池ノ内ミドリの「バイエルン日記」

WEC第2戦イモラはフェラーリが凱旋優勝! 地元のロッシも大人気でした!【池ノ内ミドリのジャーマン日記】

初夏のドライブも満喫!?

私の住むドイツのミュンヘンにあるオリンピックの記念公園には、数多くの桜の木が植樹されており、SNSを通じて地元住民だけではなく、数多くの観光客も訪れるようになり、お花見スポットとして有名となりました。美しい桜の樹々をもう少し長く堪能したかったのですが、穏やかな暖かい陽気が続き一気に満開になったと思ったら、アッと言う間に散ってしまいました。
【画像54枚】WEC第2戦イモララウンドの池ノ内さんリポート

自宅近所の桜 夕方にはたくさんの方がお花見をされていました

さて、桜が散ってすぐにキリスト行事のイースターが始まり、街にはウサギやたまご型のチョコーレやお菓子が溢れていました。イースターに合わせて、WEC(世界耐久選手権)の第二ラウンドがイタリアのイモラで開催されましたので愛車で向かいました。

イモラのサーキットはのどかな美しい公園に隣接しています

既に2月にカタールでWECの開幕戦を迎え、イモラはヨーロッパラウンドの初戦となり、この次はベルギーのスパ・フランコルシャンサーキットでのレースが開催され、シーズンハイライトとなる6月のル・マン24時間レースまでの非常に重要なレースとなります。ミュンヘンの自宅からは約610kmと距離的にはあまり遠くありませんが、幼稚園や学校のイースター休暇が始まった頃から、出発したこの日は朝からカーラジオで「今日は一年で最も渋滞する一日ですから、旅行に行く人達は気をつけてください!」と何度もアナウンスが放送されていました。
本来ならば、私はイタリアに行く際にはとても退屈で高額な高速道路アウトストラーダを避けてアルプスの峠を通って行くのですが、あいにくこの日の天気予報では北イタリアやスイス、オーストリアは大雨との事で断念して渋々アウトストラーダを通って行く事にしました。
オーストリアを超えてイタリアの国境付近辺りまでは、曇っていましたが途中に少し晴れ間も出ていましたし、ラジオで煩く言われていた渋滞もなくスムーズに通過しましたが、オーストリアとの国境のブレンナー峠を越えたあたりから天気予報通りに激しい雨が降り始めて、ワイパーも役立たずな程の大雨に見舞われました。
途中でなんとか雨が止んでやれやれと思っていたのですが、モデナ手前から渋滞が始まりました。ヨーロッパのドライバーは車間距離をめちゃくちゃ詰める傾向があるので、後ろから追突されるのではないかといつもヒヤヒヤしています。ノロノロと時速10~20kmで動いたかと思えば、暫く停車という繰り返しです。出来ればこの日にレースのアクレディテーションセンターへ行き、メディアパスと駐車券を取りに行きたいのでこのノロノロ運転の渋滞に焦ってきます。
いつも渋滞しているボローニャはこの日もとても混んでおり、結局降りる予定のイモラまでの約100kmをずっとノロノロ運転が続いたお陰で、アクレディテーションセンターに到着した時には既に窓口は閉まっていてガッカリでした。

WECのイモラのパドックはとにかく人だらけ

今季初めて訪れたWECのパドックは、やはりワクワクするものですね。トップカテゴリーではありませんが、LM GT3クラスにメルセデスAMGが26年ぶりにWECとル・マンに復帰します。また、ハイパーカークラスにはアストン・マーティンのヴァルキリーが#007と#009の2台デビューしました。アストンはGTクラスには継続して参戦をしていましたが、トップカテゴリに復活したのは1985年のグループC時代ぶりとの事です。今後もヒョンデのジェネシスやフォード、マクラーレンも参戦を表明していますので、益々フィールドが広がり熱いコンペティションが期待出来ますね!

今季から参戦開始のアストン・マーティン ヴァルキリー ブリティッシュグリーンが風格感じさせますね

イタリアのこの美しいイモラのサーキットでは、数々の悲劇が繰りかえされてきました。1994年の4月29日、ルーベンス・バリチェロが予選1日目に大クラッシュ、奇跡的に命は助かりましたが、その翌日の予選2日目にはローランド・ラッツェンベルガーがヴィルヌーブコーナーで亡くなり、5月1日には第2コーナーのタンブレロでアイルトン・セナの二名が命を落としてしまうという痛ましい事故が続きました。セナの事故現場に隣接する公園には銅像が建てられ、メモリアルパークとして多くのファンが国旗や花束や写真、メッセージをいまもお供えされています。

メモリアルパークにあるアイルトン・セナの銅像

イモラのサーキットがあるのは、フェラーリのあるマラネロから約87km、クルマで約1時間ちょっとの距離ですからホームレースとなる事から何としてでも地元イタリアで優勝を狙います。やはり地元ですね、真っ赤なユニフォームのレプリカやキャップ、旗を持った『フェラリスタ』だらけです。また、イタリアの国民的ヒーローの元MotoGP王者のヴァレンティーノ・ロッシ人気は衰える事なくとんでもない! 今年は2年目のWEC参戦となりタイトルを狙います。MotoGPで6度の世界王者に立ったロッシのオーラはとんでもなく眩しいのです。世界トップカテゴリを降りた後も、第二、第三のキャリアはBMWのワークスドライバーとしてGTカテゴリで精力的にレースをこなす他、MotoGPに参戦するVR46レーシングチームのオーナーであり、他にも未来に活躍する若手ライダーの育成を精力的にこなすなど、多忙な毎日を送っているようです。

やはりロッシのM4 GT3に目を向けてしまいますね

現役のMotoGPのスーパースターたちもロッシの応援に駆けつけており、MotoGPを趣味でテレビ観戦している私は、彼らの出現にめちゃくちゃコーフンしました(笑)。今年も9月に富士スピードウェイで開催されるWECには、ロッシは再び来日予定ですので、ロッシファンのみなさんには今からとても待ち遠しいですね!

ポールポジション会見のジョビナッツィとロッシ

そんなイタリアの生んだ大ヒーローのロッシは、なんとこのイモラではGTドライバーとしてのキャリアで初ポール・ポジションを獲得! ハイパーカークラスのポール・ポジションは#50の真っ赤なフェラーリをドライブしたイタリア人ドライバーのアントニオ・ジョビナッツィです。フェラリスタとロッシファンが大コーフンしてサーキット中が大きく沸いた事は言う間でもありません。決勝レースが楽しみです!

ピットロードの上からの風景は圧巻です

イタリア国歌斉唱とイモラの上空にイタリア空軍が描いたイタリア国旗色の飛行機雲がレースを更に盛り立てます。グランドスタンドはもちろんの事、コースサイドにも応援するチームのウェアや応援グッズを身に着けた数多くのファンが詰めかけて、スタートの時をいまかとドキドキしながら待っている様子が伝わってきます。

7号車には小林可夢偉選手がドライブ

ハイパーカークラスのトヨタGazooレーシングの#7と#8には、小林可夢偉と平川亮の両選手、そしてLM GT3クラスのマクラーレンをドライブする佐藤万璃音選手の3名の日本人ドライバーがシリーズ参戦をしています。彼らの活躍にも注目が集まります。

やっぱりフェラーリのオーラは別格 地元での優勝 おめでとうございます!

迫力のある大スタートの後は順調なレース展開が続き、その間にはショップを回ったり、フードトラックのおいしい匂いに誘われて遅めのランチタイムを愉しむファンの姿が見受けられます。イモラのサーキットは大きな公園に隣接していますので、その公園のフェンス越しに観戦するのもおススメです。

コースサイドのいたるところにおいしそうなフードトラックがあります サンドイッチ12ユーロ 約2千円と驚愕なお値段

この日はレース後半の17時前後に雨が降る可能性があると天気予報で示されていましたが、パラりと降った程度で結局はウェットタイヤの出番はありませんでした。ここで雨が降るとレース展開は大きく違っていたかも知れませんね。

アップダウンが激しくタイトなコーナーが魅力的なイモラ

6時間耐久レースの残り1時間はハラハラドキドキの展開でした。ポール to ウィンも目前だったロッシが、まさかのフェラーリとの接触でペナルティを受けるという大失態も。しかし、ロッシからバトンを受け継いで最終スティントを担当したケルヴィン・ファン・デア・リンデがマンタイレーシングのポルシェを最後の最後まで諦めずにプッシュし続けたのですが、なんと0.316秒差という僅差で惜しくも優勝を逃し、2位でゴールをしました。もう1ラップあれば恐らく……。

フェラーリのピットストップ

ハイパーカークラスでは、最後尾からスタートした#50のフェラーリが後半戦でトヨタと優勝争いを展開していましたが、まさかのコースアウトをする等、波乱の展開で結局はポール・ポジションを獲った#51が総合優勝を果たし、故郷に錦を飾りました。

ハイパーカークラスの表彰式 ファンの方々のイタリア国歌斉唱は鳥肌ものです

表彰式には数多くのファンの方々がグランドスタンドからコース上へ流れて埋め尽くし、総合優勝のフェラーリのイタリア国歌をファンの方たちの大合唱で盛大にお祝いされて感動的な瞬間でした。また、もちろんロッシファンの「ヴァーレ!ヴァーレ!」という大声のコールもやはりイタリアを象徴するもので、自国のファンのサポートが彼らの力になる事を実感しています。コロナ禍の寂しいレースを経験しただけに、本当にこのようなファンの熱い応援はレース、全てのスポーツ競技に必要でドライバーやチームの大きな力になるんだな、と感じました。

少し時間が遅くて陰っていましたが、爽快な風景です カブリオレの屋根を開けて走りたいところですが、気温2℃の寒さに断念

長い決勝の一日を終え、クタクタになって宿に戻りましたが、熟睡したお陰で翌朝はすっきり目覚めました。宿の方に帰り道にヴェローナへ観光に寄ってみたら?とおススメ頂きましたので、その方向へクルマを走らせましたが……、気まぐれな私は素通りして、そのままスイス方面へ方向転換し、美しいイゼーオ湖畔をドライブしながら北上し、久々にスイスアルプスのベルニナ峠をドライブしてドイツの自宅へ深夜に帰宅しました。コロナ禍以前やガソリン価格が高騰する前はよく日帰りでオーストリアやイタリア、スイスのアルプスの峠を走りまくったものですが、最近はかなりご無沙汰していましたので、少し遅い時間に山頂へ到着したもののとても楽しいドライブになりました。

池ノ内 ミドリ

AUTHOR

武蔵野音楽大学および、オーストリア国立モーツアルテウム音楽院卒業。フリーランスの演奏家を経て、ドイツ国立ミュンヘン大学へ入学。ミュンヘン大学時代にしていた広告代理店でのアルバイトがきっかけでモータースポーツの世界と出会い、異色の転身へ。DTM、ル・マン/スパ/ニュルブルクリンクの欧州三大24hレースを中心に取材・執筆・撮影を行う。趣味は愛車のオープンカーでヨーロッパのアルプスの峠をひたすら走りまくる事。蚤の市散策。

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