PHEVではなく「HPEV」。電動化すら武器にするランボルギーニの回答
待望の日本上陸を果たした、ランボルギーニの“ハイパフォーマンスEV”「テメラリオ」。最高速度は340km/h以上、0-100km/h加速はわずか2.7秒という圧倒的なパフォーマンスを、THE MAGARIGAWA CLUBのドライビングコースにてモータージャーナリストの渡辺慎太郎氏が試した。
【画像34枚】随所に散りばめられた「六角形」のDNA。全高1201mmの地を這う「テメラリオ」の全貌を見る
時代への迎合ではない。想像の「別次元」を行くプラグインハイブリッド機構
ランボルギーニ・テメラリオは事実上ウラカンの後継車という位置付けになるのだけれど、その設計思想やパーフォマンスなど知れば知るほど、実質的にはウラカンの延長線上ではなく、新たに敷かれたまったく新しい道を走り始めたスーパースポーツではないかと思うようになってくる。

ランボルギーニ・テメラリオ:ウラカンとの比較では、最高出力640ps→800psで25%向上。最大トルク600Nm→730Nmで21%向上。最大回転数8500rpm→10000rpmで17%向上。リッターあたりの出力123ps/L→200ps/Lで62%向上と、とてつもないクルマに仕上がっている。
そう思う理由のひとつはパワートレインにある。4LのV8ツインターボにモーターを組み合わせたプラグインハイブリッド(PHEV)機構。この文字面だけを見ると、ランボルギーニも時代に迎合してPHEVなんかを積極的に積むようになったのかと、ちょっと落胆する方もいらっしゃるかもしれない。しかしこのPHEVは、我々が安易に想像するそれとは別次元のユニットである。
独創のV8+3モーター。YASA製アキシャルフラックスモーターが実現した必然
ランボルギーニはご存知のようにVWグループに属しており、これまでもそうであったようにテメラリオにもグループ内で共有するV8を搭載すると思われていた。ところがこのエンジンはランボルギーニによる専用開発である。そのワケは「1万rpmまで回るV8が欲しかったから」。このご時世に、エンジン開発の必達要件に1万回転を掲げ、そのためにわざわざ新規に作り上げることを選んだ彼らの志の高さには敬服するしかない。
モーターの数は計3基。フロントにふたつ、リアにひとつ組み込まれている。フロントは左右輪それぞれの駆動力を担い、リアはエンジンのクランクシャフトに直結されている。ちなみにこのモーターはYASA製のアキシャルフラックスモーターだ。YASAはメルセデスが買収して100%子会社化したモーターメーカーだが、メルセデス以外への供給も許される契約条件となっているため実現した。来年にも登場すると言われているAMGの新型スポーツカーにも、YASA製のアキシャルフラックスモーターが採用されることがすでに公表されている。

ランボルギーニ・テメラリオ:タイヤは、スーパースポーツカーの車両性能を最大限に引き出すタイヤとして、ブリジストンによってテメラリオ用に専用設計されたポテンザスポーツを装着。ランフラットテクノロジーにより、空気圧がゼロになっても所定のスピードで一定距離を走行できるため急なパンクでも安全な場所まで移動が可能。さらにオプションタイヤとして、いずれも専用設計されたランフラットテクノロジー非採用の「ポテンザスポーツ」、サーキット走行用の「ポテンザレース」、および冬用の「ブリザックLM005」を用意する。
このパワートレインが絞り出すシステム最高出力は920ps、最高速は340km/hを超え、0-100km/hは2.7秒という。トランスミッションは8速のデュアルクラッチ式で、これがV8と組み合わされてキャビン後方に搭載される。3.8kWhの駆動用バッテリーはセンタートンネル内に収められているので、フロア(と全高)が高くなったり、シートのヒップポイントが上がったりすることもなく、ランボルギーニらしい全高1201mmのスタイリングを実現している。また、バッテリーとPHEV用の補機類があるにもかかわらず、車両重量を1690kgに抑えていることも高く評価するべき点だろう。
圧倒的だがナーバスではない。日常の使い勝手と異次元のスタビリティ
メーターや計器類などを含むコクピット周りの風景には、ランボルギーニの流儀が貫かれた只者ならぬ雰囲気が漂っている。いっぽうで、スペースフレーム構造の新しいアーキテクチュアのおかげで、天地方向や足元のスペースが拡大されていて、身長2mのドライバーがヘルメットを装着して着座しても天井に触れないそうだ。さらに、前席の後ろにはちょっとした荷物が置けるスペースまで確保されている。日常の使い勝手も考慮されているのだ。

ランボルギーニ・テメラリオ:ラゲッジスペースはフロントに国際線で機内持ち込み可能なサイズのスーツケースを2個収納できるほか、シートの後ろにもキャリーバッグを搭載可能。スーパースポーツカーにして、ここまでの収納性が高いモデルも非常に珍しく、使い勝手を考慮した新しいスーパースポーツだ。
テメラリオのパフォーマンスは、最近試したスポーツカーの中では群を抜いて圧倒的だった。それほど長くないストレートでも、いとも簡単に200km/hを超えてしまう。それでもスタビリティが異様なまでに高いので、恐怖心はまったく湧いてこない。安定的に強烈な加速を披露し続けるのである。操縦性は決してナーバスではなく、それでもステアリングの微妙な動きに忠実に反応して車体が向きを変える。唯一の欠点があるとするなら、このパフォーマンスが公道ではほとんど試せないことだろう。
【編集部員インプレ】
「乗ったことのあるランボルギーニに比べて、とても運転しやすく乗り心地がよくてビックリ。きっとタイヤのおかげもありそうです。なんて、とにかく速くて緊張しました。室内空間が拡がり身長が200cmの方までOKとのことですが、逆に154cmの方でも運転できます(笑)」(ル・ボラン京谷談)
【SPECIFICATION】LAMBORGHINI TEMERARIO
ランボルギーニ・テメラリオ
■全長×全幅×全高=4706×1996×1201mm
■ホイールベース=2658mm
■車両重量=1690kg
■エンジン種類=V8 DOHC 32V+ツインターボ
■内径×行程=90.0×78.5mm
■総排気量=3995cc
■エンジン最高出力=800ps(589kW)/9000-9750rpm
■エンジン最大トルク=730Nm(71.4kg-m)/4000-7000rpm
■モーター最高出力=299ps(200kW)/3500rpm
■トランスミッション形式=8速DCT
■サスペンション形式=前:Wウイッシュボーン/コイル、後:Wウイッシュボーン/コイル
■ブレーキ=前:Vディスク、後:Vディスク
■タイヤ=前:255/35ZR20、後:325/30ZR21


































