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【デザイン解剖】新型「日産リーフ」の「Cd値0.26」の秘密とは? 徹底した「空力至上主義」が生んだ機能美

新型日産リーフ登場! EVの草分けが示す次の一手とは【第2回】

第3世代へと進化した新型日産リーフ。その最も分かりやすい変化は、ハッチバックからクロスオーバーへと生まれ変わったエクステリアデザインにある。公表された空気抵抗係数(Cd値)0.26という数値は、どのようにして達成されたのか。デザインとエンジニアリングの密接な連携から生まれた「スーパーエアロ」という思想、そして「タイムレス ジャパニーズ フューチャリズム」というデザイン言語の下で採用されたディテールの数々の、機能的な背景と造形的な意図を解説する。

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デザインの方向性:「タイムレス ジャパニーズ フューチャリズム」

新型リーフのデザインは、日産が「アリア」から導入したデザイン言語「タイムレス ジャパニーズ フューチャリズム」を継承し、発展させたものと位置づけられている。これは、日本の伝統的な美意識を、現代の技術と融合させ、シンプルかつ力強いモダンな表現を目指すという考え方だ。

アリアがプレミアムセグメント、「サクラ」が軽自動車セグメントを担うのに対し、新型リーフはより量販が見込まれるCセグメントに属する。そのため、一部の先進層だけでなく、より幅広いユーザー層に受け入れられるデザインが求められた。その結果、先進性を感じさせつつも、奇抜さよりは普遍性を重視した造形が選択されている。

空力性能の追求:「スーパーエアロ」というアプローチ

新型リーフのエクステリアを語る上で、中心となるのが「スーパーエアロ(Super Aero)」、すなわち空力性能の徹底的な追求である。航続距離というEVの根源的な性能指標を向上させるため、デザインとエンジニアリングは開発の初期段階から連携し、風の流れを制御する形状を模索したという。

ファストバック形状の採用
流麗なファストバックのシルエットは、スタイリング上の選択であると同時に、空力的な要求から導かれた形状だ。車体後方での空気の剥離をコントロールし、空気抵抗(ドラッグ)を低減することが主目的である。開発陣は、ルーフ後端の角度を、空力的に有利とされる17度に設定するなど、形状の最適化を図ったという。

・ボディ表面と床下の平滑化
Cd値0.26という数値を達成するため、ボディの各部に空力的な配慮が見られる。フロントには、冷却不要時に閉じるアクティブグリルシャッターを装備。フード先端やバンパーコーナーの形状も、1mm単位での調整が繰り返された。床下もほぼ全面がフラットなカバーで覆われ、サスペンションアームやジャッキアップポイントといった突起物にまで専用カバーを装着し、徹底的に平滑化が図られている。

面の表現とディテール:「スーパーフラッシュ」と日本のモチーフ

空力と並ぶもう一つのキーワードが「スーパーフラッシュ(Super Flush)」である。これは、ボディ表面の凹凸を極限まで減らし、一枚のなめらかな面として見せる表現手法だ。その代表例が、日産として初採用となるフラッシュドアハンドルだ。走行中に格納されることで空気抵抗の低減に寄与するとともに、ボディサイドのクリーンな面を強調する視覚的効果も担う。ディテールには、「デジタルテイストのアクセント」として、いくつかの特徴的な要素が盛り込まれている。

・LED 3Dホログラフィックリアランプ
リアコンビネーションランプには、世界初を謳うLED 3Dホログラフィック技術が採用された。見る角度によって奥行きが変化する視覚効果を持ち、新型リーフの技術的な先進性を象徴する意匠となっている。

・隠されたモチーフ:「ニッサン」と「カタナ」
このリアランプや一部ホイールには、漢数字の「二」と「三」を模したパターンがデザインされている。これは日本語の「ニッサン」にかけたもので、海外の関係者にそのユニークさが評価されているという。また、サイドウィンドウのラインに日本刀(カタナ)の鋭さをモチーフに取り入れたとのことで、日本発のブランドとしてのアイデンティティを表現している。

充電口がノーズから左右へ移設された理由は?

従来モデルとの比較で注目されるのが、充電口の配置変更だ。先代モデルまでのフロントノーズ中央から、新型ではフロントフェンダーの左右へと移設された。日産はその理由として、スタイリングの自由度向上と、年々厳格化する安全基準に対応するための歩行者保護性能の向上という2点を挙げている。フロント中央の制約がなくなったことで、より空力的に有利なノーズデザインが可能になると同時に、衝突時の衝撃吸収構造の最適化が図られた。

このように、新型リーフのエクステリアデザインは、単なるスタイリングの刷新に留まらず、航続距離や安全性といったEVに求められる機能的な要求に、デザインとエンジニアリングの両面から応えようとした結果であることがわかる。

次回、第3回は「インテリア&革新装備編」。日本の建築思想「縁側」を取り入れたという空間設計や、日産初採用となる「調光パノラミックガラスルーフ」など、室内の快適性と機能性を高めるための新たな試みを検証する。

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LE VOLANT web編集部

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