コラム

【独自取材】なぜスバリストはSTIに熱狂するのか? 賚社長直撃と「水平対向6気筒」復活で紐解く、妥協なきエンジニアリング【自動車業界の研究】《LE VOLANT LAB》

WRCからニュル連覇へ。STIが刻んだ栄光の軌跡と「世界一」への挑戦

日本にもモータースポーツを手掛ける会社は数多くありますが、ニュルブルクリンク24時間レースで世界の強豪と競い合い優勝を遂げ、国内のスーパーGTでも熾烈な争いを制してシリーズチャンピオンを獲得した実績を持つのがSTIです。今回は、STIを率いる賚(たもう)社長や長田課長、さらにSTIユーザーのインタビューも交えて、レースはもちろんのことプロダクトなども研究してご紹介したいと思います。
【画像17枚】極限のレースと市販車をつなぐ技術。STIが放つ「妥協なきエンジニアリング」の全貌

STI(SUBARU TECNICA INTERNATIONAL INC.=スバルテクニカインターナショナル株式会社、東京都三鷹市大沢3丁目9番6号)は“スバルを世界一に”を使命に1988年4月に誕生しています。創立時の社長はスバル(株式会社SUBARU、当時は富士重工業株式会社)が1972年にサザンクロスラリー(オーストラリア)にレオーネで参戦した際にコ・ドライバーを務めた久世隆一郎氏です。

初代レガシィでFIA公認10万km世界速度記録に挑戦して見事に記録を樹立、その後、16年間も記録は破られませんでした。さらに、スバルは過酷なサファリラリーで技術を磨き、1990年から初代レガシィでWRC(World Rally Championship=世界ラリー選手権)へ本格的に参戦しました。早くも1993年には初優勝を果たし、その後、WRCで勝つために開発されたインプレッサは、日本車として初の3年連続WRCマニュファクチャラーズチャンピオンを獲得、日本メーカーとして最多のWRCにおける47勝のうち46勝をインプレッサで記録しています。

STIの歴史 〔STI〕

その後、市販車の“STIバージョン”は限定生産から量産カタログモデルへと発展し、プレミアムスポーツセダンという新ジャンルを確立しています。STIプロデュースの先駆けは、3年連続WRCマニュファクチャラーズチャンピオンを記念して開発された“インプレッサ22B STIバージョン(限定400台)”で、その後、インプレッサS201、S202、S203、S204といった限定車に継承され、パフォーマンスパーツやアクセサリーにも力を注いでいきます。

スバルは2008年でWRC参戦を終了しましたが、STIはWRCで培った技術力で新分野へ挑戦すべく、再び世界一を目指してSTIとして独自にニュルブルクリンク24時間レースに参戦。2011年と2012年、2015年と2016年、2018年と2019年にそれぞれ連覇を達成(SP3Tクラス)、2024年、そして2026年も優勝(SP4Tクラス)も優勝を果たしています。これらのレースで培われた技術は、コンプリートカーやパーツの開発に活かされています。

過酷なニュルブルクリンク24時間レースでクラス優勝。市販車に直結する極限の戦い

エスケープゾーンが少なく、1周25.378kmにもおよび、他に例を見ないほどの激しい高低差とアンジュレーション(うねり)のあるコースで24時間レースをすることから、世界一過酷とも言われるのがニュルブルクリンク24時間レースです。今年の総合優勝はSP9(FIA-GT3公認車両)クラスのメルセデスAMG・チーム・ラヴェノール(Mercedes-AMG Team RAVENOL)の80号車で、ドライバーはマロ・エンゲル選手/ルカ・シュトルツ選手/ファビアン・シラー選手/マキシム・マルタン選手でした。現役F1ドライバーで幾度もチャンピオンを獲得してきたマックス・フェルスタッペン選手がSP9クラスにメルセデスAMG GT3で出場したことも話題の1つで、一時はトップを走っていました(チームはドライブシャフトのトラブルでリタイア)。

そんな世界のトップドライバーも集う、ニュルブルクリンク24時間レースのSP4Tクラス(2.0L以上かつ2.6L未満のターボエンジン搭載車)へSTIはWRX S4をベースにしたSUBARU WRX NBR CHALLENGE 2026(88号車)というマシンにカルロ・ヴァン・ダム選手/佐々木孝太選手/井口卓人選手/久保凜太郎選手のドライバー(及び高津益夫総監督、沢田拓也監督、渋谷直樹技術監督)体制で参戦、見事にクラス優勝を遂げました。

ニュルブルクリンク24時間レース WRX NBR CHALLENGE 2026 〔STI〕

STIチームには、正規ディーラーの中から選ばれた現役メカニックも起用されていて、コンマ何秒を争う極限のレースの世界で様々なトラブルもある中、メカニックは卓越した技術と経験を活かしてチームを支え、さらにこの経験がユーザーのクルマの整備にも活かされていくといった好循環を生み出しています。ユーザーにとっては、自分のクルマをニュルブルクリンク24時間レースで戦ってきたメカニックに診てもらえる嬉しさもありますね。

そして、市販車とはあまりにもかけ離れた技術を主体とするF1等のレースとは異なり(もちろん要素技術やエンジニアの経験といった意味では活きる)、ニュルブルクリンク24時間レースでは、市販車に通ずる技術領域が比較的多いため、そこでクラス優勝を実現する実力と経験は、STIの主力事業である市販車やパーツにも直接的に活かされると考えられます。

【賚社長インタビュー】巨大組織ではできない「ワクワク」を。電動化時代を見据えたSTIの未来

STIの企業戦略やブランドとしてのオリジナリティ、さらに今後の事業展開などについて、リーダーである賚 寛海(たもう ひろみ)社長にインタビューする機会をいただきました。

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photo=スバル/SUBARU、STI
橋爪一仁

AUTHOR

自動車4社を経てアビームコンサルティング。企画業務を中心にCASE、DX×CX、セールス&マーケティング、広報、渉外、認証、R&D、工場管理、生産技術、製造等、自動車産業の幅広い経験をベースに現在は業界研究を中心に活動。特にCASEとエンジンが専門で日本車とドイツ車が得意領域。

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