












公道からサーキットまでカバーする新作「RT88」が日本上陸
2026年1月9日。東京オートサロンでBBSジャパンが発表した新製品はとてもバラエティ豊かな布陣だった。とりわけ注目したのは「RT88」だ。BBSはその発祥こそドイツだが、BBSジャパンの製品群は、すべて富山県高岡市にある本社ファクトリーにて設計、生産される、ジャパンメイド鍛造ホイールである。「RT88」もそこに含まれるものの、製品化の道筋はもとより、一部の工程では世界中にいるBBSの扱い手が関わったという。
【画像13枚】「E88」のディスクに「LM」のリム。ピアスボルトの細部まで妥協なき「RT88」の全貌
アメリカン・カーカルチャーから芽生えた
「RT88」が生まれた背景と、その実像を理解するため、会場を訪れていたジェシー・ヘマンズ氏に話を聞いた。彼はBBSアメリカのセールス&マーケティングの責任者として、長きにわたってアメリカにおけるBBS製ホイールの普及に努めてきた。彼自身、誰よりもBBS製ホイールを愛してやまないと自称するカーガイだ。
「私たちはBBSモータースポーツ製レーシングホイール、BBSジャーマニーで生産される鋳造ホイール、そして日本製の鍛造ホイールと、すべてのBBS製ホイールを取り扱い、BBSブランドをアメリカへと普及させてきました。その感触として、とりわけ日本製の鍛造ラインナップは、アメリカ市場において絶対的なもの。特にクルマに対してコダワリと情熱を持つハイエンドカーユーザーに指名買いされるブランドです」
日本の鍛造技術によるBBSジャパン製ホイールに全幅の信頼を置きながらも、BBSアメリカ側はそれを甘んじて受け入れるだけではなく、市場動向を見据えた提案も欠かさない。
「いまから10年以上も前のこと。私たちはひとつのムーブメントに気がつきました。BBSモータースポーツの名作である3ピースのレーシングホイール『E88』が、ポルシェやBMWのコミュニティのなかで、ひそかな注目を集めていたのです。しかし、それは純然たるレーシングホイール。ロードカーへ持ち込むにはハードルが高く、そこには特別なノウハウが必要です。そこで私たちは、『E88』のディスクと、不動の人気を持つBBSジャパン製『LM』のリムを組み合わせたロードカー用の2ピースホイールを思いつき、BBSモータースポーツとジャパンに訴えました」
BBSアメリカからの発案は、BBSジャパンとその子会社であるドイツのBBSモータースポーツをも巻き込んだ一大プロジェクトとなったが、ジェシー氏を含めたBBSアメリカ側の念願が叶って、「RT88」として結実することになった。
時間軸を超越して、永遠に魅力を保つ存在
実際、「RT88」はアメリカで評判を呼んだといえる。2015年、アメリカ最大規模を持つアフターパーツの見本市であるSEMAショーで「ベストニュープロダクト賞」を受賞したことが、プロジェクトの成功を裏付ける。その後、BBSモータースポーツの生産能力の問題で中断することはあったものの、約2年前から本格的な生産を再開したという。当初、BMW用だけだったラインナップも、ポルシェ、VW、アウディ用と膨らんだ。
そんな「RT88」が、アメリカ市場のみならず、こうしてカタログモデルとして日本でも発売されることが決定したのだ。デビューから10年以上が経つが、逆にいうと10年が経ってもまるで鮮度が落ちないところに、BBS製ホイールの魅力があるという。
「それはまるで、ポルシェ911のような存在。モダンクラシックであり、レガシー(伝統的)なホイールとして、あらゆる“時代”を完璧に支えてくれます。100を超えるホイールメーカーが、刹那な流行りを追って浮き沈みを続けるなかで、BBSはいつも普遍的な存在で居続けている。『RT88』はその象徴的存在です。それを日本の皆さまにお伝えできることは、まるで大切な我が子を紹介するかのようであり、心から嬉しく思います」
伝統芸が折り重なった珠玉の2ピース鍛造ホイール
東京オートサロンの会場に並べられた「RT88」のディスクを眺めながら、ジェシー氏はそう述べた。スポットライトに照らされて無骨な造形がほんのりと浮かび上がり、独特の色気をたたえているそれは、ホイールという範疇を超えた伝統工芸品のようだった。
BBSのアイコン的な存在であるクロススポークは、王道中の王道である10本で構成され、それはいかにも力強くたくましい。ディスクとリムとを繋ぐピアスボルトと、その接合部も細部に至るまで微塵も妥協はない。レーシングホイールを祖とした「E88」ディスクと、30年以上も現役で居続ける「LM」リムとの組み合わせだけに、性能という意味でも抜かりはないはずだ。
「RT88」をじっくり眺めるにつれて、それは心の底からBBSホイールを愛している人間たちが寄り添って結実したのだとわかる。BBSに魅了された世界中の人たちが手を組んで生み出した大切な宝物は、2026年3月から日本で走り始める予定である。


