いちばんよく使うのは親指に近い左右のボタン
5月12日、ポルシェはFIA世界耐久選手権(WEC)のLMP1クラスに参戦している「ポルシェ919ハイブリッド」のステアリングホイールを公開した。中央上部に大型ディスプレイが配置されたそれの表面には24個のボタンとスイッチ、そして裏面には6個のパドルが装着されている。
中でももっともよく使われるのは、ガングリップ型のハンドルを握る右手の親指で自然に触れられる特等席にある、何も文字が記されていない紫がかったボタン。前走車に追い越しを知らせるためにヘッドライトをフラッシュさせる、パッシングボタンだそうだ。
パッシングボタンに次いでよく使用されるのは、その真逆に位置するやはり無印の赤いボタンだ。バッテリーから電力を供給して瞬間的に加速力を増す“ブースト”ボタンで、1周あたりに使用できる回数がレギュレーションで制限されているため、使いどころを誤ると終盤で苦戦を強いられるという。そのほかのボタンやスイッチにどんな機能が割り当てられているかは、写真に添えられた説明文でご確認いただきたい。
ステアリングホイール自体はカーボンファイバー製で、グリップハンドルは滑り止めラバーで覆われている。左右各3個ずつあるうちの真ん中のパドルがシフトチェンジ用で、右がアップ、左がダウンだ。なお、下のパドルはクラッチ操作用で、上のパドルはブーストボタンと同じ役割を果たすブースト操作用とのことである。
「いまどきのレーシングカーはオートマだから……」などという声も聞かれるが、いくら足より手の方が器用だとはいえ300km/hを大幅に超える速度、ル・マンだと340km/hにまで達し、強烈な横Gが発生する中でこれだけのスイッチ類を正しく操作するのは、マニュアルトランスミッションのシフト操作に引けを取らないレベルの、かなり困難な作業に違いない。