スターリング・モスの記憶を継ぐ19台のセブン
英国のスポーツカーメーカー・ケータハムは、1951年に活躍した伝説的なグランプリカー「HWM-Alta」にインスパイアされた特別仕様車「セブンHWMエディション」を発表した。同社の正規販売店であり、由緒あるモータースポーツの歴史を持つHWMとの共同プロジェクトによって誕生した本モデルは、オリジナルのレーシングカーにちなんでわずか19台のみが生産される。英国での販売価格は5万7990ポンド(約1220万円)からとなる。
【画像33枚】1951年の栄光を宿した19台。伝説のGPカーをオマージュしたケータハム・セブン『HWM』の細部に宿る執念を見る
戦後英国GPの栄光。名門「HWM」との邂逅が生んだ奇跡
今回発表された「セブンHWMエディション」は、ケータハムとスポーツカー販売ディーラーであるHWM(ハーシャム・アンド・ウォルトン・モータース)の提携により誕生した。サリー州ウォルトン・オン・テムズに拠点を置くHWMは1938年に設立され、戦後初めてグランプリで優勝を果たした英国チームとして知られている。
特に1951年のグランプリカー「HWM-Alta」は、サー・スターリング・モスなどの伝説的なドライバーを擁し、国際的なレースイベントで7回の優勝、7回の2位、10回の3位という輝かしい成績を残した。本モデルは、その栄光の歴史と、現在のケータハムが掲げる軽量かつドライバー重視の精神を融合させた特別な1台である。生産台数の19台という数字も、オリジナルのHWMレーシングカーへのオマージュとして設定されている。
1951年製の実車から抽出。「HWMグリーン」再現への執念
エクステリアの最大の特徴は、19台すべてに標準採用される「HWMグリーン」のボディカラーである。この色彩は、1951年型HWM-Altaの実車から直接スキャンして再現されたという強いこだわりを見せている。さらに、当時のレーシングカーを彷彿とさせるサイドパネルのルーバーや、特注のノーズコーングリルを採用した。
サスペンションのウィッシュボーン、アンチロールバー、ヘッドライトブラケットなどはレトログレーのパウダーコートで仕上げられている。中央に配置されたクローム仕上げのフューエルフィラーキャップや、特注のHWMケータハム・ノーズコーンバッジも、このモデルの特別感を際立たせている。
職人の手仕事が光るスピン目仕上げ。19分の1を証明する空間
室内空間にも歴史へのリスペクトが込められている。ダッシュボードには手作業によるスピン目仕上げのアルミニウムデザインが施され、スミス製のクロームメーターやソリッドメタル製のマスターカットオフスイッチ、ポリッシュ仕上げの木製クイックリリース式モトリタ・ステアリングホイールが備わる。
シートはHWMロゴがあしらわれたレザー製またはコンポジット製のレースシートを選択可能であり、助手席側のダッシュボードには19台のうちの1台であることを証明する専用プレートが取り付けられ、希少性をアピールする。
懐古主義で終わらない。車重560kgに210psという「牙」
このクラシックな外観の下には、確かなパフォーマンスが秘められている。ベースとなるのは「セブン420」であり、標準シャシーとオプションの大型シャシーの両方でオーダーが可能である。
車体重量わずか560kgの軽量ボディに、最高出力210psを7600回転で発揮する自然吸気の2.0Lデュラテック4気筒エンジンを搭載している。これにより、1トンあたり375psという驚異的なパワーウェイトレシオを実現した。5速マニュアルトランスミッションとの組み合わせにより、時速60マイル(約96.6km/h)までの加速はわずか3.8秒、最高速度は時速136マイル(約218.9km/h)に達する。歴史的なデザインと現代のエンジニアリングが高度に結実したこの限定モデルは、英国の真の自動車愛好家に向けて送り出される。
【ル・ボラン編集部より】
最新が正義とされるスポーツカーの世界において、ケータハムの存在は特異だ。先日の2026年モデルでも「刷新は不要」と断言した彼らが、1951年のグランプリカー「HWM-Alta」に敬意を表した限定車を送り出した。スターリング・モスが駆った栄光の色彩を実車からスキャンして再現するこだわりに唸らされる。単なる懐古主義に陥らないのは、半世紀以上変わらぬ「純粋な走る歓び」という確固たる哲学があるからこそ。この歴史的オマージュは、極上の説得力を放っている。
【画像33枚】1951年の栄光を宿した19台。伝説のGPカーをオマージュしたケータハム・セブン『HWM』の細部に宿る執念を見る




































