
インド商用車市場へ攻勢、ダイムラー・トラックの新戦略
ダイムラー・トラックは2025年8月5日、インド市場向けの商用車ブランド「バーラト・ベンツ(BharatBenz)」が、建設・鉱業セクター向けに新モデル群を発表したことを明らかにした。インドの過酷な現場で広範な顧客試験を重ねて開発されたという新型車両は、稼働時間と運用効率、収益性の大幅な向上を実現しているという。今回の発表は、インドの商用車市場における競争をさらに加速させる一手となりそうだ。
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ダイムラーの品質とインドのニーズを融合したブランド
今回発表されたのは、建設セグメント向けの「BharatBenz HXシリーズ」と、ダイムラー・トラックが世界で実績を持つオートマチックトランスミッションを搭載した「BharatBenz Torqshiftシリーズ」、そして9立法メートルの容量を持つコンクリートミキサー車「BharatBenz 2828C RMC」の各モデルである。いずれも厳しい地形での高い登坂能力や信頼性を誇り、先進のドライバー状態監視システムを搭載するなど、安全性と効率性を両立させているのが特徴だ。
日本ではなじみの薄いバーラト・ベンツであるが、ヒンディー語でインドを意味する「バーラト」をその名に冠するこのブランドは、ダイムラー・トラックがインド市場向けに特別に開発した商用車ブランドである。2012年の設立以来、9トンから55トンまでの近代的なトラックをインド市場に供給してきた。すべての車両はチェンナイ近郊のオラガダムにある最新鋭の工場で現地生産され、部品もインド国内のサプライヤーから調達するという、地域に根差した生産体制を構築している。
ダイムラーが持つグローバルな品質基準と技術的なノウハウを、インドの顧客のニーズに合わせて提供することで、設立から10年足らずでインドの商用車業界に定着したとのことだ。
グローバル戦略の新たな鍵を握るインドの商用車市場
今回のバーラト・ベンツによる新モデル投入は、成長著しいインドの自動車市場全体の重要性の高まりを象徴しているといえる。乗用車に目を向ければ、スズキが長年にわたり大規模な投資を続け、インドで生産されたコンパクトSUV「フロンクス」が2024年に日本市場に導入されたのは記憶に新しい。また、ホンダが2024年に日本で発売したSUV「WR-V」もインドで生産されたモデルである。
自動車市場を巡るグローバルな環境が大きく変化する現在、世界最大の人口を抱えるインドが生産拠点として、そして巨大な消費市場として、その存在感を急速に増していることは間違いない。乗用車のみならず、今回ダイムラー・トラックが攻勢をかける商用車の世界においても、インドという巨大市場が今後のグローバル戦略のカギを握る時代が到来しつつあるのかもしれない。
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