



















最強のオフローダーであり最もラグジュアリーな存在:オクタが持つ究極の二面性
2025年7月4日、ランドローバーより衝撃的なニュースが飛び込んできた。究極のハイパフォーマンス・オフローダーである「ディフェンダー・オクタ(Defender OCTA)」に、全身を漆黒で統一した特別モデル「ディフェンダー・オクタ・ブラック」が追加されたのである。この速報を受け、本稿ではオクタの性能を改めて振り返りつつ、新モデルに付与された特別な価値について緊急解説する。
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635psの心臓部と、走りを支配する「6Dダイナミック・サスペンション」
ディフェンダー史上最強のモデルとして1年前の2024年7月3日に発表されたディフェンダー・オクタは、その圧倒的なパフォーマンスがディフェンダーというブランドの新たな境地を切り開くものだった。
そのパフォーマンスを語る上で、まず触れるべきはその心臓部である。搭載されるのは最新の4.4L V型8気筒ツインターボエンジンであり、実に635psという最高出力を発生させる。この数値は単なる記号ではなく、2.5トンを超える重量級のボディを、静止状態からわずか4.0秒で100km/hまで到達させるほどの爆発的な加速力を意味する。しかし、このモデルの真価は、有り余るパワーをいかにして路面に伝え、制御するかにこそある。その答えが、ランドローバーが独自に開発した革新的なシャシー技術、「6Dダイナミック・サスペンション」だ。
このシステムは、従来の機械式アンチロールバーに代わり、相互にリンクされた油圧回路と電子制御を組み合わせた先進的な機構である。オンロード走行においては、コーナリング時に発生する車体の傾き(ロール)や、加減速時の車体の沈み込み(ピッチング)をアクティブに抑制する。これにより、重量級のオフローダーとは思えないほどフラットな姿勢を保ち、ドライバーは正確でレスポンスに優れたハンドリングを享受できる。それは、まるで一回りも二回りも小さなスポーツモデルを操っているかのような、安定感と一体感をもたらす。
一方で、ひとたびオフロードに足を踏み入れると、このサスペンションは全く異なる顔を見せる。走行モードを専用の「OCTAモード」に切り替えることで、システムはその油圧制御を変化させ、4つの車輪がそれぞれ独立して、より大きくしなやかにストロークすることを可能にする。これにより、極めて過酷な凹凸路面であっても、各タイヤが路面を確実に捉え続け、驚異的なトラクションと走破性を生み出すのだ。オンロードでの俊敏な走行性能と、オフロードでの究極の走破性。この、本来であれば相反する二つの要素を、これまでの常識を覆すほど高い次元で両立させている点こそ、ディフェンダー・オクタを特別な存在たらしめている最大の理由なのである。
「タフ・ラグジュアリー」を漆黒で表現した究極のスタイル
そして今、ディフェンダー・オクタに新たに追加された「ディフェンダー・オクタ・ブラック」は、この卓越したパフォーマンスをベースに、その存在感をさらに研ぎ澄ませた特別なモデルだ。
その名の通り、全身を黒というテーマで研ぎ澄ませているが、それは単色で塗りつぶしただけの単純なものではない。ボディは深みのあるグロスブラックのペイントで覆われ、その上からサテン仕上げのプロテクティブフィルムが施されている。これにより、光を鈍く反射する戦術的な印象と、濡れたような艶やかさが同居し、見る角度によって表情を変える、極めて複雑で重厚な視覚効果を生み出している。
ディフェンダーで象徴的なサイドの「シグネチャーグラフィック」パネルには、このモデルを特別な存在たらしめる「OCTA」のロゴバッジが配される。このバッジは、サンドブラスト加工が施されたチタニウム製のディスクに、グロスとマットのブラックでダイヤモンドを模したグラフィックが描かれており、まるで高級腕時計の部品のような精密さと、素材そのものが持つ本物の質感を主張している。足元のグロスブラックアロイホイール、そしてその奥に覗くブレーキキャリパーに至るまで、全てがブラックで統一されており、その徹底したこだわりが、このモデルの比類なき存在感を完成させているのである。
漆黒の世界に広がる、先進と上質のコックピット
その思想はインテリアにも貫かれている。ディフェンダーとして初めて採用されたエボニーセミアニリンレザーと、デンマークの高級テキスタイルブランドKvadratの素材を組み合わせたパフォーマンスシートは、まさに「タフ・ラグジュアリー」というコンセプトを雄弁に物語る。しなやかで上質な空間でありながら、過酷な走行にも耐えうる機能性を両立し、新たに搭載された13.1インチの大型タッチスクリーンとともに、先進的で快適なコクピット環境を提供するのである。
ディフェンダー・オクタ・ブラックは、すでに証明済みの驚異的なパフォーマンスはそのままに、その内外装を究極のオールブラックで統一することで、比類なき個性と所有する喜びを付加したモデルとなっている。最強のオフローダーでありながら、最もラグジュアリーな存在でもあるという、ディフェンダー・オクタが持つ二面性を、デザインの力で最大限に表現した、まさに特別な一台なのである。