「毎日1テーマずつ読めば、1か月後に所さんみたいな思考になれる！」
「所ジョージの世田谷ベース」50号は、雑誌『Daytona』で6年以上連載を続けてきた「トコロ辞典」の膨大なアーカイブを再編集し、一冊にまとめた完全保存版です。ひとつのテーマは約5分で読みきれるので、毎日1テーマずつ読み進んでいけば、おおよそ1か月で完全読破。翌月には、所さんみたいな思考回路に近づいてしまい、楽しくてしょうがない毎日がやってきてしまうというコンセプトで制作、ここではその一部をチラ見してみましょう。
てい‐へん 【底辺】
三角形で頂角に対する辺。特に二等辺三角形では等辺でない辺を底辺という。台形では平行な二辺を底辺といい，上にあるものを上底，下にあるものを下底と呼ぶ。 社会の下層階級のたとえ。また，一つの分野で，頂点に立つ人を支える大勢の人々
トコロ辞典的「底辺」の解釈
普段とリズムが変わったときなど、思いがけないタイミングで落ちてしまう場所。底を味わったほうが、幸せを感じやすくなり、誰にでも優しくなれる。底を感じずに平坦な暮らしをしていると、つまらなくなってしまったり、不平不満を言いたくなってしまう。普通に暮らせている現状を幸せだと思い、満足することが大切。
【写真7枚】『所ジョージの世田谷ベース vol.50』をチラ見！
■寝坊すると落とし穴にはまる
所：「底」から始まる一日は、なんでも幸せっていう話ね。以前、長い竹竿の先にカメラと首掛け扇風機をつけて「ドローンだ！」って言って近所の川沿いとか公園で撮影したことがあんのね。街中は本物のドローンの撮影は禁止だからダメだけど、これならドローンぽい画もとれるし、画面の左右に扇風機の羽が写っててさ、面白いんだよね。それで、ずいぶん頑張って撮影したもんだから、翌日はぐっすり寝ちゃってさ。
ワタシは普段早起きして、家族が起きてくる前に台所で昨日の洗い物をし、加湿器やコーヒーメーカーに水を入れ、食卓をきれいに拭くのが日課なの。家族が目覚めて来たときには、茶の間がきれいな状態であってほしいっていう気持ちと、家のこともしますよ！ っていう姿勢だよね。
編集部：毎日、仕事前にそれをするって、中々できないことですよね。
所：で、その日は寝坊したもんだから、娘が全部そういうのをやっておいてくれたんですよ。それはそれで嬉しいことじゃん。だからワタシは普段とは違う幸せ感を味わいながら、自分でパンを焼いて、気持ちよく食卓に座ったのよ。すると、そこにはカミさんがワタシのためにと出しておいてくれたバターと蜂蜜があると。綺麗な食卓にコーヒーカップに載せたトースト、バターと蜂蜜、私の目の前に家族の愛情が重なってできた風景が広がって、幸せな気持ちで胸がいっぱいになっちゃうわけですよ。
ワタシがトーストを食べるのはね、カミさんに毎朝バターと蜂蜜を出してほしいっていう思いからなんですよ。実際は朝食を食べなくても大丈夫だし、どうしてもトーストが食べたいわけじゃないの。ウチのカミさんがワタシのためにバターと蜂蜜を出してくれるっていう状態をキープしたい！ トースト食べなかったら、出してくれなくなっちゃうじゃん、でしょ？ だからワタシはトーストにバターと蜂蜜をたっぷり塗るんですよ。蜂蜜をなるべく早く消費して、カミさんに蜂蜜を補充してほしいっていうね(笑) なんとか、ワタシに注意を向けさせたいってことなんですよ。
ちなみに、うちの蜂蜜は熱処理を施していない天然モノだから、放っておくと糖化が進んでザラザラしてくるんだけどさ。それがバターと混ざると、さらにクリーム色がかって、乳白色でザラザラしたモノが表面に浮いている感じになるんだよね。ワタシの場合、バターも蜂蜜もたっぷり塗るから、食べるときにその白くてザラザラしたモノが必ずこぼれて、食卓に垂れちゃう。几帳面なワタシは、食卓にそれが落ちてベトベトするのは嫌だから、机に垂れたらすぐ指でこそげ取って舐めるんだよ。もちろん後からちゃんと台布巾で拭くよ。でもさ、当座のしのぎで指で舐めちゃうってのがルーティーンなんですよね。
編集部：毎朝、テーブルに垂れた蜂蜜を指ですくって舐めるのがルーティーンなんですか！
所：そうだよ、だってたっぷり塗るからね。何とか、蜂蜜がこぼれない用のフチがついた食パンって作ってもらえないもんですかね？(笑) まあ、垂れた蜂蜜をすくって舐めるってのは、ワタシにとっては家族の愛情が重なった幸せなルーティーンだからいいんですけどね。で、この日も食卓に垂れた蜂蜜を指できれいにすくって舐めながらパンをかじっていたわけですよ。すると、椅子のひじ掛けの所にも、クリーム色でドロッとしてザラザラ感のある直径2センチほどの物体が垂れて付いてるんだよね。なんだよー、こんなところまで蜂蜜が垂れちゃってんじゃん！ って思って、いつものルーティーンで、ベタベタ感が無くなるまで指ですくって、きれいに舐めたんだけどさ。が、しかし！ ここから「底」に落ちていくことになるわけだよ。
編集部：どういうことですか？
所：あれ？ 何だこの味は。この酸味と、若干魚臭いこの香り……。これは絶対蜂蜜じゃないぞ！ いったいどういうことなんだ？ って辺りを見渡してみると、テーブルにかけてある布の所に、猫が吐いたゲロが滝のようにかかってるんだよ。うちの猫が夜中に吐いて、その一部がひじ掛けに付いたんだね。
編集部：もしかして……。
所：そう。なんだか知らないけど、見た目が蜂蜜にそっくりなんだよ。それを、ワタシは綺麗にすくい取って、舐めちゃたわけですよ！ 気が付いた瞬間に、口の中に残ってる水分を全部、ぺーっ！ て吐き出すよね。台所で口をゆすぐとか、もうそんなの間に合わない！ 食卓に「わー！」って叫びながら吐き出したのよ。猫の口なんか細菌が無数に居るわけでさ、その猫が吐いたものを、ワタシは舐めちゃってるわけですよ！ もはやワタシの口の中は雑菌だらけ。今のワタシに咬まれると死ぬぞ！ とか冗談を言ってる余裕なんてないの！
編集部：いやぁ、想像するにそれは相当厳しい状況ですね。
所：あのさ、猫の吐瀉物をしっかり味わった人って世界広しといえど、中々いないと思わない？ で、緊急事態に気が付いた娘が大慌てでリステリン持ってきてくれて、その場でうがいしたりして、なんとかことは収まったんだけどさ。愛情の重なったルーティーンから、一瞬にして人生最悪の出来事というか、人生の最底辺、底の底についちゃったわけですよ。
編集部：さすがの所さんも、その日はテンション上がらなかったですよね。
所：いやいや、それがね、その日は何にでも幸福を感じるし、誰にでも優しくなれちゃうんだよね、これが。我が家の裏で水道工事やってたんだけど、その工事のおじさんにも「ご苦労様です」なんて、笑顔で声かけちゃうくらい(笑)
■正しいシフトチェンジとは？
所：つまりね、不幸だとかツマラナイって不平不満を言えるのは、平らに普通に暮らしてるからなんだと思いましたよ。まず、普通に暮らせている状態が、自分にとってトップの状態だって思わないとダメなの。ツマラナイって言う人は、人生が好転しないからだと考えてるところがあるよね。好転するなんて図々しい考えでさ。人生は好転なんかしない。自分のレベルは決まっていて、それを超えていくようなことは起きない。ある程度決まったレベルの中で、どう生き方のシフトチェンジするか？ ってことが大事なんだと思いますよ。
仕事をして、家族を大事にしているいまの暮らしがトップギア。そこからシフトチェンジしたいなら、たとえば近所の病院に花とか果物とか持って行って、身寄りのない方に差しあげてくださいって置いてくるとかさ、そういうことをするってことだと思うんだよ。突拍子もない人間だと思われないように、それなりの理由なんかも考えて行く。そういうのを月に2〜3回するんだよ。すると、病院の受付の人と知り合いになったりとか、枝葉が伸びたりして、いろいろ楽しいことが起きてくる。
そんな風に普通の暮らしと少し違うことをして元の生活に戻ると、普通の暮らしが満足できる、素晴らしいものだって気づくことができるっていうね。まあ、ワタシの場合、寝坊というシフトダウンをしたおかげで、人生の底を味わうことになりましたけど。でも、朝から底を味わったことで、その日起きたすべての出来事が幸せに感じるようになったわけでね。とはいえ以後、寝坊には気をつけようと思います(笑)
所さん的「底辺」の続きは、所ジョージの世田谷ベース vol.50をご覧ください！
所ジョージの世田谷ベース vol.50
定価：1,020円
本誌購入は以下より
https://amzn.to/3b9WGBa
世田谷ベースステッカー付き！
・掲載テーマ
あいそ【愛想】
あつ‐くるし・い【暑苦しい】
いそがし・い 【忙しい】
おとしあな【落とし穴】
おも‐しろ・い【面白い】
おもい‐つ・く【思い付く】
おんきせ‐がまし・い【恩着せがましい】
かた‐づ・ける【片付ける】
かんが・える【考える・勘える】
き‐しょう‐てん‐けつ【起承転結】
クリエーティブ【creative】
クレーム【claim】
けっ‐こん【結婚】
けん‐ぜん【健全】
こ‐せい【個性】
ころばぬさきのつえ【転ばぬ先の杖】
し‐あわせ【幸せ・仕合（わ）せ】
じっ‐しつ【実質】
しっ‐ぱい【失敗】
じょう‐ほう【情報】
そうぞう‐りょく【想像力】
ちゃく‐ち‐ てん【着地点】
て‐ま【手間】
てい‐ へん 【底辺】
てん‐ごく【天国】
ととの・う【整う】
のり‐しろ【糊代】
ヒーロー【hero】
ひにちじょう（せい）【非日常（性）】
ひょう‐げん【表現】
べん‐り【便利】
まと‐はずれ【的外れ】
まん‐ぞく【満足】
め‐くじら【目くじら】
メリット【merit】
やくにたつ【役に立つ】
やり‐なお‐す【やり直す】
よ‐ゆう【余裕】
ルール【rule】
わ・る【割る】
