
地元産のシュパーゲルを求めて
日本のように季節や地方によっての名産品が多くないドイツですが、春のごちそうといえばなんといっても白アスパラガス(シュパーゲル)でしょう。スーパーマーケットはもちろんの事、私の住むミュンヘンの中心地にあるヴィクトアリエンマルクトや野菜や果物のスタンドなど、あらゆるところでこのシュパーゲルが山のように販売されているんです。
【画像27枚】池ノ内ミドリさんのベルギーとドイツの国境を超える旅
シュパーゲルとはアスパラガスを一般的に指すのですが、この時期のシュパーゲルといえば白を意味します。最近はスペインやギリシャ産等の外国産が一年中手に入るようになりましたが、旬にはやはり地元産をいただかないと! とヴィクトアリエンマルクへとママチャリを漕いでやってきました。
街へ行く時は天候不順や体調不良以外はダイエットと節約を兼ねていつもママチャリで行きます。ミュンヘン市内の公共交通機関のチケットの値段は毎年値上がりをしていて、いまは片道4.10ユーロ(約780円)です。毎日のように通勤・通学で交通公共機関をご利用になる方なら定期券をお持ちなのでしょうけど、私が利用するのは年間でせいぜい数回。自宅からはわずか5kmちょっとでママチャリでのんびり走って20~25分程で、街の中心地までは坂がなく、自転車道も整備されている事もありラクに走れます。途中にいろんなお店に立ち寄ったりするにも小回りが利いて便利なのです。
WECの取材へスパ・フランコルシャンまで愛車で向かう
春というよりも初夏に近い陽気になった5月ですが、WEC(世界耐久選手権)の取材へベルギーのスパ・フランコルシャンサーキットまで愛車で向かいました。慌ただしい取材を終え、帰りはとてもお天気が良かった事もあり、以前から気になっていた下道で国境を越えてみました。
私が宿泊をしていたのは、ベルギーでもかなり東南のドイツ国境に近い非常に風光明媚な小さな集落です。宿のオーナーさんによると、第一次世界大戦まではこの辺り一帯はドイツ領だったそうですが、終戦後にベルギーとなったとのこと。いまも母国語はドイツ語ですが、数多くの方がフランス語や英語もお話しになるそうです。
今回のWECは決勝レースがなぜか土曜日開催だった事もあり、お天気の良い日曜日にそのままアウトバーンだけでまっすぐ帰宅するのはもったいない感じがして、以前からかなり気になっていた一般道の国境を越えてドイツへ入る国道を走ってみました。雲のない真っ青の空に新緑、そして澄んだ空気はまさしくオープンカー日和! しかし、荷物を積み過ぎて愛車の屋根を開ける事が出来ずに残念でした。
宿泊した宿の小さな集落から隣町のサンクト・フィートという町へ立ち寄りました。ベルギーもドイツ同様に日曜日は飲食店やパン屋さん以外はお店が閉まっています。翌朝に自宅で食べるパンを購入した後は、ベルギー名物のフリッツ(フライドポテト)を買いに。今回のレースウィークには買いに行く時間も気力もなかっただけに、やっと念願のフリッツです。
ベルギーの典型的な揚げ物屋さんの店内は、ハンバーグやコロッケ、ソーセージ等がショーケースに並んでいて、そこから食べたいものを注文して揚げて頂くのですが、私の場合はポテトLサイズにソーセージと肉入りコロッケをいつも選んでしまいます。相当なハイカロリーだと思うのですが、ベルギーやオランダに来た時は食べて良いという勝手なルールを作っています(笑)。
アツアツ揚げたてをテイクアウトして、ドイツ方面へ向かいます。公園か、休憩出来る所はないかな~と思いながらクルマを走らせていたら、ガソリンスタンドが見えて、その近くにすごくキレイにお手入れされた芝生や木製のベンチとテーブルが並ぶ木陰がありましたので、フリッツが冷めないうちにここで食べる事にしました。
ブリュッセルのような都会には数多くのベルギーワッフルのお店があり、焼き立てを頂けるのですが、残念ながら田舎の集落ではワッフルは手に入らず……、さすがに揚げ物三昧の後に甘いワッフルはダメですよね。ある意味、お店がなくて良かったのかも知れません(笑)。
このドライブインらしきガソリンスタンドの古い看板はいまもそのまま残されていて、電話のマークがあるところが昭和感満載でイイですよね。広い駐車場には数多くのトラックを停める場所もありました。
恐らくここは昔からあり、トラック運転手さんらが休憩する郊外のドライブイン的な場所だったのかな? と想像しました。ガソリンスタンドはチェーン店の最新のTotalになっていましたが、日本で言うところのドライブインのガッツリ飯みたいなのを、昔はここで食べられたのかな? なんて想像するのも楽しいものです。
今後はドイツやヨーロッパの国道名物ドライブイン取材もしてみたいな、と願っています。たまにドイツテレビで個人経営のドライブインの密着番組が放映されているのを観ると、是非とも行ってみたくなります。と申しますのも、アウトバーンのサービスエリアは残念な事に大半がチェーン店化されて、そこの名物料理等を食べられる機会はなく、どこに寄っても大半が同じものかファストフードです。いつも同じ物があるという安心感と、もう見飽きたというのが正直なところでしょうか。
さて、どうやらこのガソリンスタンドのある場所が、ドイツとベルギーの最後の分岐点のようで、その方向を示す看板もなんだかエモーショナルです。広い駐車場横には羊が飼われていて、その可愛らしい姿を見学させて頂きました。
ドイツとベルギーの国境をお散歩
『Deutschland(ドイチュランド)』と記載された矢印方面へクルマをしばらく走らせると、そこはベルギーとドイツの国境です。何人か国境付近にクルマを停めて、旧国境税関の案内看板を興味深くご覧になっていました。丁度、その旧国境税関の空高くには普段通るアウトバーンの橋があり、思わず見上げてしまいました。普段利用しているこのドイツとベルギーを結ぶ立派なアウトバーンの橋はどうやら1984年に完成したようです。運転しているとほとんど前かミラーしか見ていないので、下が見えたらちょっと怖いかも知れません。まさかこんなに高いところを走っていたとは!
お天気が非常に良く爽やかな気候でしたので、ベルギー・ドイツの国境付近を少しお散歩してみました。サイクリングやハイキングをしている方、バイカーのツーリングのみなさんを何組もお見掛けしました。恐らく私と同じコースを辿っておられただろう、ベルギーナンバーのシニアご夫妻が私より先にお散歩を終えてドイツ方面に向かわれたのですが、その時に手を振ってお互い「ステキな日曜日を!」と言い合ってお別れしました。
特に知り合いでもなければ、何か他にお話をしたわけでもなく、最初に出会った際に私がおふたりに「Guten Tag!(こんにちは)、今日は良いお天気ですね」とご挨拶をしただけです。ことばひとつでなんだかいい気分になれる、旅ならではの心温まるひと時でした。
ベルギーの宿を出て下道で国境を越えた小さなドライブを愉しんだ後は、次のドイツのアウトバーンの入り口から乗って帰宅しました。日曜日なので空いているのかな? という目論見は外れ、渋滞続きで残念でした。また、故障で路肩に停まっているクルマを何台も見掛けましたが、これから気温が上がるにつれて更に増えそうですよね。いつ私にもそんな事が起きるかも知れないので、ドキドキしています。