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「吊るし」の怪物、北極圏を駆ける。ベントレー・フライングスパーが氷上で示した、物理法則をねじ伏せる「スタビリティ」の極致

冬季最速ラップタイム2分58秒を樹立!

ベントレーは2025年12月11日、「フライングスパー・スピード」が、世界最北に位置する現役のレースサーキットで新たな「冬季ラップ記録」を樹立したと発表した。これは北極圏からわずか100マイル(約160km)に位置する、スウェーデン北部フェルフォシュのドライブセンター・アリーナ・サーキットで達成されたものである。

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完全に市販状態の車両によるレコード

元は軍用飛行場であったことでも知られるこのトラックは、フライングスパー・スピードが記録を樹立した時、2.05マイル(3.3km)のコース全体が12インチ(約30cm)の氷と雪に覆われていた。今回の挑戦でフライングスパー・スピードは、冬季のコンディションで同施設を周回した車両の中で最速となる2分58秒のラップタイムを記録した。

最長の直線はわずか450mで、しかも氷に覆われていたにもかかわらず、記録走行中の最高時速は120マイル(約193km/h)に達したという。しかし、走行に使用された車両は、スタッド付き21インチ冬季タイヤを装着した点を除き、完全に標準仕様の生産モデルであった。フライングスパーの可変四輪駆動システムと後輪操舵が組み合わさり、このコンディション下でも傑出した俊敏性を発揮したと説明されている。

あらゆるコンディションに対応するパフォーマンス

ベントレーによれば、フライングスパー・スピードは、ウルトラ・パフォーマンス・ハイブリッド・パワートレインと先進的なシャシー・システムにより、あらゆるコンディションで卓越した運転性能を発揮するように設計されている。

パワートレインは600psの4.0LツインターボV8エンジンと、8速デュアルクラッチ・トランスミッション内に統合された190psの電気モーターで構成される。スポーツ・モードではこのパワートレインはフルで782psと1000Nmを展開、Eモーターの即時トルクがV8のクロスプレーン・ビートを補完する。

純粋なEVモード時には、Eモーターは190psと450Nmのトルクを発揮、25.9kWhのバッテリーは最大47マイル(76km)の航続距離(EU走行サイクル)を実現する。V8エンジンとEモーターを組み合わせての総航続距離は515マイル(829km)。フルエレクトリック・モードは、最大87マイル(140km/h)まで、かつ最大75%のスロットル操作まで展開可能だという。

フライングスパー・スピードには、ベントレー・パフォーマンス・アクティブ・シャシーが標準装備されている。このセットアップには、ベントレー・ダイナミック・ライド、オールホイール・ステアリング、電子制御リミテッド・スリップ・ディファレンシャルが含まれる。

また、新世代のESCソフトウェアにより幅広い運転スタイルが可能とされ、あらゆるコンディションで信頼性の高いトラクションが提供されるとのことだ。ただし、今回の記録走行ではこのシステムは完全にスイッチオフされた状態であった。

重量配分はわずかに後輪寄り(48.3:51.7)で、シャシー・システムとESCが最大の効力を発揮するに相応しいプラットフォームとなっている。このシステムは、センター・デフを介した前後へのアクティブ・トルク・ベクタリング、ブレーキを使用した各アクスルへの精密なベクタリングを利用し、あらゆるコンディションで卓越したトラクションを提供するという。

以上のような特徴が、雪に覆われたシートアイスでの高速ラップにとって不可欠であったことは、想像に難くないだろう。

記録からのインスピレーションと特別な仕様

今回の挑戦は、ベントレーの歴史における過去のイベントに触発されたものである。具体的には、2007年と2011年にベントレーが樹立した2つのアイス・スピード記録と、1986年に英国ミルブルック・プルービング・グラウンドでターボ Rが達成した1時間耐久記録(バンク付きボウルで平均時速140マイルを記録)である。

今回使用された車両(登録番号Y15 BML)は、記録時のコンディションが2007・2011年のアイス・スピード記録を反映していた一方で、内外装の仕立ては、ベントレーのヘリテージ・コレクションにあるターボRに合わせた特別な仕様となっている。

これはすなわち、ターボR誕生40周年を記念した同一のブルックランズ・グリーンによるボディ塗装とイエローの細いライン、そしてリネン、カンブリアン・グリーン、オープンポア・ウォールナットのインテリアという仕立てであった。

【ル・ボラン編集部より】

北極圏での最速ラップ。一見すると富裕層向けの余興に映るが、その真価は「物理法則を欺く」シャシー制御の妙にある。782psという暴力的な出力を、モーターの緻密なトルク制御が氷上で手なずける。 正直なところ、日本の公道でこの性能を解放する場面は皆無に近い。だが、極限状態で露呈するこの「過剰なスタビリティ」こそが、あらゆる日常での絶対的な安心感=ラグジュアリーの源泉となのである。

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※この記事は、一部でAI(人工知能)を資料の翻訳・整理、および作文の補助として活用し、当編集部が独自の視点と経験に基づき加筆・修正したものです。最終的な編集責任は当編集部にあります。
LE VOLANT web編集部

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