幻の電気自動車「GM EV1」が復活へ。GMがYouTubeクリエイターの修復プロジェクトを公式支援
ゼネラルモーターズ(GM)は2026年3月11日、同社初の近代的な量産型電気自動車である「EV1」の修復プロジェクトを公式に支援すると発表した。ジョージア州の車両保管所で発見され、オークションにて10万ドル以上で落札された個体を、自動車愛好家とYouTubeチャンネル「Questionable Garage」が共同で修復している。2026年11月の誕生30周年に向けた、歴史的EVの復活劇である。
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ゼロから設計された近代EVの先駆け
1997年に登場したEV1は、既存の車両の改造ではなく、電気で走ることを前提にゼロから設計された、大手自動車メーカー初の専用電気自動車である。そのルーツは1990年に発表されたコンセプトカー「インパクト」に遡り、ミシガン州ランシングの専用施設で約1000台が製造された。
販売はされずリースのみでの提供となり、後に回収されたため、現在では博物館などに自走できない状態でわずかに残るのみとなっている。しかし、この車が自動車史に残した功績は計り知れない。空力性能を極限まで追求し、ルーフパネルの下にアンテナを内蔵するなど、あらゆる面で先駆的なプログラムだった。他社が追いつく何十年も前に、GMが電動化の未来を見据えていたことを証明する、象徴的な存在である。
現代のEVに通じる革新的な技術の数々
EV1は、現代の最先端EVで標準装備となっている多くの技術の基盤を築いた。例えば、エネルギー効率を高めるために空調システムにヒートポンプを初めて採用したのもこの車であり、現在ではGMの全EVで空調とバッテリー温度管理の両方に活用されている。また、従来の油圧ブレーキとモーターの回生ブレーキを融合させた先進的な電子制御ブレーキシステムは、現代のワンペダル・ドライビングなどの先駆けとなった。
さらに、アクセルやブレーキなどのあらゆる操作を機械式から完全な電子制御へと移行させた「バイ・ワイヤ」技術も導入されていた。航続距離を最大化するための専用の転がり抵抗低減タイヤの開発や、軽量化のために今日のシボレー・コルベットにも似たアルミニウム製のスペースフレーム構造を採用するなど、その技術的野心は多岐にわたる。
愛好家の情熱とGMの公式サポート
今回修復されるのは、奇跡的に回収を免れて残っていた「VIN 212」と呼ばれるグリーンのボディの個体である。オークションでこのクルマを入手したビリー・カルーソら愛好家チームは、高度な修復技術を持つYouTuberのジャレッド・ピンクらと結託し、「プロジェクト V212」を立ち上げた。彼らの目標は、誕生30周年となる2026年11月までに、このクルマを再び走行可能な状態に蘇らせることである。
このプロジェクトの動画を目にしたGM社長のマーク・ロイスは、彼らへの公式な支援を決定した。チームはミシガン州ウォーレンにあるGMのグローバル・テクニカル・センターに招かれ、部品取り用のEV1から慎重に外されたパーツを受け取った。さらに、かつてEV1の開発に携わった技術者や、現在のGMのバッテリー開発を牽引する専門家たちとの交流も実現した。EV1が蒔いた種は、30年の時を経て、現在のGMの幅広いEVラインナップや次世代バッテリー技術へと確実に受け継がれているのである。
【ル・ボラン編集部より】
EV1は、GMが1990年代に描いた電動化の原風景である。当時の野心的な専用設計の思想は、単なる懐古趣味にとどまらない。現代のキャデラック・リリックなどが採用する「アルティウム」アーキテクチャーの根底には、既存プラットフォームの流用ではなく、BEVの特質をゼロから構築するというEV1に通底する哲学が確実に息づいている。早すぎた名車が30年の時を経て再び自走する姿は、アメリカン・ラグジュアリーの新たな時代を切り拓くGMの揺るぎない矜持を証明する歴史的アンカーだ。
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