試乗記

【比較試乗】「メルセデス・ベンツ A200d vs BMW 118iプレイ vs アウディ A3 スポーツバック 30 TFSI SPORT」コンパクトハッチの覇権争いを制するのは?

輸入車の販売台数は年々伸び続けているが、中でも元気なのがコンパクトクラス。さらに新型Aクラスと1シリーズが投入されたことにより、ドイツプレミアム御三家のコンパクト市場はさらに活気づきそうな気配である。ここでは3台のキャラクターを明らかにしつつ、ベストな1台を探ってみよう。

“非”Mスポーツは絶妙によかった

ひと昔ほど前のお話。メルセデス、BMW、アウディのドイツ御三家が作るこのクラスのクルマに乗ると、それぞれ“確かにいいクルマだなぁ……”と感じながら、同時に“でもなぁ……”という手放しになれない何かを覚えたことが多かった。ちっともダメなわけじゃない。ただ何となくどことなく“らしさ”不足であるように思えたのだ。どこがどうとはっきり指摘できるものでもなかったのだが、全体的に姉達と較べるとそのブランド特有のテイストが軽口というか薄味。立ち位置も目指してるところも微妙に違うことを承知でいうなら、優れたクルマを作っているのにいつまで御三家と同じに扱ってもらえないフォルクスワーゲンのゴルフに乗ったときの方が、明らかにブランド独自のテイストの濃さ、“らしさ”を感じられたものだ。気にならない人には何それ? な話だし、エンブレムに大金を注ぎ込むタイプにとってはどうでもいいところだろうが、性根の座ったクルマ好きにはどうにも見過ごせないところだと思う。

BMW 118i PLAY

時が流れて今。自動車の世界は日進月歩だから、このクラスのクルマ達もあらゆる部分が進化を遂げている。けれど、いつしか最も進化していたのは、そこなんじゃないか? と感じたりしている。
最初に気づかせてくれたのは、BMWの1シリーズだった。新しい1シリーズは貴重だったFRをやめてFFに転身。2シリーズのツアラー系でそれなりの“駆けぬける歓び”を見せてくれたが、ドライビングエンターテインメントともいうべき持ち味よりも実用性と快適性を重んじたのだな、と思っていた。おまけにメイン機種の118iは1.5Lの3気筒ターボ、試乗車は“非”Mスポーツの標準シャシー。期待感は薄かった。が、何と愚かな先入観。118i“非”Mスポ、絶妙によかったのだ。街中ではしなやかさを感じられる穏やかな乗り心地。ところが、峠道に入ったら気持ちよく曲がる曲がる。動きに鈍さや重さはなく、鼻先は気持ちよくインを向き、姿勢の変化は解りやすく、思ったラインの上に容易く載ってくれる。FFのネガティブはほぼ感じられず、意地悪く突いてきたスポーツカーのドライバーに軽く恥をかいてもらえたぐらいコーナリングスピードも速かった。ぶっちゃけ、走らせることがかなり楽しかったのだ。これぞ紛うかたなきBMW、じゃないか。

BMW 118i PLAY

“ザ・メルセデス”のテイストを色濃く持つ

そんなことがあったせいか、メルセデスのAクラスも、ついついそういう目で見てしまう。僕達がメルセデスに無意識に期待してしまうもの。おそらくそれは、突き詰めていくと“極めて質の高いリラクゼーション”なんじゃないか? と僕は思っている。

MERCEDES-BENZ A200d

一般的には紛れもない高級車ブランドとして認識されてるけれど、メルセデスの高級は単なる見栄えのためだけじゃなく、それも含めた全てが乗員を心地好く移動させるために存在すると感じたことが、しばしばあったからだ。試乗車のA200dがディーゼルターボを積み他のAクラスより100kg以上重いこともあるが、その乗り味はしっかりと腰の据わった印象の強い、大人っぽいものだった。もっとエアボリュームのあるタイヤなら、さらに穏やかさが増すだろうけど、街中では大きめな段差などを踏まない限り硬さのようなものを感じることはなく、脚が滑らかに動いて心地良い。その落ち着いたフィールはこのクラスでは重厚といってもいいレベルで、それが安心感にも繋がっている。といってクルマの動きが鈍いわけじゃない。320Nmのトルクは発進から力強く滑らかに速いから、穏やかにも活発にも走れるし、ステアリングだって先代と較べれば反応がややマイルドといえるフィールながら、操作した分だけきっちりと、綺麗に正確に曲がってくれるから気持ちいい。ガソリンエンジンの方は未試乗だからAクラスの全てがこういうベクトルなのかどうかは判らないが、少なくともA200dに関しては、そうした“ザ・メルセデス”のテイストを色濃く持たされている。

MERCEDES-BENZ A200d

A3スポーツバックを買うなら今でしょ、とすら想う

もう1台のアウディA3スポーツバックは、デビューが2012年と、今回唯一のモデル末期に近づいているクルマだ。ただ、アウディの見えない部分の熟成力には定評があって、個人的には今回もそこがマイナス要素になってるようには思えなかった。

AUDI A3 SPORTBACK 30 TFSI SPORT

今回の試乗車は30TFSIスポーツのSライン。1.4Lターボはたった122psだけど上までスムーズに吹け上がって気持ちいいし、スタート直後から200Nmのトルクが力になってくれて低中速域も得意技。Sラインのシャシーはほどよく締まった感じで荒さや粗さはなく、乗り心地も快適といえる部類なのに、曲がりっぷりもしなやかで正確でシャッキリしている。そうした実用域での心地良さ、過剰さがないのに存分に爽快なスポーティさを感じさせる走りっぷり、ゴチャつきのないシンプルなしつらえと思想、それにクルマのそこかしこから感じられる高級感というより“いいモノ”感。それらが高い次元で綺麗にバランスしているのがアウディの“らしさ”であって、もともとプレミアムコンパクトの先駆者らしく巧みに作られていたというのに、それらが熟成されて芳醇さすら感じられるほど。A3スポーツバックを買うなら今でしょ、とすら想う。

AUDI A3 SPORTBACK 30 TFSI SPORT

ここ10年ぐらいの間、自らが育んできた独自性を巧みにクルマ作りへとあらためて盛り込む自動車メーカーが増えてきた。見せかけだけのプレミアム性や単純な数値の優秀さだけで勝利したとしても、そんなものは長く続かない、ということが判ったからだろう。真のヘリテイジとは何なのか。それをマジメに考える自動車メーカーが増えてきたようで、嬉しい。
という想いなんて世の中的には小さな戯言で、そんなのとは無縁にクルマ選びをする人が圧倒多数だろう。それでいい。何せこの3台、いずれもクルマとしてかなり優秀なのだ。ブランドの好みで選んだとしても、後悔することはないだろう。このクラスは、そういうところまで来ているのである。

【Specification】MERCEDES-BENZ A200d
■全長×全幅×全高=4420×1800×1420mm
■ホイールベース=2730mm
■車両重量=1470kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ターボ/1949cc
■最高出力=150ps(110kW)/3400-4400rpm
■最大トルク=320Nm(32.6kg-m)/1400-3200rpm
■トランスミッション=8速DCT
■サスペンション=前ストラット、後トーションビーム
■ブレーキ=前Vディスク、後ディスク
■タイヤサイズ=前後205/60R16
■車両本体価格(税込)=4,060,000円

Aクラスは高精細ワイドディスプレイと「ハイ、メルセデス」のMBUXを標準搭載。試乗車はオプションのAMGラインを装備。インテリアではスポーツシート、赤いステッチ入りレザースポーツステアリング、専用インテリアトリムが、エクステリアでは専用エアロや18インチアルミホイールが装着されていた。

【Specification】BMW 118i PLAY
■全長×全幅×全高=4335×1800×1465mm
■ホイールベース=2670mm
■車両重量=1390kg
■エンジン種類/排気量=直3DOHC12V+ターボ/1499cc
■最高出力=140ps(103kW)/4600rpm
■最大トルク=220Nm(22.4kg-m)/1480-4200rpm
■トランスミッション=7速DCT
■サスペンション=前ストラット、後マルチリンク
■ブレーキ=前Vディスク、後ディスク
■タイヤサイズ=前後205/55R16
■車両本体価格(税込)=3,750,000円

新型1シリーズは新世代デザインのキドニーグリルと、くっきりとしたデザインの4灯ヘキサゴナルLEDヘッドライトを採用することで、より若々しくスポーティな個性を際立たせている。メーターには5.1インチ、センターパネルには10.25インチのディスプレイを備えた最新のBMWライブコクピットを採用。

【Specification】AUDI A3 SPORTBACK 30 TFSI SPORT
■全長×全幅×全高=4325×1785×1435mm
■ホイールベース=2635mm
■車両重量=1320kg
■エンジン種類/排気量=直4DOHC16V+ターボ/1394cc
■最高出力=122ps(90kW)/5000-6000rpm
■最大トルク=200Nm(20.4kg-m)/1400-4000rpm
■トランスミッション=7速DCT
■サスペンション=前ストラット、後4リンク
■ブレーキ=前Vディスク、後ディスク
■タイヤサイズ=前後225/45R17
■車両本体価格(税込)=3,420,000円

A3スポーツバックは2017年1月に商品改良が行なわれ自動ブレーキシステム「アウディプレセンス フロント」を含めアダプティブクルーズコントロールを全車標準化。また、スポーティでスタイリッシュな「SPORT」モデルを新たに設定。室内は丸形のエアコン吹き出し口とコンソールのエアコンスイッチが特徴的だ。

 

フォト=宮越孝政/T.Miyakoshi ル・ボラン2020年2月号より転載
嶋田智之

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