MSOが挑んだ究極のレストア
マクラーレン・スペシャル・オペレーションズ(MSO)が、創業者ブルース・マクラーレンの幻のロードカー「M6GT」を完全レストアし、グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード2026で披露した。当時の金型を用いてゼロから蘇らせた徹底的な作業の裏側と、あえて王道のオレンジではなくホワイトを纏わせたMSOの真意について、モータージャーナリストの大谷達也氏が現地インタビューを通じて紐解く。
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わずか3台で途絶えた悲運のプロジェクト
マクラーレン・スペシャル・オペレーションズ(MSO)がレストアしたM6GTは、グッドウッド・フェスティバル・オブ・スピード2026のマクラーレン・ブースで目映いばかりの輝きを放っていた。
M6GTは、創業者ブルース・マクラーレンが抱いた「どこにもない斬新なロードカーを市販する」という夢を叶えるために誕生した。ベースとなったのは、1967年のスポーツカーレース“Can Amシリーズ”を席巻したM6Aと呼ばれるレーシングカー。本物のレーシングカーに用いられる技術をそのままロードカーに転用するという発想は、1992年に誕生したマクラーレンF1にも通じるものだが、M6GTはわずか3台のプロトタイプが制作されたところでブルースが非業の事故死を遂げたため、このプログラムにもひっそりとピリオドが打たれた。
単なる復元を超えた「ゼロからの作り直し」
そんなM6GTをMSOがレストアしたのは、当時の技術により車両を完全に再現することで「マクラーレン創業当時の精神を守る」ことが目的とされるが、果たしてこれをレストアと呼んでいいものだろうか? なぜなら、単にレストアという言葉では片付けられないほど根本的な作業が行われたからで、それはほとんど「新しいクルマをゼロから作り直した」といっても過言ではないほど徹底したものだったからだ。
たとえば、その白く輝くボディは、当時の金型を用いて新たに製作されたものだという。グラスファイバー製のボディパネルが波打っていたり歪んでいたりしないのは、エポキシ・プライマーで表面処理を施したのち、ポリエステル・プライマーを厚めに塗布することで表面をなだらかに仕上げたからだと、MSOでシニア・オペレーション・マネジャーを務めるメリル・バートン氏は教えてくれた。
当時の金型と最新技術が交錯する徹底的なレストア
ちなみに、ボディ製作用の金型は、マクラーレンの古いF1などを保管する倉庫のなかで長年眠っていたそうだ。それを発掘できたことが、今回のレストアで大きな意味を持っていたらしい。
この金型と一緒に発見されたM6A用のパーツもレストアに用いられたが、ここで見つからなかった部品に関してはeBayなどを通じて当時のものを探し出し、適切に整備したうえでM6GTに組み込まれたという。
いっぽうでウインドシールドはスペアが見つからなかったため、現在も残るM6GTから最新の機器を用いて採寸。その図面をCADで起こしてから専門業者に製作を依頼した。「このウインドシールドは、とてつもなく高くつきました」とバートン氏。「おそらく、この種のものとしてはマクラーレンF1用と並んで、世界一高価だと思います」
肝心のシャシーは、同じく当時制作されたM6Aレーシングカー用を使用。ただし、マクラーレンが所有するリファレンスカーと寸法などを照らし合わせてから作業を開始したそうだ。
このシャシーに組み付けられるロールケージ、リアサブフレーム、内部の補強材、配線などはMSOの手でゼロから作り直された。ただし、当時の技術を再現する手法は細部に至るまで徹底され、ドーム型のブラインドリベットやボディカウルを固定する小さなファスナーなどもオリジナルと同じ形状のものが用いられた。
エンジンはオリジナルと同じスモールブロックのシボレーV8を使用。排気量は350cu in(約5.7L)で、M6Aに搭載されたものと同じ「キャメル・ハンプ(ラクダのコブ)」が刻まれたシリンダーヘッドを採用している。ギアボックスもM6GTと同じZF製を搭載する。
王道のオレンジではなく“白”が選ばれた真意
それにしても興味深いのが、今回レストアされたM6GTのボディカラーだ。
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