて走るくらいのレベルならば、まったくそういったネガを感じさせない。実際には制御が入ることもあるのだが、スムーズかつ最小限の介入だから楽しさを削ぐことはないのだ。

足元には19インチホイールを装着。

サーキット試乗ではESCをカットして走ったのだが無様にアンダーステアを出してしまうことはなかった。LSDが装着されていないFWDの場合、内側の車輪にブレーキをかけてトラクションを増大させるシステムはエンジン車でもあるが、A290のアルピーヌ・トルク・プレコンロールはモーター出力を制御。ブレーキに比べて圧倒的に素早く緻密に制御できるので、効果が大きいのだ。だからコーナー脱出に向かうとき、行きたい方向にフロントタイヤが向いた状態で大胆にアクセルを踏み込んでいけば、強力なトルクでそちらに立ち上がっていけるのだ。

ワイドなフェンダーが際立つリアビューがスポーティな雰囲気を醸し出す。

エンジン車のFWDとは次元の違う楽しさに感動すら覚えた。A290はBEVホットハッチという新たな世界を切り拓いたのだ。

【SPECIFICATION】アルピーヌ A290 GTS
■全長×全幅×全高=3990×1820×1520mm
■ホイールベース=2530mm
■車両重量=1479kg
■モーター形式/種類=交流同期電動機
■モーター最高出力=前:220ps(160kW)
■モーター最大トルク=前:300Nm(30.6kg-m)
■バッテリー種類=リチウムイオン電池
■バッテリー容量=52kWh
■一充電航続可能距離(WLTC)=364km
■サスペンション形式=前:ストラット/コイル、後:マルチリンク/コイル
■ブレーキ=前後:ディスク
■タイヤ(ホイール)=前後:225/40R19
問い合わせ先=アルピーヌジャポン TEL0800-1238-110

フォト=アルピーヌジャポン ル・ボラン2025年1月号より転載

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