











最重要モデルの電動化。メルセデス・ベンツが示す「本気度」
2025年7月29日、メルセデス・ベンツは、9月上旬にドイツ・ミュンヘンで開催される「IAAモビリティ2025」において、待望の新型「GLC」をワールドプレミアすると発表した。世界的なベストセラーSUVであるGLCが、ついに完全電動モデル(EV)として生まれ変わり、その全貌が明らかになる。これはメルセデス・ベンツというブランドが新たな時代へと舵を切る、極めて重要なマイルストーンとなるはずだ。
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伝統と先進性の融合。SUVらしい力強さを取り戻した新たなデザイン言語
発表されたプレスリリースによれば、この新型電動GLCは「EQテクノロジー」を搭載し、メルセデス・ベンツの象徴的なデザインを新たな高みへと昇華させた、全く新しいシリーズの第一弾として位置づけられている。その役割は、ブランドの「新たな顔」を提示することにあるという。メルセデス・ベンツは、この新型車を「目的意識が高く、洗練され、紛れもなくGLCであることがわかる」と表現。さらに「象徴的で、多用途性に優れ、直感的でスムーズ」であると続け、これまでのGLCが築き上げてきた伝統をシームレスに受け継ぎながら、電気自動車ならではの価値を融合させていることを強く示唆している。
GLCは、その絶妙なサイズ感、ラグジュアリーな内外装、そして優れた実用性で、メルセデス・ベンツの販売台数を牽引してきたトップセラーモデルである。その最重要モデルを完全電動化するという決断は、同社の電動化戦略における本気度の現れに他ならない。
これまでに明らかになっている情報を総合すると、次期電動GLCは、従来のEQシリーズで見られた、空力性能を極限まで追求した卵型のフォルムとは一線を画し、より伝統的なSUVらしい力強いプロポーションを取り戻すと見られている。これは、既存のGLCユーザーにも違和感なく受け入れられるデザインを目指しつつ、電動化時代にふさわしい先進性を両立させるという、極めて高度なデザイン目標を掲げていることの証左といえる。
新開発「MB.EA」と800Vシステム。技術革新でライバルを凌駕する
プラットフォームには、中大型EV向けに新開発された「MB.EA(Mercedes-Benz Electric Architecture)」が採用される見込みだ。これにより、パッケージングの自由度が大幅に向上。これまでの情報によれば、内燃エンジンモデル比でホイールベースが延長され、前後席ともに足元や頭上の空間が大幅に拡大されるという。フロントにエンジンを持たないEVの利点を活かし、フロントトランク(フランク)も設定され、積載能力も大きく向上する見通しだ。
心臓部である電動パワートレインとバッテリーには、最新のテクノロジーが惜しみなく投入される。特に注目すべきは、800V高電圧システムの採用である。これにより、充電効率とパフォーマンスが劇的に向上し、充電時間の大幅な短縮が期待できる。一部情報では、最大で320kWを超える超急速充電に対応し、わずか10分程度の充電で長距離走行が可能なほどの航続距離を回復できるとされている。バッテリーのエネルギー密度も高められ、満充電での航続距離は、多くのユーザーが不安を感じることのないレベルに達することは間違いない。
メルセデス・ベンツは、この次期電動GLCをIAAモビリティ2025のハイライトとして、ミュンヘン市街地に設けられる「オープンスペース」と、メッセ会場のホールB3の両方で展示する。これは、専門家だけでなく、広く一般の自動車ファンや市民に向けて、ブランドの未来を象徴するこの一台を強くアピールしたいという意図の表れである。
IAAの主役はGLCだけではない。CLAからAMG、未来のバンまで揃う圧巻の布陣
IAAモビリティ2025におけるメルセデス・ベンツの攻勢は、もちろん電動GLCだけにとどまらない。同社はこのショーを「エキサイティングな新時代の幕開け」と位置づけ、過去最大規模の製品発表プログラムを推し進める。
まず、ショープレミアとして、新型「CLAファミリー」が披露される。こちらは電動モデルと、高効率なハイブリッドモデルの両方が用意される模様だ。さらに、メルセデス・ベンツの流麗なエステートモデルの伝統を受け継ぐ、ブランド初の完全電動エステート「CLAシューティングブレーク」も登場する。デザインコンシャスなユーザーにとって、待望の一台となるだろう。
パフォーマンスを追求するAMGブランドからは、その未来を示すコンセプトカー「CONCEPT AMG GT XX」が出展される。これは、AMGが独自に開発した高性能EV専用プラットフォーム「AMG.EA(AMG Electric Architecture)」をベースとする初の量産モデルを予告するものだ。AMGが描く電動時代のドライビングプレジャーが、この一台に凝縮されているはずだ。
さらに、バン部門からは、2026年の市場投入を目指す全く新しい完全電動グランドリムジン「VLE」のプロトタイプが、カモフラージュを施された姿で先行公開される。ショーファードリブンとしての需要も満たす、新たなラグジュアリーの形が示されることになるだろう。
来場者向けの体験プログラムも充実している。パビリオンからは、30台に及ぶ電動および電動化モデルのフリートによる同乗走行が可能だ。特に注目は、地点間の自動運転機能を備えた「MB.DRIVE ASSIST PRO」を特別装備したCLAでのデモンストレーションである。さらに、DRIVE PILOTを搭載したEQSやSクラスでは、ドイツ国内において時速95km/hまで対応する条件付き自動運転(レベル3)のデモも体験できる。専門家が同乗し、最先端技術について直接質問できる貴重な機会となる。
これらの展示や体験は、メルセデス・ベンツが単にEVのラインアップを増やすだけでなく、先進運転支援システム(ADAS)やインテリジェント・コックピットといったソフトウェア領域においても、モビリティの未来をリードしていくという強い意志を示している。
9月7日のプレナイトイベントでワールドプレミアされる新型電動GLCの発表会は、世界中のメディアやファンの高い関心に応えるため、公式ウェブサイトでのライブストリーム配信も予定されている。メルセデス・ベンツの歴史において、そして世界の自動車市場において、新たな時代の幕開けを告げる一台の誕生を、固唾をのんで見守りたい。
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