昔の思い出がよみがえる横須賀ドブ板通り
そうだ、横須賀に行ってみよう――。ドブ板通り、久しぶりに来た。横須賀海軍施設(アメリカ海軍横須賀基地)の出入口にほど近い、昔ながらの商店街だ。
時計の針を戻せば、最初は中学生の頃「スヤジャン」欲しさに横浜から電車で来たこともあった。クルマの免許をとってからは、横浜の友達たちと逗子や鎌倉に遊びに行く時、横須賀で海軍カレーを食べた。
その後、日産の追浜工場やその周辺の日産開発拠点への取材時に、「帰りにちょっと、横須賀に寄ってみようか」という気持ちにもなったことが何度もある。江戸時代に、広島の呉や長崎の佐世保などとともに、日本の造船の基盤を築き、第二次世界大戦後にはアメリカンカルチャーを身近に感じる場所として、若者たちが憧れた。
首都圏では、アメリカ空軍横田基地の周辺でも福生(ふっさ)などでアメリカンな雰囲気が残っているが、横須賀は町の規模が大きく、また海岸線という立地もあり、アメリカと日本のカルチャーが複合するような独特の空気感がある。
そんな横須賀に、コンちゃんと一緒にやってきた。横須賀中央駅から少し南下すると、大型商業施設の1階にコンちゃんの仲間たちがいる。ここは、アルトピアーノ横須賀本店だ。開業からもう5年が経つが、あの当時、まさかここまで強烈なキャンピングカーブームが来るとは、同社関係者も筆者など業界関係者も予測していなかった。
予測できなかったと言えば、昨年から大きな社会問題となっている、ダイハツ、豊田自動織機など、トヨタグループ各社による認証不正がある。法的に違法であることは当然だが、一般ユーザーにとってクルマに対する信頼を失い兼ねない大問題だ。
この問題に関して、筆者はトヨタやダイハツが行った記者会見にも参加し、各社関係者とも意見交換をしてきた。各社関係者には、本当の意味で初心に戻り、次の時代に向けた新たな出発を切って欲しいと切望している。
今回の認証不正の影響を受けて、コンちゃんと同型のハイエース・ディーゼルや、コンちゃんの仲間たちであるアルトピアート各モデルのベースであるタウンエース、そして軽のピクシスバンの生産が一時停止。そのため、今回の取材時期である2024年3月上旬時点で、アルトピアートとしてはどのモデルでも顧客からオーダーが入っても、「納期は未定」(アルトピアーノ横須賀関係者)と言わざるを得ない。
これは、トヨタ・ダイハツ系のベースモデルを使う他のキャンピングカービルダーも同じ状況だ。
トヨタとダイハツは、認証不正に対する国の立会検査などを終えたモデルから生産を開始し始めており、キャンピングカー事業者のとっては、そしてキャンピングカーを愛する人たちにとって、もう少しの辛抱だと思う。
三菱トライトンに感じた驚きと期待
横須賀に立ち寄った後、先日も行ったが再びいすゞ・藤沢工場界隈へ。さらに、パナソニックが持続可能な街づくりをしている、「Fujisawa サスティナブル・スマートタウン(Fujisawa SST)」にも立ち寄った。
すると、自動配送ロボットが街中を行き交っている。これは、昨年4月の道路交通省の一部改正で、「遠隔操作型小型車」が許可され、それに基づき8月から実証実験をしているものだ。
コンちゃんの隣を、自動配送ロボットがスゥーと走る。未来の街を実感する瞬間だ。
そんな横須賀・藤沢ツアーの翌週には、富士山麓に向かった。三菱の新型ピックアップトラック「トライトン」の報道陣向け試乗会だ。クルマ好きならば、東京オートサロン2024年などで展示されたトライトンの存在をご存知かと思う。
日本には12年ぶりに復活する、三菱のグローバルトラックである。生産はタイで、日本を含めてグローバルに出荷される。日本導入モデルは、4WDのダブルキャブ(4ドア)のみで、標準グレード「GLS」(498万800円)と上級グレード「GSR」(540万1000円)の2グレードだ。
試乗したダートコースで、筆者は歴代の「ランクル」や「ジムニー」を走らせているが、トライトンの走破性の高さと、乗り心地の良さに正直驚いた。パジェロで培った、トランスファーをコントロールする「スーパーセレクト 4WD-Ⅱ」と7つのドライブモードが、ギミックではなく本当にしっかり効く。
さらに、舗装路でのハンドリングが2Hでは軽やかで、4Hにすると”ほどほどのしっかりさ”が安心感を高めてくれる。オフロードとオンロードの双方で日常的に使える、見事なバランス感を実現した。
そんなトライトンのアクセサリーカタログを見ると、当然だがアウトドアを意識した用品が様々ある。小型のカーサイトテントや、リアベッド(荷室)をまるごと囲んで見た目がSUVのようになる「キャノピー」(68万6400円)がある。コンちゃんと一緒に各地のキャンピング施設に行くと、デリカ「D:5」を見かけることがよくあるが、今後はここにトライトンの数が一気に増えるかもしれない。
その他、日産とホンダが事業連携するという大きなニュースもあった。電動化や知能化で今後、様々な協業を模索するという。ホンダといえば、次世代EV「ゼロシリーズ」のコンセプトモデルを発表し、日本ではホンダ青山本社で開発者やデザイナーとの意見交換の場があった。
ここにも、コンちゃんと一緒に出かけたが、日産・ホンダのコラボで電動キャンピングカーという発想も夢ではないように感じた。年度末、何かといろいろ自動車業界では動きがある。三寒四温を経て、4月になればまた、コンちゃんと一緒に楽しい思い出作りに出かけてみよう。
この記事を書いた人
専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。日本自動車ジャーナリスト協会会員。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、自動運転、EV等の車両電動化、情報通信のテレマティクス、そして高齢ドライバー問題や公共交通再編など。