コラム

メイヤーズ・マンクスの“猫の尻尾”を交換! 快音ステンレスマフラーと、その後に訪れたクラッチケーブルの悲劇【デューンバギー恍惚日記】第9回

マフラー交換とクラッチケーブルの話

【デューンバギー恍惚日記】第8回に続き、「メイヤーズ・マンクス」のレポートをお届けしていこう。

2017年末にレストア完了、「ムーンアイズ」主催のショー出展やビーチ(砂浜)での走行を敢行し、1回目車検で純正ロールバーへの交換やフロント・ナロードなどの改良を実施したのち、フロントタイヤのラジアル化やVW純正オルタネーター・プーリーへの交換を経て完成度を高めた(気になっている……笑)マンクス。今回は、2024年末の3回目車検時に実施した、マフラー/エグゾースト・システム交換と、弱点であるクラッチケーブルのお話。

【画像27枚】パーツ交換やトラブル対処などの様子をつぶさに見る!

マンクス・バギーのマフラー選び

マンクスのレストアをしていた時に悩んだポイントのひとつが“マフラーをどういう形態にするか”だった。左右1本ずつの2本出しにするのか、 チューンド・ビートル用に発売されているEMPI製の様々なタイプから選択するのか。スタイルと同時に自分が気にかけていたのが音量だった。

個人的には無闇に大きな排気音を出す車輌が好きではない。そもそも空冷ビートルは空冷エンジン自体のジャラジャラ……というメカニカルノイズがデフォルトゆえ、決して静粛性の高いクルマではないのだし、ここは極力静かに行こうと考えて、「ケーズコレクション(以下ケーズと略す)」の下村さんに相談してみると「バギーは排気音が大きくて当たり前。特に2本出しはうるさい」と叱られる。

ビートル用純正マフラーの場合、タイコが小さいのに静かなのは、意外なことに2本のテールパイプ部分の消音効果が高いゆえだそうだ。いやはや勉強になった。

わかっていたけど、かなり音がデカイ

結局、「マンクス純正のサイドワインダー式マフラーなら、2本出しに比べれば比較的おとなしいだろう」とのアドバイスを半分くらい信じて決めたのであった。マンクス純正マフラー・キットは、エグゾーストパイプ(マニフォールド)とマフラー(タイコ部分)、ハードウェア(ボルト&ナット、ガスケット)がセットで販売されており、パウダーコートのスチール製だった。

このマフラーが秀逸なのは、マンクスの名前の由来であるマンクス猫(イギリスのマン島にのみ生息する極端に尻尾が短い種類の猫)の尻尾をイメージしたデザイン。こういったアイディアは本当に天才的だと改めて感心した。今更だが、マンクスのモチーフは猫なのである。

筆者が所有する1969年式「メイヤーズ・マンクス」近影。

さて、取り付けた純正サイドワインダーマフラーだが、アイドリング時の音量は抑えられているものの、エンジン始動時や高回転時にはそれなりの音量になる。とは言え自分的に当初は許容範囲だった。しかしご存知の通り、マフラーというものは、タイコに詰められたグラスパックが徐々に失われていき、最終的には所謂“抜けた”状態になる。

度重なる高速道路での走行時にはそれなりにエンジンを回しているので仕方ないのだが、1回目の車検の時点で下村さんから「ほぼ直管! いい音!」と指摘され、対策を講じなければと思案していたところ、代替わりしたメイヤーズ・マンクス社から新設計のサイドワインダー式マフラーが発売された。

新型はどこが改良されたか

旧型サイドワインダーではマフラー本体(タイコ)とサイドワインダー状のエグゾースト・マニフォールドが溶接で繋がっていた。従ってグラスパックが抜けきって、再び充填などのメンテナンスを実施するとなれば、いったんマフラーを切り離すという荒技が必要となる。如何にも現実的でないので思案していた所に発売されたのが新型だ。

新型では問題のマフラー本体とマニフォールド同士が3本のボルトで固定される形式に改良されたので、マフラー本体のメンテナンスに関するハードルは格段に下がったと言える。また流体計算力学を踏まえてコンピュータ設計されており、排圧を低減し、より効率的な排気ガス流を実現することで、馬力とトルクも向上しているという。少し値段が張るが、重要なパートだけに3回目の車検作業時に新型へと交換して頂いた。

3回目の車検作業時に、新型へと交換された純正マフラー/エグゾースト廻り一式。マフラー本体がボルト&ナットで脱着可能となり整備性が向上した。

また新型は従来のパウダーコート・スチールから、「ステンレス・スチール」製へと材質および仕上げの変更がなされた。マニフォールド取り回しの抑揚が全体に控えめになったので、マンクス猫の尻尾の感じはやや薄くなったが、金属パーツとしての質感は大幅に向上している。そして最も重要な音量については、エンジン始動、アイドリング、走行のいかなるタイミングに於いても排気音は静かになったと言える。

全体に優秀な改良版だが、留意すべきはステンレス製ゆえに焼け色がつくこと。焼け色を味として楽しむにしても、ある程度気にかけていた方が良いだろう。

2025年9月。強いて言えばヘッドライトを一回り径の小さいものにしたい。

クラッチケーブル破断

3回目の車検が無事終ってからしばらくして、新しいマフラーで気持ちよくドライブしていた折、クラッチペダルの反発力が突然無くなった。結構通行量の多い幹線道路の右側車線を走っていたが、すぐにシフトをニュートラルに戻し、慣性でなんとか道路脇に寄せて様子をみる。

クラッチペダルには僅かに反発力があるが踏み込んで1速に入れようとするとストールする。これはクラッチケーブルが切れたと確信したが、取り敢えず安全な場所までバギーを手押しで移動、一息ついて下村さんに報告。左後輪の隙間から覗くとケーブルはまっすぐに見えたが、おそらくすでにほぼ破断しているのだろう。これは富山での出来事だったので、バグワークスさんにも連絡して、状況を話すと「なんらかの方法でショップまで辿り着いて来てくれれば対処します」とのありがたいご返事をいただく。

最初は2速に入れてスターターキーをひねって走らせるという、空冷ビートル世界でしばしば聞かれる非常手段を試そうかと思ったが、自分の技量と交通量の多さ、バグワークスまでの距離と信号の数などを考慮して諦め、素直にJAFさんのお世話になった。

マンクスに於けるクラッチケーブルの弱点

JAFさんのお陰様でバグワークスさんに辿りつき、早速クラッチケーブルの交換作業を拝見させていただく。クラッチケーブル破断は空冷VWでしばしば見られるトラブルらしく、みんカラをはじめ、多くのサイトに作業手順が紹介されている。

2025年8月。真夏は駐車時にビニール製シートカバーが猛烈に熱くなる。

ケーブルにはペダル側に「アンカー」、クラッチ本体側に「ネジ付きスタッド」のような部品がついている。アンカーでクラッチペダルと連結されたケーブルは、シャシーの長い管を通ってギアボックス脇まで伸び、そこから約30cmのテフロン製ボーデンチューブを通される。このチューブを抜けるとケーブルは剥き出しとなり、クラッチ本体のレバーとネジ付きスタッドで繋がるという構造。アンカーとネジ付きスタッドは各々カシメられているので、通常のビートルでは交換時に加工の必要は特にないはずだ。

しかしマンクスはビートルと比べて約30cmホイールベースが短い。従って通常の交換用ケーブルは長すぎるのでクラッチ本体側で適正な長さに切断しなければならない。元々カシメられていたネジ付きスタッドも使えなくなるので、寸法を合わせたケーブルの端に改めて代替部品を付ける必要がある。私のマンクスの場合も類似したスタッド状金属部品のスリーブに切断したケーブル末端が差し込まれ、スリーブ部のイモネジでケーブルを押しつぶすように接続されていた。

このケーブルとスタッドの接続方法だと、クラッチ操作時のケーブルが捩れるような動きを強いられる可能性があると推測できる。これはバグワークス林さんのご指摘だが、的を射ていると思う。その後調べてみると、マンクスのようなショートホイールベースの空冷VWバギー用にあらかじめ寸法を短くしたサードパーティパーツも存在することが判明したので、早めに入手して備えたいと思う。

次回も日々のメンテナンスのレポートをお届けします。どうぞお楽しみに!

【画像27枚】パーツ交換やトラブル対処などの様子をつぶさに見る!

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