




























熟成と革新の融合。「これなら売れる」と納得させた完成度
ボルボ「XC60」の累積販売台数が270万台を超え、ボルボ史上最も売れているモデルとなったというニュースは既報の通り。扱いやすい手頃なサイズのボディに現代のSUVに求められる快適性、機能性、運転の楽しさなどの要素を高い次元でバランスさせたXC60だが、2025年6月、新デザインとなるフロントグリルの採用をはじめ内外装デザインをリフレッシュ。また、最新のインターフェイスを採用し、さらなる進化を遂げて日本に上陸したのだ。
【画像28枚】どこが変わった? ベストセラーSUV、新型ボルボ XC60の洗練された内外装のディテールをすべて見る
大型ディスプレイと新エンジン。着実な進化で快適性と効率を向上
マイナーチェンジを受けた最新のXC60に試乗したのだけれど、気になるようなところはほとんどなく、「これなら売れるよな」と納得させられた。
現行のXC60は2代目で、ボルボのラインナップの中ではトップセールスを記録し続けているもはや屋台骨のような存在である。2018年の販売開始以来、7年が経過したいまでも堅調な売れ行きを続けられているのは、ボルボが毎年のようにXC60に手を加え、時代と顧客のニーズに応えてきた証だろう。
新型車の主な改良点は、センターディスプレイの大型化、次世代の電子プラットフォーム採用による処理速度とグラフィックの向上、エンジンのミラーサイクル化、エクステリアの一部変更などである。穿った見方をすれば「たったこれだけか」とも思えるいっぽうで、「他には手を付ける必要がなかったのか」と感心することもできる。
センターディスプレイは、従来の9インチから11.2インチに拡大されて、視認性と操作性が改善されている。加えて、グーグルを搭載するインフォテインメントシステムは、従来よりも情報処理能力で2倍、グラフィック生成速度で10倍も向上しているという。試しに、ナビゲーションの目的地設定に音声入力を使ってみたら、反応速度や画面の切り替わりが以前よりも速くスムーズになっていた。時間に換算したらおそらくわずか数秒の違いだろうけれど、人間というのはそれが待てずにイライラしてしまう生き物でもある。もし、従来型でストレスを感じていた人であれば、大幅に軽減されたと思うに違いにない。
2Lの直列4気筒ターボエンジンにモーターを組み合わせたマイルドハイブリッドのパワートレインは、ピストンの形状を変更するなどしてミラーサイクル化された。ミラーサイクルは、簡単に言えば圧縮比を変えずに膨張比のみを高くする技術で、同等のパワーを少ない燃料で得ることができる。新型XC60では、約5%の燃費改善が達成できたそうだ。ちなみにこの効果は、特にエンジンへの負荷が一定となる高速巡航時などに堅調に現れる傾向にある。
乗り手に委ねすぎないインテリジェンス
試乗車はXC60ウルトラB5 AWDで、これにオプションのエアサスペンションが装着されていた。プラグインハイブリッドのXC60ウルトラT5は、後輪をモーターで駆動するAWDだが、試乗車はプロペラシャフトで前輪と後輪を繋ぐハルデックス式のAWDである。
フロントのバルクヘッド付近にノイズ軽減対策が施されたようだが、パワートレインよりも前輪由来のロードノイズが若干抑えられたように感じた。静粛性は速度依存度の低いもので、スピードレンジにかかわらず一定の快適性が保たれている。
ミラーサイクル化されたマイルドハイブリッドは、依然として1.9トンの車体を動かすには十分な動力性能を持ち合わせている。必要な時に必要なだけのパワーがいつも確実に得られる安心感は頼もしい。
センターディスプレイにはドライブモード切替の画面を呼び出すアイコンがある。一般的にはコレを押すと、ノーマルとかスポーツとかダイナミックとかエコの表示が現れるのだけれど、このクルマの場合は、スタンダードかオフロードかの選択と、「ステアリング操作感」「サスペンションフィール」のそれぞれにソフト/硬めの選択があるのみだ。これは「さまざまな制御は状況に応じてクルマ側が自動的に最適化しますのでご安心ください」という意味でもある。細かいモード切替が備わっているクルマもあるが、結局のところそれらを完璧に使いこなすことは現実的に難しい。それならば、基本的なところはクルマに任せて、感覚的個人差が大きい部分のみ選択できるようにしているのである。
いつも車両のことを丁寧に説明してくださるボルボのスタッフが「引き算の美学みたいなものでしょうか」とおっしゃっていた。まさしくその通りであり、デザインにしても機能にしても乗り味にしても、XC60には一貫してその美学が貫かれていると思った。
【SPECIFICATION】ボルボXC60 ウルトラB5 AWD
■車両本体価格(税込)=8,790,000円
■全長×全幅×全高=4710×1900×1660mm
■ホイールベース=2865mm
■トレッド=前:1655mm、後:1655mm
■車両重量=1900kg
■エンジン形式/種類=B420T11/直列4気筒DOHC 16V+ターボ
■総排気量=1968cc
■最高出力=250ps(184kW)/5400-5700rpm
■最大トルク=360Nm(36.7kg-m)/2000-4500rpm
■モーター型式/種類=3303/交流同期電動機
■モーター最高出力=10kW/3300rpm
■モーター最大トルク=40Nm/2250rpm
■バッテリー種類=リチウムイオン電池
■燃料タンク容量=56L(プレミアム)
■燃費(WLTC)=12.7km/L
■トランスミッション形式=8速AT
■サスペンション形式=前:ダブルウィッシュボーン、後:マルチリンク
■ブレーキ=前&後:ディスク
■タイヤ(ホイール)=前&後:235/55R19
問い合わせ先:ボルボ・カー・ジャパン TEL:0120-922-662