街中ではふわふわ高速道路ではひたひたと
個性派で鳴らすフランス勢の中でも、とりわけ独自性が際立つブランドとして知られるシトロエン。そんな同社は、今年で創立100周年を迎えた。世界での販売台数が好調で2018年には過去最高となる104万6000台を記録。また、日本での販売も好調に推移しているという。今回はSUVにコンフォート(快適性)という価値を提案するシトロエン独自のクロスオーバー、C5エアクロスSUVを紹介しよう。
クルマを預かってちょっとばかり懐疑的な気持ちを抱きながら幹線道路に出て3分たらず。僕はもうすっかり笑っていた。笑うしかなかった。いや、これハイドロだ、間違いなくハイドロだろ、と嬉しくなっちゃったのだ。シトロエンの最新フラッグシップの乗り味の中には、確かに往年のシトロエンの代名詞だったハイドロ(=ハイドロニューマティック/ハイドラクティヴ)系サスにしかなかった独特の味わいがあったのである。
でも、構造的には当時のハイドロとは全然違っていて、窒素ガスにバネ代わりを担わせたりLHMやLDS(どちらも専用オイル)にダンパー代わりを担わせたりはしていない。あくまでも金属バネとダンパーによるアナログなサスペンションなのだ。そして“プログレッシブ・ハイドローリック・クッション(以下、PHC)”と呼ばれる技術を中心に、乗り味が構築されている。そのPHCは、いわばダンパー・イン・ダンパー。メインダンパーが伸び切ったり縮み切ったりした段階でセカンダリーダンパーが仕事を引き継ぐというシンプルな考え方で、そこには電子制御の介在というものがない。あくまでもダンパーの中のオイルという液体の粘性のみで物理的にクルマの乗り心地や車体の姿勢を決める。その辺りは昔ながらのハイドロと似た考え方だろう。
PHCが生み出す乗り味は、何とも素晴らしい。街中ではふわふわと、高速道路ではひたひたと、常に足が路面の凸凹を吸収している印象で、その感触が心地よい。段差などがあれば伝えてくるけれど、衝撃となって身体にストレスを与えてきたりはしはない。コーナーではそれなりにロールするが、その動きは抑制が効いていて、揺り返しに見舞われることもない。何だかもう本当に快適なのだ。乗り心地がいいというより、乗り心地が“気持ちいい”といいたいほど。実は東京?神戸まで一気に走ったのだけど、シートの感触がまたかなり心地よかったことも手伝って、これまでで最も疲れが少なかった。それも段トツで、だ。
もちろんロングが楽だったのは、搭載する2Lのディーゼルターボのトルクの分厚さや、その美味しいところを積極的に使わせてくれるアイシン製8速ATの貢献も大きい。街中でも高速道路でも心地好く滑らかに走れ、ゆとりを持って速いのだ。適度にロールしながら適度にアンダーステアを感じさせながら、きっちりと路面を捕らえ続けて曲がっていくハンドリングも、なかなかの安心感だ。
1000万円以下、いや、1500万円まで広げても、これほど乗り心地がいいクルマはないんじゃないか? とすら感じられた、424万円のミドル級SUV。これを見逃したらいけない、と思う。