海外試乗

【海外試乗】マセラティが放つV6の咆哮。聖地トリエステで試す「グランカブリオ」など最新トロフェオ3台の官能評価《LE VOLANT LAB》

イタリア・トリエステで開催されたマセラティ国際試乗会
マセラティ・グランカブリオ
マセラティ・グラントゥーリズモ
マセラティ・グレカーレ

トライデント100周年の幕開け、聖地トリエステから紐解く最新モデルの進化

マセラティは2026年6月18日、トライデントロゴ100周年を記念し、新型グラントゥーリズモ、グランカブリオ、グレカーレを発表した。デザイン刷新のほか、GTとカブリオのトロフェオ仕様は最高出力を590psへ向上させるなどV6エンジンに磨きをかけている。この最新モデル群の真価を確かめるべく、モータージャーナリストの西川 淳氏が聖地トリエステでの試乗に臨んだ。

【画像26枚】100周年のトライデントが輝く。最新V6トロフェオ3台のディテールと美しい情景をギャラリーで見る

ハプスブルク家の栄華を偲ぶ街で味わう至高のGT

長い突堤、モロ・アウダーチェからトリエステの街並みを眺める。古代ローマの植民地として栄えたこの街は14世紀以降、オーストリアのハプスブルク家の支配下となり栄華を極めた。第一次世界大戦後、イタリアへ帰属。突堤から正面にはトリエステ劇場があって、その脇を抜けたボルサ広場には三叉の槍を掲げたネプチューンが立っている。さらに西側にはかの有名なイタリア統一広場があって、巨大な建物に囲まれた大きな広場には現代の“トライデント”が佇んでいた。

今年、トライデントロゴを掲げること100周年を迎えたマセラティは、この地に並々ならぬ因縁を持っている。1911年から1971年まで開催されていた伝説のヒルクライムレース、「トリエステ=オピチーナ」(上り坂のモンツァとも称される)において、マセラティは三度の勝利を飾っているのだ。因縁浅からぬ場所で試すことになったのは、先だって大幅な改良を受けたばかりのフラッグシップGT、グラントゥーリズモとグランカブリオ、そして今やブランドの屋台骨というべきミッドサイズSUVのグレカーレである。

幌まで特注できる優雅さと、研ぎ澄まされたシャークノーズ

試乗会当日、まずはフォーリセリエ(特注)カラーのグランカブリオの運転席に収まった。マットグリーンに凝ったデザインのソフトトップ(トライデントが全面に描かれ半分がグレー、半分がグリーン)が面白い。幌まで特注できるのだ。

グレードはトロフェオだった。エクステリアデザインを最新MCプーラやGT2ストラダーレと同様のテイスト、シャークノーズに変更し、全体的に空力性能を引き上げた点が新型グラントゥーリズモとグランカブリオの“見た目の”注目点なのだが、パワートレイン系でいえばトロフェオの最高出力が40ps引き上げられて590psとなりスポーツエグゾーストシステムも採用した、といったあたりが試乗に際してチェックしなければならないポイントでもあった。

エクステリア以上にコクピットデザインの変更が印象的だ。まずステアリングホイールが上下を押しつぶして四角い形状となり、いっそう“走り”のイメージを強めている。センターの時計は八角形のデジタルで、さまざまな情報を映し出す。PRNDのギアシフトセレクターが立体的となり、より扱いやすくなった。さらに駐車時などステアリングから手を離さずDとRの切り替えを行えるよう、パドルシフトにその役目を担わせた点も面白い。実際に使ってみれば、確かにいちいちボタンを押すのは面倒なので、便利な機能ではあった。

ネットゥーノV6が奏でる官能のオープンエア・クルージング

オープンにして走り出す。トリエステの狭い市街地にネットゥーノV6サウンドを響かせて山へと向かっていく。乾いたサウンドが心地よい。オートマチックのマッピングも変わっており、エンジンフィールをより楽しめるようになった。

コッリオの丘陵地に出た。オープンロードだ。右足に力をこめる。弾けるように加速する。サウンドは明らかにラウドで、高音を響かせようと工夫したことが耳からうかがえた。40psプラスの恩恵をすぐさま感じ取ることはできなかったが、伸びのあるエグゾーストノートがドライバーの気分をより昂らせることだけは確かだ。

相変わらず、よくできたGTであると同時に、ハンドリングの楽しいスポーツカーでもあった。AWDであることを意識させることなく、ひらりひらりとワインディングを駆け巡る。前後の重量バランスに優れていることが、ドライバーの腰を中心に全てが作動していることからも分かる。そのうえ、ライドコンフォートも申し分ない。

アドリア海沿岸まで降りてきた。夏の日差しがかなりきつかったけれど、オープンのままクルージングを続ける。程よく巻き込む風が心地よい。グランカブリオ・トロフェオは確かによくできたGT&スポーツだけれども、選ばれた舞台での優雅なクルージングが最も似合う。否、舞台を選ばずとも“そういう気分”にさせてくれる。そのものが舞台装置である。

イタリア統一広場に戻って、グラントゥーリズモも少し試してみた。グランカブリオよりはボディ骨格が“硬い”ぶん、その乗り味はスパルタンだ。路面からの反応もややハードである。けれども速度を上げていけばだんだんと和らいでいく。基本的なパフォーマンスの高さはそのまま受け継がれていた。

SUVの皮を被ったスポーツカー「グレカーレ」の秀逸なハンドリング

アドリア海から水揚げされたばかりの新鮮な魚介をふんだんに使ったランチに舌鼓を打ったのち、お次はグレカーレ・トロフェオに乗り換えた。こちらもまたマスクの表情を最新テイストに改め、インテリアデザインにも大幅に手を入れている。中央のデジタル時計は八角形で、ステアリングホイールも同じく八角だ。ギアセレクターはメタルの鍵盤タイプとなった。全体的にインテリアの見栄え質感が大きく向上したという印象を抱く。

トリエステ=オピチーナ・レースに思いを馳せつつ、スロベニアとの国境方面へと向かうカルストの田園地帯を駆け上っていく。スロベニアを走るのは初めて。道路標識の町名を全く読めなかったこと以外、交通量も少なく快適なドライブを楽しむ。グレカーレはといえば、相変わらずそのサイズ感が秀逸で、530psのV6パワーを存分に使いつつ、まるでスポーツカーのようなハンドリングを楽しんだ。その代わり、街乗り低速域でのライドコンフォートは硬めで少々我慢を強いられる場面もあったが、辛いというほどのものではない。

本当は新グレードのモデナV6(390ps仕様で、従来の4気筒モデナとV6トロフェオの間を埋める)を試したかったのだが、それは日本へ入ってからのお楽しみということで……。

7月頭に開催されたグッドウッド・フェスティバル・オブ・スピードではグラントゥーリズモベースのGT4マシンも披露したマセラティ。トライデントをロゴに採用してから100周年という節目に、まずは既存モデルを最新フェイスへとアップグレードしたのだった。

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Photo: Maserati S.p.A.

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