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【試乗】「マクラーレンGTS」が示す、未来のグランドツーリング。635馬力のV8を日常で操るという贅沢

マクラーレンGTS
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マクラーレンが次なるステージへ向かうための羅針盤的存在

創業者ブルース・マクラーレンは、ロードカー第1弾として計画された幻の「M6GT」に、あえて「GT」の名を冠した。そこには、レーシング由来のパフォーマンスを公道へと開放し、大陸横断的なグランドツーリング性能も備える未来像が込められていたに違いない。その思想を現代に引き継ぎ、さらに磨き上げたのが、新型「GTS」である。

【画像31枚】スポーツ性と快適性を両立した「マクラーレンGTS」の詳細を見る

コンフォートモードでのしなやかな乗り味は特筆モノ

GTSは、2019年に登場したマクラーレン初のグラントゥーリズモ「GT」の正統後継にあたるモデルだ。カーボン製モノコックは、それまでの“モノセル”を基本に、リア部へカーボンブリッジを追加するなどした専用構造を構築。ガラス製のリアハッチを備え、その下のミドシップ搭載エンジン上部に420Lの大容量ラゲッジスペースを設けている点が最大の特徴だ。そこには小型のゴルフバッグまで積載できるという。スーパースポーツでゴルフ場へ――そんな新たな移動様式も可能にしている。

実際にこのGTSを走らせて印象的だったのは、コンフォートモードでの足まわりのしなやかさだ。今回はアルトゥーラや750Sと同じタイミングでGTSを試すことができ、同じコースを走ってみたが、GTSは明らかに路面の凹凸を柔らかくいなし、波間をたゆたうような優雅な乗り心地をもたらしてくれた。全長/全幅/ホイールベースが他のマクラーレン・モデルより拡大されていて、どっしりとしたスタンスを構えていることも、この落ち着きに寄与しているはずである。

インテリアには、ソフトグレインアニリンレザーの表皮や、ダブルパイピングパターン、さらにコントラストステッチなどが備わる。試乗車には上質感を追求した「テックラックス」仕様となる。

その一方で、ワインディングをスポーティに走らせてみると若干の鷹揚さも感じられたのも事実だ。特に印象的だったのはガラス製ルーフの存在である。可変調光式のため明るさを調節でき、クーペらしい快適性を保ちながらオープンカーとも異なる開放感を提供するその装備が、旋回時や切り返しの場面でロールやピッチ量をわずかに増やしているように感じられた。

疲労感なく長距離を駆け抜けるパフォーマンスを発揮

もっともだからといって、その動きが緩慢というわけではなく、むしろスポーツ性と快適性のバランスを取った結果といえる。走りを研ぎ澄ませた750Sやアルトゥーラとは明確に異なるキャラクターであり、同じミッドシップ構造でもここまで味付けを変えられることこそ、マクラーレンというブランドの懐の深さだ。

2023年に「GT」の後継車種として登場した「GTS」は、マクラーレンのラインアップの中でも、ハイパフォーマンスと実用性を兼ね備えたグランドツアラーという位置づけ。スーパースポーツながらも420Lものラゲッジスペースが備わっているのが特徴のひとつだ。

しなやかに動くサスペンションで路面を軽やかにいなし、流れるように交通のリズムへ溶け込む。4L V8ツインターボは635psと630Nmという余裕ある出力を備え、ときに主導権を握り、ときに穏やかに流れを受け入れながら、疲労感なく長距離を駆け抜けるパフォーマンスを発揮する。その走りは、まさに“大陸横断的ロードカー”という思想に直結するものだ。東京から北海道までのロングツーリングも現実的にこなし、日常では得られないスケール感とダイナミズムを味わわせてくれる、そんな旅に連れ出したくなる一台である。

マクラーレンが描く未来像とは?

マクラーレンは今春よりレーシング部門も含めた“マクラーレン・グループ・ホールディングス”として再始動し、そのトップにはジャガー・ランドローバーでレンジローバースポーツSVなどを手がけたニック・コリンズが就任した。彼の経歴を考えれば、マクラーレンは今後、SUVや4ドア・グランドツアラーといった新分野へ舵を切る可能性も否定できない。

しかし、GTSに触れた今はむしろ、スーパースポーツのフォルムを保ちながら、より万能性を高めていくことこそ、マクラーレンの未来像にふさわしいと感じた。ブランドの核にある俊敏性を手放すことなく、グランドツーリングという新たな目的地へ進む。GTSは、マクラーレンが次なるステージへ向かうための羅針盤のように思えた。

【Specification】マクラーレンGTS

■車両本体価格(税込)=26,950,000円
■全長×全幅×全高=4683×2045×1213mm
■ホイールベース=2675mm
■車両重量=1520kg
■排気量=3994cc
■エンジン最高出力=635ps(467kW)/7500rpm
■最大トルク=630Nm(64.2kg-m)/5500-6500rpm
■トランスミッション=7速DCT
■サスペンション形式(F:R)=Wウイッシュボーン:Wウイッシュボーン
■ブレーキ(F:R)=Vディスク:Vディスク
■タイヤサイズ(F:R)=225/35R20:295/30R21

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