「人と違うクルマ」に乗りたいという欲望を満たしてくれる一台
筆者・黒木美珠は、30歳を迎える節目に、長年憧れてきた輸入車を手に入れたいという夢を抱いています。本連載では、その夢に向かう過程として、国も個性も異なるさまざまなモデルに触れながら、自身の価値観と向き合い、「心を奪われる一台」と出会うまでの道のりを綴ってきました。
連載第10回となる今回は、「人と違うクルマに乗りたい」という思いを改めて見つめ直す一台として、『アルファ・ロメオ・ジュニア』を取り上げます。私の愛車遍歴を振り返ると、輸入車は一台もありません。だからこそ始めさせていただいたのが、この「輸入車探しの旅」という連載です。
【画像39枚】アルファ・ロメオのコンパクトSUV「ジュニア」と黒木美珠さんのコラボはコチラ
連載開始から回を重ね、気づけば10回。国も思想も異なる、バラエティ豊かな輸入車を体験してきました。そのなかで、漠然としていた自分のクルマ観が、ふと輪郭を持ち始めた瞬間がありました。
今回のテーマは、「人と違うクルマに乗りたい」という思いを叶えること。人とかぶらないクルマとは何か。それは単なる希少性ではなく、自分自身の個性を映し出す存在でもあるように思えます。これまで人とかぶらないクルマに乗ってきたかと問われれば、胸を張って「はい」と言えるわけではありません。しかし、自分のなかにその思いが常にあったことは確かです。人と違う。それは、クルマを通して自分自身に個性を持ちたかったということなのかもしれません。
街中でふと見かけたとき、「あ、あのクルマだ」と気分が高揚する存在。ユニークで、記憶に残るクルマ。そんな存在として思い浮かんだのが、アルファ・ロメオでした。
無意識に目で追ってしまう存在だったけれど、これまでしっかりと向き合う機会は多くなかったブランド。だからこそ今回は、きちんと触れてみたい。そう思い、選んだ一台がアルファ・ロメオ・ジュニアです。
日常に個性を添える、アルファ・ロメオ・ジュニアという存在
ここからは、アルファ・ロメオ・ジュニアの基本的なスペックを簡単に紹介します。ボディサイズは、全長4195mm、全幅1780mm、全高1585mm。車両重量は約1330kgです。パワートレインには、1.2L直列3気筒ターボエンジンにマイルドハイブリッドを組み合わせたユニットを採用しています。システム合計最高出力145ps、最大トルク230Nmを発揮します。乗車定員は5名で、最小回転半径は5.3mです。
実際に数値を見ると、想像以上にコンパクトなサイズ感だと感じます。大きすぎず、小さすぎない。輸入車に対して身構えてしまう人でも、日常に取り入れやすいボディサイズといえるでしょう。
エクステリアでまず目を引くのは、アルファ・ロメオらしさを象徴するフロントフェイスです。ブランドのアイコンである盾型グリル「スクデット(盾)」が中央に据えられ、そこに配された筆記体ロゴが、独自の世界観を際立たせます。フロントからサイドにかけては、直線に頼らない曲線基調のデザインとなっています。リアドアノブをCピラーと一体化させることで、サイドビューはすっきりとまとめられており、軽快な印象を与えます。ひと目で「アルファ・ロメオだ」と分かる造形であり、街中で見かけた際に、思わず視線を向けてしまう存在感を備えています。
インテリアは、ドライバーを中心に考え抜かれたレイアウトです。メーターパネルはフルデジタル化され、必要な情報を直感的に把握できる構成になっています。視線移動も最小限に抑えられており、運転に集中しやすい環境です。センターには10.25インチのタッチスクリーンを配置し、最新のインフォテインメントシステムを搭載。操作体系はシンプルで、日常使いにおいても戸惑う場面は少なくなっています。シートは快適性とホールド性のバランスに優れ、長時間のドライブでも疲れにくそうです。スイッチ類の配置も人間工学に基づいて設計されており、自然に使いやすいレイアウトです。
また、エアコン吹き出し口には、アルファ・ロメオのレースの歴史を象徴する四つ葉のクローバー「クアドリフォリオ」をモチーフとして採用しています。さりげない意匠ではありますが、ブランドのDNAを感じさせる演出です。アルファ・ロメオが長年大切にしてきた「ドライブの歓び」が、インテリアからも確かに伝わってきます。
細部に宿る遊び心。アルファ・ロメオらしさを探す楽しみ
内外装を見渡すと、随所に「遊び心」が垣間見えます。アルファ・ロメオのエンブレムは、主張しすぎることなく、さりげなく各所に配されています。ホイールキャップ、エアコンの吹き出し口、ダッシュボード、さらにはエアバルブキャップに至るまで。意識して探してみると、思いがけない場所にエンブレムを見つけることができ、その感覚は、まるで“隠れミッキー”を探すような楽しさがあります。こうした細部へのこだわりこそが、アルファ・ロメオというブランドの“らしさ”であり、クルマと向き合う時間そのものを、少し特別なものにしてくれます。
デザインに視線が向きがちな一方で、実用性の高さも見逃せません。電動テールゲートはハンズフリー機能付きで、スマートキーを携帯した状態でリアバンパー下に足をかざすだけで自動開閉が可能。荷物で両手がふさがっている場面でも、ラゲッジスペースへのアクセスはスムーズです。
ラゲッジスペースの容量は415Lを確保しています。スーツケースなどの大きな荷物を積み込んだ状態でも後席を使用でき、日常の買い物から小旅行まで幅広く対応します。見た目の個性だけにとどまらず、実用面においても不満を感じにくいパッケージといえるでしょう。
走りにも宿る個性。ジュニアがもたらす“違い”の正体
走りでも『個性』を感じさせてくれました。走り出してまず感じたのは、マイルドハイブリッドならではのスムーズさです。1.2Lと聞いて正直なところどうかなと思いましたが、走り出した瞬間にその心配は消えました。非力さを意識させる場面はなく、日常域では十分に満足感のある走りを披露してくれます。
そして何より印象的だったのは、これまであまり経験したことのないジャンルの走りの楽しさを味わえているという感覚です。ステアリングを握っていると、「アルファ・ロメオらしい」とでも言いたくなる独特の感触が確かに存在します。
正直に言えば、私は歴代アルファ・ロメオの試乗経験が多いわけではありません。それでも、他メーカーではあまり感じたことのない、不思議な楽しさと走りの気持ちよさがあることははっきりと伝えられます。「あれ、なんだか違う」、そう感じさせる個性を持ったクルマなのでしょう。この感覚を完璧に言語化できないのは、筆者自身の経験値不足にほかなりません。もっと修行します。
価格にも現実味。輸入車への距離を縮める一台
価格面も、輸入車としては現実的です。アルファ・ロメオ・ジュニア イブリダの車両本体価格は420万円から。「これなら新車でも現実的だ」と希望が持てました。輸入車=価格面でのハードルが高い、という固定観念を崩してくれる存在です。「人と違う、個性のあるクルマに乗りたい。だが、日常性も譲れない」そんな思いを持つ人にとって、アルファ・ロメオ・ジュニアは非常にバランスの取れた一台といえます。
【5段階評価】
美しさ: ⭐⭐⭐⭐
個性: ⭐⭐⭐⭐
デザイン: ⭐⭐⭐⭐
サイズ感: ⭐⭐⭐⭐
価格: ⭐⭐⭐⭐⭐
走り: ⭐⭐⭐⭐
購入可能性は……85%です。
アルファ・ロメオ・ジュニアは、新車価格から見てもお買い得な輸入車だと感じました。「人と違う個性ある輸入車に乗りたい」という思いに対して、これほど応えてくれる選択肢はそう多くありません。
アルファ・ロメオならではの独自のキャラクターと存在感は、乗るほどに理解が深まり、自然と愛着が増していきそうです。単なる移動手段ではなく、ユニークな友人、あるいは相棒のような距離感で向き合えるクルマ。だからこそ日常に寄り添いながら、自分らしさを映し出す存在になってくれる予感があります。
「輸入車デビューへの道」は、まだまだ続きます。
今回は、「人と違う一台に乗りたい」という思いに正面から向き合い、アルファ・ロメオ・ジュニアが持つ「個性」を改めて実感する回となりました。皆さんが気になる輸入車や、筆者に試してほしいモデルがあれば、ぜひX(旧Twitter)で「#輸入車デビューへの道」を付けて教えてください。それでは、また次のクルマでお会いしましょう。





































