













































航続距離270km超え。日常使いに十分な安心感と実用性
2025年7月28日、本田技研工業(ホンダ)は、多くのファンが待ち望んだ乗用ユースの新型軽EV(電気自動車)、「N-ONE e:(エヌワン イー)」に関する情報をホームページ上で先行公開した。2025年秋の正式発売に先駆け、8月1日からは先行予約の受付も開始される。長年愛されてきたN-ONEの普遍的な魅力を受け継ぎながら、EVならではの価値をどのように融合させたのだろうか。
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EVとなって進化した普遍的デザイン
N-ONE e:の開発にあたり、ホンダが掲げたグランドコンセプトは「e:Daily Partner(イーデイリーパートナー)」である。これは、日本の市場で真に求められるEVのあり方を追求した結果たどり着いた思想だという。ホンダの乗用車の原点ともいえる「N360」から受け継がれてきた、愛着の湧くエクステリアデザイン、そして取り回しの良いサイズ感とゆとりある室内空間という美点を継承。そこに、EVならではの力強くクリーンな走行性能と優れた静粛性を加えることで、幅広いユーザーに支持されるスタンダードなEVとなることを目指している。日々の移動と暮らしを支え、何気ない毎日を生き生きと活発なものにする「日常のパートナー」として、生活に馴染むシンプルさを追求したモデルといえるだろう。
そのエクステリアは、N-ONEのタイムレスなデザインを基盤としながら、EVならではのクリーンさが巧みに加えられている。特に印象的なのは、フロントフェンダーやリア周りのガラス面を含めたテールゲート全体に与えられた、強く張りのある曲面だ。これにより、上質な立体感とすっきりとした印象を見事に両立させている。また、リアバンパーはフェンダーに沿って丸く絞り込まれ、後方からリアタイヤがはっきりと見えるデザインとすることで、軽快でありながら安定したスタンスを表現している。ボディカラーには、オーナーの気持ちを晴れやかにするような5色が設定された。中でも新色の「チアフルグリーン」は、N-ONE e:のグランドコンセプトを体現するカラーとされ、日常に彩りと前向きな気持ちを添える存在となるだろう。
インテリアデザインもまた、乗員が心地よく過ごせる空間づくりが徹底されている。視界に入るインストルメントパネル上部は、薄く軽やかな造形とされ、四隅や角を感じさせないデザインとすることで、室内空間の広がりを感じさせる工夫が凝らされている。インストルメントパネルやドアパネルの一部、ステアリングパッドには同系色の明るいカラーが用いられ、室内全体の一体感を高めるとともに水平基調を強調し、快適な運転環境の実現を目指した。さらに、運転のしやすさという基本性能も追求されている。ボンネットとインストルメントパネルの上面をフラットに仕上げることで、前方の見通しが良く、車幅感覚も掴みやすい、安心感の高い運転視界を実現した。機能面では、各種操作スイッチをインストルメントパネル中央に集中的に配置し、運転席からも手が届きやすい中段にはワイドトレーを設置するなど、日常使いにおける利便性を高めている点も見逃せない。
暮らしを豊かにするEVならではの実用性能
EVを評価する上で最も重要な指標の一つである航続距離において、N-ONE e:はWLTCモードで270km以上を達成している。これは、市街地、郊外、高速道路の各走行モードを平均的な使用時間配分で構成した国際的な試験法であり、この数値は多くのユーザーが毎日の生活の中で安心して使用できる性能であることを示している。さらに単なる移動手段としてだけでなく、暮らしを支えるパートナーとして、給電機能やV2H(Vehicle to Home)といった、EVならではの便利で暮らしに役立つ機能も備えている。V2Hは、EVに蓄えた電力を家庭用の電力として使用可能にするシステムであり、災害時などの非常用電源としても活用が期待される。
こうしたEVとしての実用性をさらに高めるのが、ホンダの純正アクセサリーを手がけるホンダアクセスから同時に先行公開された専用アイテム群だ。特に注目すべきは、EVのある暮らしをより快適で便利にする充電・給電関連のアクセサリーである。駆動用バッテリーを電源とし、屋外でのレジャーや万が一の災害時に最大1500Wの電気製品の使用を可能にする「AC外部給電器(Honda Power Supply Connector)」は、N-ONE e:の活動領域を大きく広げるアイテムだ。また、施錠したままでも車外からバッテリー残量を一目で確認できる「充電インジケーター」は、日々の充電管理をスマートにしてくれる便利な機能といえるだろう。
環境への配慮とカスタマイズの喜び
ホンダは、限りある資源を有効活用するため、低エネルギーでの資源循環を可能にする「リソースサーキュレーション」に積極的に取り組んでいる。N-ONE e:においてもその取り組みは継続されており、枯渇性資源の使用を可能な限り抑制し、再資源化することを目的とした様々な工夫が凝らされている。具体的には、ホンダ車の廃棄バンパーを再利用した「バンパーリサイクル材」をフロントグリルに採用。インテリアでは、インストルメントパネル部に植物由来のバイオ樹脂を水平アクセントとして使用しているほか、フロアカーペットやインシュレーターには、使用済みのペットボトルやホンダの従業員が使用した作業服を再資源化した素材が活用されている。N-ONE e:を選ぶことは、日々の移動が「より良い未来」へとつながる選択となることを目指しているのだ。
さらに、自分らしい一台に仕上げる楽しみも提供される。ガソリンモデルのN-ONE同様、純正アクセサリーによっていくつかのエクステリアコーディネートが提案されており、EVであっても個性を表現することが可能だ。その一例として提案される「Premium Style(プレミアムスタイル)」は、細部への加飾によって上質感をプラスし、所有する歓びを一層高めるコーディネートである。N-ONE e:の象徴的なフロントマスクを、ブラックとシルバーのアクセントでさらに際立たせる「デカール フロントグリル」などが設定され、その存在感を高めている。
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愛らしいスタイリングと日本の道路環境に最適なパッケージング、そして日常使いに十分な実用性を備えたN-ONE e:は、多くの人々にとってEVをより身近な存在にする可能性を秘めている。ガソリン車から受け継いだ普遍的な魅力と、EVならではの先進機能、そして環境への配慮を高い次元で融合させたこの一台が、日本の軽自動車市場、ひいてはEV市場全体にどのような影響を与えていくのか、今秋の正式発売が非常に楽しみである。
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