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シンガー最新作「ポルシェ911カレラクーペ リイマジンド・バイ・シンガー」が富士で日本デビュー。創業者ロブ・ディキンソンが語る哲学と、中村史郎氏が「驚いた」圧倒的ディテール

Porsche 911 Carrera Coupe Reimagined by Singer」が富士スピードウェイで待望の日本初披露

カリフォルニアを拠点とするシンガー・ヴィークル・デザインが手掛ける最新のレストアサービス、「Porsche 911 Carrera Coupe Reimagined by Singer(ポルシェ911カレラクーペ リイマジンド・バイ・シンガー)」が日本に初上陸した。そのお披露目の場となったのは、2025年10月19日に富士スピードウェイで開催された、シンガーの日本におけるグローバルパートナーであるコーンズ・モータース株式会社主催の顧客向けイベント「CORNES DAY 2025」である。

【画像53枚】80年代ワイドボディの再構築。コスワース製420psエンジンと「圧倒的ディテール」のインテリア。「ポルシェ911カレラクーペ リイマジンド・バイ・シンガー」を写真で見る

中村史郎氏が「普通の才能じゃない」と驚嘆。創業者らと語るシンガーの哲学

この日本デビューを記念し、「CORNES DAY 2025」の会場内でトークショーが開催され、シンガー創業者兼代表取締役会長であるロブ・ディキンソン氏、チーフテストドライバーのマリーノ・フランキッティ氏、そしてカーデザイナーであり元日産自動車チーフクリエイティブオフィサーである中村史郎氏という、豪華な顔ぶれが登壇した。

シンガーは2009年にカリフォルニアで設立された。その名は、空冷ポルシェ911のオーナーと協働し、クラシックな911を「再構築(Reimagine)」するオーダーメイドのレストアで世界的に知られている。彼らの哲学は「卓越性の飽くなき追求」という理念に基づき、アイコニックなデザインへの情熱的なこだわりと、最先端のエンジニアリングを融合させることにある。

カーデザインの第一人者である中村史郎氏は、シンガーとの出会いをデザイナーとしての視点で振り返った。中村氏は、ロブ・ディキンソン氏が元々ロータスに勤めていたデザイナーであることに触れ、「私と共通の知人がたくさんいるんです」と、その縁を明かした。

2017年に初めてロサンゼルス郊外の施設を訪れた際、中村氏はその強烈な「コントラスト」に衝撃を受けたという。「本当に薄汚い施設で。逆にそれがすごいカッコいいんですけども。置いてあるクルマがこれ(シンガーの作品)なんですよ」。施設の雰囲気と、そこに存在する完璧なディテールを持つクルマとのギャップに圧倒されたと語る。さらに中村氏は、デザインから素材選定までロブ氏自身が深く関与している点に触れ、「普通の才能じゃできないですよ。もう、驚きました、本当に」と、その卓越したセンスと情熱に賛辞を送った。

80年代「スーパー・スポーツ」へのオマージュ。コスワース製4.0L420PSの自然吸気エンジン搭載

今回発表された「Porsche 911 Carrera Coupe Reimagined by Singer」は、1980年代の希少なモデル「スーパー・スポーツ・エクイップメント」へのオマージュである。ターボのワイドボディに自然吸気(NA)エンジンを搭載したこの仕様について、ロブ・ディキンソン氏は「1980年代のポルシェ911に深くインスピレーションを与えられている、非常に特別な1台です」とコンセプトを説明した。

その心臓部には、コスワースと共同開発した4.0Lの自然吸気フラットシックスエンジンが搭載される。ディキンソン氏によれば、開発の目的は明確だった。「(エンジン開発の)ミッションは、最大限の出力、そして最大馬力というのを出したかった、というのがあります」

最高出力420psを発生するこのユニットは、シンガーのNAエンジンとして初めて水冷ヘッドと空冷シリンダーを組み合わせ、さらに電動ファンを採用することで熱管理を最適化。また、初の可変バルブタイミング機構も導入され、「非常に使いやすい、走りやすい、そんなエンジンとなっています」と、その仕上がりに自信を見せた。なお、世界限定100台の枠はすでに完売しているという。

シンガーのチーフテストドライバーであるマリーノ・フランキッティ氏は、これらのクルマに「個性」を与える役割を担う。「(シンガーの仕事は)本当に最高の仕事ですね」と語る彼は、2歳の時に見た父の930ターボが原体験だという。日本のカーカルチャーにも造詣が深く、「日本のカーカルチャーというのは本当に素晴らしいものだと感じます。まず、日本の皆さんはクルマに関する知識が非常に深く豊富ですし、クルマに対するパッション、情熱が素晴らしいですね」と述べた。

「私たちがしたいのはポルシェを称えること」創業者ロブ・ディキンソンが語るシンガーの原点と理念

トークショーの核心は、シンガーの原点、そしてロブ・ディキンソン氏自身の哲学にあった。彼は5歳で911に魅了され、カーデザイナーとしてロータスに就職したものの、「レーストラック横のプレハブ小屋」での30年後を想像した時、「自分もしかしたら、クルマのデザインやりたくなかったのかもと気づいてしまったんですね」と衝撃の過去を告白。その後15年間、音楽の道に進んだ。

転機は2003年、ロサンゼルスで「自分用の完璧なポルシェ911」をレストアしたことだった。そのクルマがハリウッドで注目を集め、「自分の情熱は他の人々も共有しているのではないか」と感じたことがシンガー設立のきっかけとなった。「(自分用の911が)シンガーの、母体というか、原流になったと思います」

そして彼は、シンガーの最も重要な理念を強調した。「(重要なのは)私たちがしたいのはポルシェを称えること(celebrate Porsche)であり、自分たちがやってることを褒めてもらいたいのではないということです」

「内燃機関への情熱は消えない」シンガーが示すアナログの未来と「静かなるラグジュアリー」

EV化が進む現代において、こうしたアナログなクルマの未来について問われると、中村氏は「乗馬」を例に挙げ、「(アナログなクルマは)ますます数は減っても、必要とされていくと思いますね」と、その価値が永続的であると断言した。

ディキンソン氏もこれに同意し、「(シンガーの顧客からEVモーターの搭載をリクエストされたことは)ゼロです」と明かした。「内燃機関への情熱は決して消えません」

その哲学は、今回披露されたクルマのインテリアにも息づいている。エルメスのような高級レザーグッズに着想を得た「ステッチ&バーニッシュ仕上げ」や、ポルシェの伝統へのオマージュとしてシンガーで初めて採用されたコーデュロイ素材など、すべてが「静かなるラグジュアリー」を体現している。「Porsche 911 Carrera Coupe Reimagined by Singer」は、ポルシェへの深いリスペクトと最新技術、そして途方もない情熱が注ぎ込まれたディテールの集合体なのである。

【画像53枚】80年代ワイドボディの再構築。コスワース製420psエンジンと「圧倒的ディテール」のインテリア。「ポルシェ911カレラクーペ リイマジンド・バイ・シンガー」を写真で見る

※この記事は、一部でAI(人工知能)を資料の翻訳・整理、および作文の補助として活用し、当編集部が独自の視点と経験に基づき加筆・修正したものです。最終的な編集責任は当編集部にあります。
LE VOLANT web編集部

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