北米仕様の「CR-V」を纏ったプロトタイプをテストコースで試す
ついに、ホンダ「ゼロシリーズ」に乗った。
ゼロシリーズはまず、スポーティなデザインが特徴の「サルーン」が2026年から量産されるが、その後は2030年に向けて各種SUVやセダンなど、サルーンを含めて合計7モデルがグローバルで市場導入される予定だ。
今回、ゼロシリーズを中心としたホンダの次世代技術を体験する場として、栃木県内のホンダ研究開発施設で報道陣向け技術説明会が実施された。その中で、外観は北米仕様「CR-V」を纏ったプロトタイプをテストコースで運転した。最初に感じたのは、ドライバーとクルマとの一体感だ。
バッテリーパックが車体中央の下部にあることから、低重心なのは分かるが、それでもブレーキを踏むとしっかりとクルマ全体が前に傾く(ノーズダイブ)する。ところがクルマ全体としての「重ったるさ」は感じないから不思議だ。
ハンドリングは、ステア バイ ワイヤーを採用しているのだが、コーナーリング中、ステアリングに対する「手応え感」がほどよく、しかも狭いS字でもクルマ全体の動きの先読みがしやすい。アクセル操作については、いわゆるワンペダルでコーナー中に加減速すると回生ブレーキと加速のバランスがとてもよく、スピードのコントロールがしやすい。モーターは車体の前後にある。
ゼロシリーズの基本は、リアモーター駆動が主体で、ベースモデルが出力180kWのRWD。四輪駆動には2種類あり、出力180kWモーターを前後に積むものと、フロントに出力50kWモーターを搭載するものがある。今回の試乗車は四輪駆動だが、フロントモーターが50kWか180kWかは明らかにしていない。50kWモーターはハイブリッド車と共通部品となる。
また、ゼロシリーズで量産の可能性がある技術として、車外向けカメラによってドライバーを認識することでセキュリティロックを解除するシステムや、車内での人の動きや表情から乗車している人の意図をAIが理解し、その上でさまざま提案をするシステムのデモンストレーションもあった。
1月に米ラスベガス・CES(コンシューマ エレクトロニクス ショー)で世界初公開された、ゼロシリーズ。これまで、なんとなくつかみどころがない印象があったが、今回のさまざまな体験によってゼロシリーズの実態が明らかになった。サルーンの価格は今回も未発表だったが、現行のホンダラインアップの中では当然、最も高いクラスとなる。
ホンダによれば、いまのところ日本でのサブブランドとしての販売は計画していないが、販売方法については通常モデルとの違いを打ち出すようだ。
この記事を書いた人
専門は世界自動車産業。その周辺分野として、エネルギー、IT、高齢化問題等をカバー。日米を拠点に各国で取材活動を続ける。日本自動車ジャーナリスト協会会員。一般誌、技術専門誌、各種自動車関連媒体等への執筆。インディカー、NASCAR等、レーシングドライバーとしての経歴を活かし、テレビのレース番組の解説担当。海外モーターショーなどテレビ解説。近年の取材対象は、先進国から新興国へのパラファイムシフト、自動運転、EV等の車両電動化、情報通信のテレマティクス、そして高齢ドライバー問題や公共交通再編など。