1957年3月のジュネーブモーターショーで初公開された「メルセデス・ベンツ300SLロードスター(W198型)」。この伝説のスポーツカーが誕生から60周年を迎えた。
出自はレーシングマシン
メルセデス・ベンツ300SLロードスターは、1954年に誕生して大きな成功を収めた「300SLクーペ」の派生モデルとして誕生。だが、このオープントップ版はどちらかといえば300SLレーシングカーに由来するモデルで、当時、北米市場を中心に大きな衝撃をもたらした。
300SLロードスターは、ガルウイングドアを持つ300SLクーペのオープントップ版なのだが、開発は困難を極めたという。ルーフを持たないオープンボディゆえ剛性を確保するには補強策が必要だが、そのためスペースフレームから再設計。この結果、車両重量はクーペより120kgも増加した。
実用に足るトランクルーム容量を確保するため、リヤアアクスルはクーペに採用したツインジョイント式ではなくシングルジョイント式とされ、スポーツタイプのスプリングとダンバーを組み合わせた。これが奏功し、ハンドリング性能やロードホールディング性能はクーペより優れたものになったという。その後、1961年3月には4輪すべてにディスクブレーキが導入された。
誕生時のエンジンは215psを発揮する3.0リッター直列6気筒(M198型)。鋳鉄ブロックが用いられていたそれは、1962年の春に軽量のアルミシリンダーブロックに置き換えられ、重量が44kg軽くなっている。
当時、最速のソフトトップモデルだった300SLロードスターは、市場投入から18カ月後に、ハードトップが設定された。ちなみに1958年11月には、レーシング用フロントガラスを備えた300SLロードスターが、高速道路のミュンヘン-インゴルシュタット間を平均242.5km/hで走破する記録を達成している。
今日でも300SLロードスターは、コレクターから高い支持を受けているメルセデス・ベンツ車の1台。最高のコンディションが保たれている個体なら100万ユーロ(約1億2000万円)の値が付くこともあるという。
そんな300SLロードスターの誕生から、ちょうど60年後となる2017年の春、新型「メルセデスAMG GTロードスター(R190型)」が欧州で発売された。この新型ロードスターは、300SLロードスターから受け継がれたオープントップ高性能スポーツカーの伝統をいまに伝えるモデルなのである。