
歴史的レーサーの受賞からコンセプトAMG、限定マイバッハまで。メルセデス・ベンツがモントレー・カーウィークを席巻
2025年8月、米国カリフォルニア州において自動車の祭典「モントレー・カーウィーク」が開催され、メルセデス・ベンツはブランドの豊かな歴史と革新的な未来を鮮烈にアピールした。ハイライトは、115年の時を超えた1910年製「ベンツ・プリンツ・ハインリヒ・ヴァーゲン」が、その時代で最も技術的に進歩した車両に贈られる「チャールズ・A・チェイン・トロフィー」を受賞したことだ。
【画像15枚】W 196 R、300 SLR、SLRスターリング・モスも! ペブルビーチを彩ったメルセデスの歴史的モデルたちを一挙公開
4バルブにデュアルイグニッション、115年前に完成していた驚くべき先進性
イベントの幕開けを飾る恒例の「ツアー・デレガンス」では、この歴史的なレーシングカーが100kmの道のりを先導した。メルセデス・ベンツ・ヘリテージGmbHのCEO、マーカス・ブライトシュベルト氏自らがステアリングを握り、その勇姿を披露した。現存するわずか2台のうちの1台であるこの車両は、メルセデス・ベンツ・クラシック・センターの専門家たちの手によって、最高の信頼性基準に基づきオリジナルに忠実にレストアされたものである。
搭載される5.7L 4気筒エンジンは、4バルブ技術とデュアルイグニッションを採用し、駆動方式はカルダンシャフト、そして特徴的な尖ったリアエンドを持つ流線型のボディは、115年前の時点で既に高い技術水準に達していたことを示している。この車両は、20世紀初頭のヨーロッパで最も重要な自動車レースの一つであった、ドイツ皇帝の弟の名を冠した「プリンツ・ハインリヒ・ファールト」のために開発されたものであった。
ブライトシュベルト氏は次のように語った。
「“ヘリテージが未来を創る”という私たちのモットーに沿って、歴史から未来まで、ポートフォリオの全範囲を提示しました。このクルマの受賞は、私たちのブランドの革新的な強さと歴史的な車両の重要性を改めて裏付けるものです」
F1誕生75周年、ペブルビーチに新旧シルバーアローが集結
モントレー・カーウィークのハイライトである8月17日の「ペブルビーチ・コンクール・デレガンス」では、F1誕生75周年が大きなテーマとなった。メルセデス・ベンツ・クラシックは、1954年と1955年にファン・マヌエル・ファンジオを世界チャンピオンに導いた伝説的なF1マシン「W 196 R」を展示した。さらに、2025年シーズンを戦うジョージ・ラッセルとキミ・アントネッリの最新鋭マシン「メルセデスAMG F1 W16」も並び、ブランドのF1における栄光の歴史と現在を繋いでみせた。
また、「F1の起源」クラスでは、前述のベンツ・プリンツ・ハインリヒ・ヴァーゲンと、個人所有の1914年製「メルセデス115HPグランプリレーシングカー」が共に展示され、1926年に合併する前のダイムラーとベンツが、いかにしてモータースポーツの黎明期を形作ったかを示した。
伝説のサーキット、ラグナ・セカでもF1の75周年が祝われた。サーキットではW 196 Rがデモンストレーション走行を行い、観客を魅了した。さらに、1955年製の300 SLRレーシングスポーツカー(W 196 S)と、2009年製のオープンハイパフォーマンススポーツカー、SLRマクラーレン・スターリング・モス(Z 199)も登場した。SLRの名は、マクラーレンとのパートナーシップで開発されたスーパースポーツカーが、伝説的なレーシングカーの伝統を受け継いでいることを示している。70年前、メルセデス・ベンツは300 SLRでスポーツカー世界選手権を制覇しており、特に1955年のミッレミリアにおけるスターリング・モスとデニス・ジェンキンソンの記録的な走りは今なお語り草である。
「ヘリテージが未来を創る」― ブランドの未来を示すコンセプトカーと限定マイバッハ
ブランドのプレゼンテーションもユニークであった。ドライブインシアターを模した「スターゲイズ・シアター」では、スクリーンに映し出される映画の名場面と共に、実際に劇中に登場した車両が展示された。『ジュラシック・パーク』(1997年)のMクラス(W 163)、『ビバリーヒルズ・コップ』(1984年)の380 SL(R 107)、『ハングオーバー!』(2009年)の220 SE(W 111)、そして『上流社会』(1956年)の190 SL(W 121)など、銀幕を彩ったスターたちが集結し、ブランドが単なる技術的リーダーシップだけでなく、長年にわたり人々のライフスタイルや文化にも影響を与えてきたことを示した。
未来への展望も忘れてはいない。ペブルビーチでは、新たなパフォーマンスの次元を示唆する「コンセプト AMG GT XX」や、新型ミニバンの最上級バージョンをプレビューする「メルセデス・ベンツ ビジョンV」が発表された。さらに、メルセデス・マイバッハは、この地域の象徴的な海岸風景からインスピレーションを得てデザインされた米国市場向け25台の限定特別仕様車「メルセデス・マイバッハ S 680 Edition Emerald Isle」を発表し、注目を集めた。
過去の栄光を称え、現在を祝い、そして未来を垣間見せたメルセデス・ベンツの多彩な展示は、ペブルビーチを訪れた自動車ファンに強烈な印象を残したのである。
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