
ランボルギーニオーナーだけが参加できる体験型ツーリング
ランボルギーニは、オーナーに向けて自身の愛車を用いる体験型のプログラム「Lamborghini Esperienza GIRO」を提供している。開催されるのは、イタリア、米国、中国、オセアニア、そして日本という5つの地域。今回、このオーナーだけが体験できるプログラムに最新の「レヴエルト」と「ウルスSE」で参加。その模様をお伝えしよう。
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8回目の日本開催は北海道で
ランボルギーニの2025年第1四半期の納車実績は、EMEA(欧州・中東・アフリカ)、アメリカ、APAC(アジア太平洋)の3つのマーケットで前年同期比でいずれも上回るという好調なスタートを切っている。国別では、アメリカ合衆国の933台を筆頭にドイツ366台、イギリス272台、日本187台と続き、日本でも相変わらず人気を博している。この数字はアヴェンタドールの後継車種となるレヴエルトと、ウルスのPHEVモデルとなるウルスSEのデリバリーが順調に進んでいることが影響している。
ランボルギーニの各モデルは、ガレージで眺めるだけでも当然ながら美しく、眼を楽しませてくれる。しかし、当然のことながらコクピットに身を沈めドライブしないことには、ランボルギーニの真髄のすべてを享受することはできない。そこで、ランボルギーニでは、オーナーに向けて愛車で存分に走るイベント「Lamborghini Esperienza GIRO」(ランボルギーニ エスペリエンツァ ジーロ、以下GIRO)を世界の5つの地域で開催している。
この世界各地で開催されているGIRO、テーマやステージは違えど共通しているのは、風光明媚な道が用意されており、その土地の歴史や風土に触れ、素晴らしい食を楽しみ、宿泊などのホスピタリティも充実しているという点である。さらに、イベント中の愛車の保管や万が一の整備なども含めて、手厚くランボルギーニスタッフがバックアップしてくれているため、安心して愛車のランボルギーニで参加することができる。
このGIROが北海道で2025年6月18日~20日の3日間のスケジュールで開催された。日本では8回目となる「Lamborghini Esperienza GIRO Japan 2025」の参加台数は23台。主な内訳は、レヴエルト13台、ウルスが4台(SE1台、ペルフォルマンテ3台)、さらにはカウンタックLPI 800-4も1台参加。納車されたばかりのレヴエルトオーナーにとっては、格好の慣らし運転のツーリングになったに違いない。
外観からは信じがたいほど扱いやすい「レヴエルト」
今回のGIROでは、北海道の道央にルートが用意された。初日は新千歳空港に直結したポルトムインターナショナル北海道から、宿泊先であり今回のGIROのベースとなるパークハイアットニセコHANAZONOまでの約135km。森の中の支笏湖スカイロードを抜け、支笏湖を右手に国道453号線で三階滝までのほぼ信号のない気持ちの良い区間が待っている。まず最初に乗り込んだのは最新フラッグシップモデルとなるレヴエルトだ。富士スピードウェイだけでなく東京~大阪間の往復を含めて何度か試乗したことがあるので、コクピットドリルは省略。しかし、先代のアヴェンタドールに比べるとステアリング周りのスイッチ類の多さには一瞬戸惑うところだ。
事前に行われたドライバーズミーティングで、路面の悪い箇所が所々にあるということと、休憩ポイントや給油所に入る際にリフトアップする必要があるというアナウンスがあったので、ダンピングの切り替えとリフティング機能の操作だけ事前に確認。これはステアリングの左スポーク──9時方向の上下にふたつあるダイアルのうちの下に位置するダイアルとスイッチで操作する。リフティングがステアリングから手を離さずに親指でブラインドプッシュできるのは、使用状況や頻度を考慮すると非常に使い勝手がいい。
最後にもう1点確認しておきたかったのは、走行距離のリセットだ。今回のルートマップには、ラリーで使われるコマ図が用意されており、ポイントを通過するたびに走行距離をリセットして計測する必要があった。これは左スポークの裏側のスイッチを操作することでリセットができ、表示はセンターメーターの左側のエリアとなる。余談ながら、このリセット方法がわからなかったというオーナーもいたようだ。
14時10分、いよいよスタート地点から出発。アヴェンタドールから採用されるようになったセンターコンソール中央にある赤い蓋を跳ね上げてプッシュするエンジンスタート/ストップボタンを押す。爆音とともにV12が目覚める……ということはなく、静かに公道へと滑り出した。レヴエルトはフロントアクスルに2基、8速DCTの上に1基の電気モーターを搭載したプラグインハイブリッド──HPEV(ハイパフォーマンスEV)なのである。ステアリングの左スポーク上にある赤いダイアルではドライブモードをCITTA、STRADA、SPORT、CORSA(と、ESC OFF)から選択するようになっているが、燃費重視のCITTAでしばらく走行し、リチャージモードでV12に火が入ったのを機にSTRADAモードに切り替えた。STRADAモードでは常に背後のV12のサウンドを聴くことができる。トランスミッションはATモードに固定したまま走った。
寒暖差が激しい内陸部では、アスファルトの路面が荒れていると聞いていたが、支笏湖スカイロードに入るとそれが顕著にわかるようになった。ダンピングをハードからソフトに切り替えて、もっともマイルドな設定で何度も路面改修された跡の残るワインディングロードを先導車とそれに続くレヴエルトのあとを追うようにして走る。富士スピードウェイや新東名高速のようなフラットな路面では当然のことのように思えていたのだが、レヴエルトの乗り心地の良さと扱いやすさにアヴェンタドールのときと同じく2世代分の進化を感じ取ることができた。アヴェンタドールのローンチの際に、向こう10年先までスーパーカーの最前線で戦えるだけの技術的進化をしているとヴィンケルマンは高らかに宣言していたが、実際、アヴェンタドールは2011年の登場から11年ものあいだ、色褪せることなくその存在感を放っていた。
これと同じくレヴエルトは、2030年代半ば近くまで、スーパーカーの最前線でライバルを迎え撃つことができるだろう。なぜなら、いま、この手のスーパーカーには、絶対的な速さだけでなく日常域での洗練度の高さも求められる。レヴエルトはその一見すると背反するような現代のスーパーカーに求められる要件を、見事にクリアしているのである。補足しておくと、限界に近いスピード域のポテンシャルは雨の富士スピードウェイで経験済みだ。
今回のGIROに参加したメディアカー以外の12台のレヴエルトオーナーは、その大半がアヴェンタドールからの乗り換え、もしくは一度はアヴェンタドールを所有したことのある方たちであったので、レヴエルトの洗練された一般道での走りに満足したに違いない。HPEVになったことが一番大きく貢献していることは間違いないが、デュアルクラッチトランスミッション(DCT)になったことも扱いやすさに多大に貢献している。
最初期のアヴェンタドールLP700-4は、シングルクラッチということもあってATモードでの多少のギクシャク感に加え、CORSAモードで本気でサーキットを走った際にはダイレクトにショックが伝わってきて内蔵が飛び出しそうなほどであった。レヴエルトは、ローンチ当初からそうした荒々しさが調教されている。休憩で訪れた三階滝と道の駅真狩フラワーセンターのパーキングでバックで駐車した際も、充実したカメラ機能も相まってストレスを感じることがない。GIRO初日は、レヴエルトの外観からは想像できない扱いやすい一面ばかりが際立った一日であった。
大人しくなった外観でもさらに速くなった「ウルスSE」
2日目は、宿泊したパークハイアットニセコHANAZONOを起点に、余市岳を反時計回りにぐるりと一周する約200kmのコースである。まずステアリングを握るのは2024年4月に発表されたウルスSEだ。レヴエルトと同じくプラグインハイブリッドとなるランボルギーニ初のスーパーSUVである。
市販モデルが2017年に発表され、以来クラストップレベルの速さを誇ってきたウルスであるが、PHEVとなってさらに速く、そしてパワフルになった。これまでランボルギーニの歴代モデルは、モデルライフを重ねるにつれて年次改良だけでなくマイナーチェンジも施しながらポテンシャルを高めてきた。それはウルスSEでも変わらない。ウルスS/ペルフォルマンテは、最高出力666ps・最大トルク850Nmであったが、ウルスSEではシステム合計で最高出力800ps・最大トルク950Nmにもアップしている。
これまでのランボルギーニの歴代モデルであれば、モデル末期になるほどエクステリアデザインは見るからに高性能をアピールするデザインへと移り変わるのが常であった。それはミウラの時代からそうである。しかし、ウルスSEは、闘牛の尾からインスピレーションを得たという新しいフロントライトだけでなく再設計されたフロントグリルなど、ウルスS/ペルフォルマンテと比べるとむしろシンプルで洗練されたラインで上品にまとめ上げられている。エアアウトレットのスリットの入ったボンネットフードにGTウイング風のリアスポイラーなどが標準装備となる、GIROに参加しているウルス ペルフォルマンテと並べて見比べる機会があったが、いかにも速そうだと見えるのは、ウルス ペルフォルマンテの方である。ウルスSEは134psもパワーが上乗せされたとは、とても思えない佇まいだ。
しかし、ウルスSEを走らせてみると、その外観的キャラクターにすぐに合点がいく。PHEV化することでおよそ200kgの重量増となったウルスSEであるが、ウルスS/ペルフォルマンテに比べてゼロ発進からの滑らかさに加え、道の駅望羊中山までのコーナーが続くヒルクライムでは、重量増を微塵も感じさせずにグイグイと余裕たっぷりでレヴエルトの後を追いかける。
また、STRADAに固定している状態だと、エキゾーストノートは非常にジェントル。ローンチ当初のウルスは走行中、エンジンの存在を常に感じられたものだが、ウルスSEはそうではない。スーパーカーと違って普段遣いが前提のSUVであるならば、クルマ側の主張が極力控えめであった方が嬉しいときもある。その点、どこかベントレー・ベンテイガに近しい感もある。もちろん、コクピットから受ける印象は、ベンテイガのゴージャスさではなくランボルギーニのスポーティな世界観が貫かれているのは言うまでもない。
つまり、ウルスSEはさらに扱いやすく、同乗者にやさしくなった。今回のGIROには、子どもと一緒に家族でウルス ペルフォルマンテに乗って参加したオーナーもいて、「家族で乗るランボルギーニ」という地位を確立したウルスであるが、ウルスSEはファミリーカーとしてのポテンシャルが数段アップしている。
もちろんひとりでドライブするときは、ランボルギーニらしい刺激を感じたいというオーナーがほとんどだろう。そういう場合は、ドラブモードをSPORTに切り替えると勇ましいエキゾーストノートを堪能できるし、CORSAへとさらに切り替えるとアイドリング中でもエキゾーストからの振動がシートを伝って感じられるようになる。ウルスSEは、ランボルギーニらしいハードコアな部分は残しつつ、モーターによってさらに滑らかな所作を手に入れたと捉えるといいだろう。洗練され、幾分かエレガントさも加わったウルスSEの外観は、GIRO 2日目に100kmほどのトレイン走行を経て、なるほどと納得したのである。
最高速度では、ウルスS(305km/h)/ペルフォルマンテ(306km/h)を凌ぐ312km/hのウルスSEは、名実ともに世界最速のSUVではある。しかし、0-100km/h加速ではウルス ペルフォルマンテの3.3秒にわずか0.1秒およばない3.4秒。今後、ウルスのPHEV版高性能モデルの登場に期待したいところだ。
この時代にリアミッドV12を新車で選べる幸福
2日目のランチは、札幌オリンピックのジャンプ競技場を眺めながら。ここでウルスSEからレヴエルトへ乗り換える。札幌西ICから札樽自動車道を使って小樽まで、昨日試すことができなかったレヴエルトの実力の一端を試すためにドライブモードをSPORTに切り替える。シート背後にある6.5Lの自然吸気V12エンジンが本来の性能を目覚めさせたがごとく勇ましいサウンドを奏でる。まずは左のパドルシフトでシフトダウンしてそのサウンドに酔いしれる。限界域まで追い込んでスピードを出さなくとも、V12エンジンの咆哮は十二分に堪能できる。
全世界的にEVへシフトして大排気量・多気筒エンジンは滅びてしまうのではという危惧もあったが、1963年に登場した350GT以来常にランボルギーニのフラッグシップモデルに搭載されているV12エンジンには、それは杞憂に終わるだろう。「時」を知るための腕時計も、正確な時刻を知るだけならApple Watchで事足りる。もしくはスマートフォンを持っていれば十分だ。クォーツ腕時計の登場で機械式腕時計は駆逐されると考えられていた時代もあったが、歴史的にはオールドスクールとなった機械式の時計も高級腕時計として生き残っている。
これと同じことがクルマにも当てはまり、富裕層が求めるものはV12エンジンで燃料を燃焼させて走るスーパーカーなのである。絶対的な性能──つまり速さが求められるのは当然のこととして、最高級機械式腕時計にトゥールビヨンが搭載されるのと同じく、スーパーカーにはV12が搭載されているということが大切なのだ。そして、そのV12エンジンのサウンドの魅力を一度でも知った者は、もはやそれ以外では満足することはできないだろう。つまり究極の嗜好品であるV12を、PHEVになってもリアミッドシップで味わえるというパッケージ自体に価値がある。ランボルギーニがカウンタックでV12をリアミッドに縦置き搭載して以来、現在まで連綿と築き上げてきた価値、それは水平対向6気筒エンジンをRRで搭載するポルシェ911を思い浮かべるとわかりやすい。
小樽で運河クルーズを愉しんだあとは、一度小休止を挟んでベースとなるパークハイアットニセコHANAZONOまで、国道5号線を走るルートが用意されていた。余市まで眺めのよい海岸線沿いを走り南下。大倉山ジャンプ競技場から小樽までの約35km、小樽からホテルまでの約65kmというおよそ100kmの区間をレヴエルトで走破したのだが、ホテルの車寄せに到着したときには、心地よい疲労感を伴ってコクピットから降りた。サーキットで試したような200km/hオーバーで走るようなことはなくとも、常にV12サウンドを背後に感じながらのドライブは、それだけで非日常的で冒険的である。メディアカーを除いた12台のレヴエルトオーナーも、きっと2日目のドライブを満喫したに違いない。オーナーたちも軽くスポーツした後のような心地よさと充実感を伴ったドライブであっただろう。
北海道を堪能するホスピタリティに大満足
さて、連泊となったパークハイアットニセコHANAZONOでは、参加者に日中の最高のドライブ体験にまさるとも劣らない特別な演出が施されたディナーが用意されていた。初日のウエルカムディナーでは、アイヌの伝統的なパフォーマンスで北海道ならではの文化とおもてなしを、2日目は、盛大な打ち上げ花火が上がり、GIRO JAPANでは初となるGLAMPING PARTYがテラスで催された。両日とも、それぞれ異なるラウンジでアフターパーティも用意されており、参加者同士がランボルギーニを通じて交流を深めるという貴重な時間となった。ディナーやランチで同席した参加者に聞くと、毎回このGIROを楽しみに参加している方が多かったのも頷ける。
最終日はパークハイアットニセコHANAZONOから国道276号線で道央を南下、国道36号線と国道453号線を結ぶ約30kmの北海道道86号線──四季彩街道と呼ばれる急峻な山間を縫うようなワインディングロードを含む約140kmのツーリングを満喫し、新千歳空港近くに設けられたゴール会場へ。そのあと、ポルトムインターナショナル北海道のフレンチレストランTATERU YOSHINOにクロージングセレモニーが催され、参加者ひとりひとりに、ランボルギーニ ジャパン ディレクターのパオロ・サルトーリ氏から今回のGIROを走り終えた証明書が授与された。
北海道の食材を用いたモダンでクラシックな料理を堪能しながら、テーブルでは早くも来年の開催地についての話題で盛り上がっていたようだ。それほど、ランボルギーニの世界にどっぷりと浸ることができた、濃密で非日常的な冒険心あふれる3日間であったという証である。さて、2026年のGIRO JAPANはどこで開催されるのか、心待ちにしていようではないか。
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