第5回 事故が起こる0.2秒前の予測乗員保護:プレセーフの安全性
メルセデス・ベンツの安全性に関する揺るぎない設計思想と技術の系譜を紹介する本連載。今回は、事故の可能性を察知して、事故が起こる0.2秒前に乗員保護に備えるメルセデス・ベンツ独自の安全革新技術「プレセーフ」と、クルマに高度な知能を加えた「インテリジェントドライブ」の安全性を解説する。
【画像33枚】0.01秒を無駄にしない執念の記録。SクラスやEQSが備える「インテリジェントドライブ」の深層を見る
メルセデス・ベンツは先進の安全装備をフルに発揮させるため、衝突までの残された時間の0.01秒でもムダにしない。筆者は2002年秋に、このことを初めて知った時には大変驚いたものだ。
当時のメルセデス・ベンツの説明によれば次の通りである。ネコは高いところから落ちても、きれいな姿勢で着地する。それは、反射的に体を反転させて着地に備えているからである。メルセデス・ベンツは、自動車にも動物と同じように自らを守るための反射行動をとらせることで、衝突時前に乗員の被害を最低限に抑えるという独自の安全技術「PRE-SAFE(プレセーフ)」を世界に先駆けて開発し2002年秋、Sクラス/W220で実用化した。
実録事故調査が導き出した「能動」と「受動」の融合
今年、2026年はメルセデス・ベンツの自動車誕生140周年記念である。140年にわたる歴史のうち、前半の70年は走行安全性をはじめとする事故を起こさない能動的安全性(アクティブセーフティ)の基礎を確立した時代。後半は事故後の乗員保護する受動的安全性(パッシブセーフティ)という未知なる領域を切り拓き、そして再び能動的安全性とうまくバランスよく統合させた70年といえる。
近年では特にメルセデス・ベンツ安全部門のエンジニア達は、能動的安全性に重点を注いでいる。つまり、衝撃の激しさを和らげるだけでなく、そもそも衝突や事故を起こさないための安全革新技術に注力し開発を続けている。ミスター・セーフティと呼ばれたベラ・バレニーと安全部門のエンジニア達は、安全性追求の答えを1959年のジンデルフィンゲンの実験場から、1969年には路上での事故調査活動に求め続けた。
実験では決して知ることのできない路上の貴重なデータを収集し、安全性向上に役立てたことは周知の通り。彼らは現場に残された事故の真実を発想の原点に、ABSやSRSエアバッグに代表される安全技術を発明し広く公開した。この事故調査活動とドライビングシミュレーターが生み出した成果として注目すべき安全性が、先述の2002年秋、Sクラス/W220で実用化したPRE-SAFE(プレセーフ)である。
衝突前の「空白の数秒」を埋める。能動と受動を繋ぐ“虹の架け橋”の正体
つまり、メルセデス・ベンツは能動的安全性と受動的安全性の間にあるほんのわずかな「空白」に着目した。結果、ドライバーが危険回避のための運転操作を行ってから実際に車両が衝突するまでに「わずか数秒」の時間があること、またシートポジションなどが不適正な場合には、乗員の被害がより増大することを確認した。
この事実から、事故が起こる可能性を予測し、事前の早い段階で乗員保護の体勢を整える新しい安全コンセプト「プレセーフ」を世界に先駆けて開発、実用化したのである。能動的安全性と受動的安全性の虹の架け橋となるこのプレセーフは、事故なき運転の実現を目指して取り組んでいる「総合的安全性」の成果のひとつでもある。
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