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【詳報】トヨタ新型bZ4Xの“三位一体改革”― 航続距離・充電・価格で示すEV戦略の本気度

トヨタ bZ4X
トヨタ bZ4X
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トヨタ bZ4X:純正普通充電器
トヨタ bZ4X:純正普通充電器
トヨタ bZ4X
トヨタ bZ4X
トヨタ bZ4X
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トヨタ bZ4X:ノルウェーでの現地評価の様子
トヨタ bZ4X:ノルウェーでの現地評価の様子
トヨタ bZ4X:ノルウェーでの現地評価の様子
トヨタ bZ4X:ノルウェーでの現地評価の様子

トヨタbZ4Xが大幅改良。単なる性能向上に留まらない「BEVを取り巻く環境」への一手

トヨタ自動車は2025年10月9日、BEV(バッテリー式電気自動車)「bZ4X(ビーズィーフォーエックス)」の大幅な一部改良を発表した。2022年春の発売以来、ユーザーの声に真摯に耳を傾け、クルマそのものの魅力を飛躍的に向上させただけでなく、充電インフラや価格戦略に至るまで、BEVを取り巻く環境全体を視野に入れた総合的なアップデートである。今回の改良は単なる商品力強化にとどまらず、BEVを誰にとっても魅力的な選択肢とするための、トヨタの明確な意志表示と言えるだろう。

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「敵は炭素」マルチパスウェイ戦略の中核としてのBEV

今回の改良の背景には、トヨタが一貫して掲げる「敵は炭素」というカーボンニュートラルへの確固たる考え方が存在する。トヨタは、特定のパワートレインに固執するのではなく、世界各地のエネルギー事情や顧客のニーズに寄り添い、多様な選択肢を提供することがカーボンニュートラル実現への最短経路だと考えている。HEV(ハイブリッド車)、PHEV(プラグインハイブリッド車)、FCEV(燃料電池車)、そしてBEVといった電動車から、水素エンジンやカーボンニュートラル燃料に至るまで、あらゆる可能性を追求する「マルチパスウェイ」アプローチがその核心である。今回のbZ4Xの大規模改良は、このマルチパスウェイ戦略においてBEVが重要な柱の一つであることを改めて示すものであり、トヨタがBEVにも「本気」であることを証明している。

クルマの進化だけでは不十分。bZ4Xを核とした充電インフラ戦略「TEEMO」の狙い

トヨタは、BEVをより魅力的な選択肢にするため、ユーザーが抱える課題を「家での充電」「外での充電」「クルマ」の3つの側面に分類し、それぞれに具体的な解決策を提示した。自宅で手軽に充電したいという要望、外出先での充電スポットへのアクセスや充電時間の短縮への期待、そしてクルマ自体の航続距離や走りへの要求、これらの声に一つひとつ応えることで、BEVの普及を加速させようという狙いが見て取れる。

まず、「家での充電」に対しては、トヨタ初となる純正普通充電器を販売店オプションとして新たに設定した。これは6kW出力に対応し、夜間に充電を開始すれば翌朝には満充電が可能となる性能を持つ。デザインは日本の駐車環境に配慮した薄型構造で、住宅の外観に溶け込むスタイリッシュなものだ。さらに、別売のデマンドコントローラーを組み合わせることで、家庭内の電力使用状況に応じて充電電力を自動制御し、ブレーカーが落ちる心配なく家電と併用できるほか、電力契約を最小限に抑える経済的なメリットも提供する。設置からアフターフォローまでを販売店がサポートするワンストップサービスも用意され、ユーザーの利便性を徹底的に追求している。

次に、「外での充電」の利便性向上のため、新充電サービス「TEEMO(ティーモ)」を開始する。このサービスは、BEV・PHEVの普及を見据え、自社ユーザーだけでなく他メーカーのCHAdeMO規格対応車ユーザーも加入可能としたオープンなプラットフォームである。月額基本料金は無料で、利用した分だけ支払う出力別の従量料金制を採用した。専用アプリを使えば、充電器の検索から充電、決済までを完結でき、会員は充電器の予約も可能になる。また、TEEMO充電器の約3割が最大出力150kWの高出力タイプで、今後さらに拡充予定だという。新型bZ4Xの購入者には、TEEMO充電器の利用が1年間無料(月2回・1回30分上限)になるキャンペーンも実施され、BEVライフのスタートを力強く後押しする。

航続距離746km、胸のすく加速。bZ4Xは「クルマ」としてどう進化したか

そして、中核となる「クルマ」本体、bZ4Xも劇的な進化を遂げた。開発陣は「もっと使いやすく」「もっと乗りやすく」「もっとかっこいい」をテーマに掲げ、現地現物での作り込みを徹底した。ノルウェーの氷点下30度にもなる厳しい環境下での実地評価を重ねるなど、ユーザーの実際の使用環境に即した改良が施されている。

「もっと使いやすく」という点では、航続距離の大幅な伸長が最大のトピックである。バッテリーのセル数を従来の96個から104個(74.7kWh仕様)に増やすと同時に、eAxleのエネルギーロスを約40%も削減することで電費を大幅に改善。これにより、一充電航続距離(WLTCモード)はFWDモデルで746km、4WDモデルで687kmを達成した。これは東京から青森までの約700kmに匹敵する距離であり、長距離移動への不安を大きく払拭するものである。また、新たに搭載された「バッテリープレコンディショニング」機能により、充電前にバッテリーを最適な温度に温めることが可能になり、外気温が-10℃という低温環境下でも、150kW急速充電器で約28分(電池残量10%~80%)という短時間での充電を実現している。

スペックだけでは語れない走りの質。トヨタがbZ4Xに注ぎ込んだクルマ屋のプライド

「もっと乗りやすく」という面では、「クルマ屋が作るBEV」としての走りの質が徹底的に磨き上げられた。ショックのない伸びやかな加速を追求し、特に4WDモデルではフロント側eAxleの出力を従来型の約2倍に高め、システム最大出力を160kW(218ps)から252kW(342ps)へと大幅に向上させた。これにより0-100km/h加速タイムは6.9秒から5.1秒へと劇的に短縮されている。さらに、回生ブレーキの減速度をパドルシフトで4段階に調整できる機能を追加し、ドライバーの感覚に合わせた自在な走りを楽しめるようになった。

「もっとかっこいい」というスタイリングの面でも進化は著しい。フロントマスクには、スポーティな印象を際立たせる真一文字のハンマーヘッド形状を採用。フードから両サイドに伸びるLEDランプが、昼夜を問わず存在感を放つ。インテリアは、水平基調のシンプルなインストルメントパネルが広々とした空間を演出し、Zグレードに設定されたパノラマルーフは、中央の補強材をなくすことで、より開放的な視界を実現している。

HEVと同等の価格帯へ。TCOまで見据えた戦略

これだけの進化を遂げながら、価格面でも大きな決断が下された。トヨタは、「BEVをマルチパスウェイの一つの選択肢にしたい」という想いから、国のCEV補助金(90万円)などを適用した後の実質的な価格が、ハリアーやRAV4といった同車格のHEVと同程度になるよう戦略的な価格設定を行った。メーカー希望小売価格は480万円から600万円である。さらに、購入後のエネルギーコストや税金などを含めた総所有コスト(TCO: Total Cost of Ownership)においても、ユーザーが納得できるレベルを目指したとしている。

今回の一部改良は、bZ4Xという一台のBEVの商品力を高めるだけでなく、充電インフラの拡充と利用しやすい価格設定を同時に実現することで、BEVの普及を阻む障壁を一つひとつ丁寧に取り除こうとするトヨタの総合的なアプローチの表れである。まさに、BEVが特別な存在ではなく、誰もが自然に選べる「普通の選択肢」となる時代の到来を告げる、重要な一歩と言えるだろう。

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※この記事は、一部でAI(人工知能)を資料の翻訳・整理、および作文の補助として活用し、当編集部が独自の視点と経験に基づき加筆・修正したものです。最終的な編集責任は当編集部にあります。
LE VOLANT web編集部

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