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【試乗】V8 FRフェラーリ、遂に完成の域へ。ローマ スパイダーがもたらす“快感”ハンドリング【野口 優のスーパースポーツ一刀両断!】

フェラーリローマスパイダー
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デイトナスパイダー以来54年ぶりのソフトトップ採用

はじめて試乗した際、「遂に完成の域に達した」と思わせたフェラーリ ローマ。世界的に増加する富裕層に向けて新市場の開拓に拍車がかかった2008年にデビューしたカリフォルニアの流れを汲むその最新版は、今回ラインナップに加わったローマ スパイダーでも同様、ミッドシップのミドルクラス フェラーリとはまた別の機能性と信頼性を得るまでに至った。これは、素直に喜ぶべき事実である。

【画像43枚】「クーペより美しい」は本当か? エレガンスを極めた「ローマ・スパイダー」の流麗なフォルムを徹底チェック

フェラーリらしくエモーショナルな仕上がりを実現

というのは、カリフォルニアのビッグマイナーチェンジ版のカリフォルニアT以降、特にターボエンジンを搭載したFRレイアウトのV8モデルは、どれも“悪くはないが……”という前置きがあって試乗記の執筆を余儀なくされたからだが、ローマは違う。冒頭の台詞通り、信頼できることを前提にフェラーリらしくエモーショナルな仕上がりを実現している。この件に関しては、ただの悪口に受け取られそうだから詳しくは避けるが、ローマの完成度は極めて高く評価できるほど、ラインナップ中もっとも気軽に乗りこなせるフェラーリとして見事なまでのバランス感で魅了する。

その理由としてまず挙げられるのは、48対52という前後重量配分。歴代のFRレイアウトのV8フェラーリの中でわずかながらフロント寄りに改められ、快適性を重視したことにある。これまでならリア寄りにすることでトラクションの優位性を狙っていたようだが、ローマはシャシー制御とエンジン特性で十分にスポーツ性能を演出できると判断したようで、コントロール性の面で一枚上手な挙動を見せる。

それを深く実感するのが、ハンドリング。モード毎に変化するその特性は秀逸で、中でもスポーツモードとレースモードの差が明確。しかも速度域にも応じて可変するゆえ、あらゆるコーナーに対応し、特にレースモードの正確性は見事というほかない。人馬一体とはこのことか! と気づくほど、ドライビングを夢中にさせる。それでいて快適性を維持しているから自ずと速度域が上がってしまう。これを知ってしまうとスポーツモードは不要ではないかと思われそうだが、積極的にテールを流すなどダイナミックなドライビングを行うならスポーツモードしかないだろう。試すことはしなかったものの、そうした動きを示すのは今回の試乗でも垣間見られた。

ノーズの入りの良さはパーフェクト!

もちろん、クーペとスパイダーでは微妙に足まわりのセッティングを変えているが、快適性だけを見れば、スパイダーのほうに軍配は上がる。そのぶん、剛性の低下が……と気になる向きは超ベテランドライバーだろう、なんの心配もいらない。特にリア周りの剛性は相当、綿密に設計されているようで、タイトターンが左右に連続するシーンでも頼もしく、スリップする瞬間すら的確にドライバーに伝えてくるから、遠慮なく攻めることが可能。グリップレベルも相当だが、ダンパーのセッティングもかなり出来が良いのは明白。事実上の前作となるポルトフィーノMとは桁違いで、洗練されたというよりも正解を導き出すことに成功したように思えた。

フェラーリローマスパイダー

最高出力620㎰、最大トルク760Nmを発生する3.9L V8ツインターボ。エキゾーストサウンドもスパイダー用に調整されている。

無論、そうしたシャシー制御はフロントに搭載されるV8ターボエンジンが優れているからだが、長きにわたり造り続けてきたおかげか、もはや熟成の域に達したと思えるほど、エンジン特性もサウンドもグッド! 1900rpmから80%のトルクを発揮することも乗りやすさにつながるが、何よりも3000〜5500rpmという、そこそこのペースのワインディングでは多用する実用域で最大トルク670Nmを活かせるとあって、ピックアップレスポンスは常に鋭く図太い! その後は620psの最大パワーが担うように7500rpmまで引っ張っていくから走ることを止められなくなる。

とにかくノーズの入りの良さはパーフェクト! 8速DCTのシフトスピードも相まってコーナー手前ギリギリでシフトダウンした後、トラクションを活かして旋回し、出口付近からシフトアップし脱出する一連の流れは、もはや快感に値する。クーペも同様の動きを示すが、スパイダーの場合は、それほど足まわりの硬さを伴わないため、爽快感が先立つ。これはFRのオープンモデルならではの悦びだろう。

エントリーモデルにも本気の姿勢が見え隠れする

それに、オープン化されたエクステリアも魅力的だ。むしろこちらのデザインが本命なのかと疑いたくなるほど、クーペよりもエレガントで美しく感じられる。カリフォルニアやポルトフィーノが子どもっぽく思えてくるほどで、この点でも正解にたどり着いた感があるだろう。何しろ、メタルトップではなくソフトトップである。フェラーリはデイトナ スパイダー以来、54年ぶりの採用だと謳うが、それよりも布地のカラーが選べるゆえに洒落ていて粋に映るから、もっと早く気づいてほしかったと文句のひとつでも言ってやりたくなる。ルーフの開閉に要する時間は13.5秒、60km/hまで作動する点も進化の跡がうかがえて、エントリーモデルにも本気の姿勢が見え隠れする。

フェラーリローマスパイダー

コクピットは、クーペからのキャリーオーバーだが、センターコンソールには電動ソフトトップの操作スイッチが加えられている。

ただ、そう褒めてばかりもいられない。どうしても物申したいのは、ステアリング内に設けられたスイッチがタッチパネル式であること。過去にも指摘させてもらったが、これを走行中に操作するのは困難極まりなく、正確性に欠ける。以前のように物理スイッチに戻してほしいと願うのは、おそらく筆者だけではないはずだ。それに、オープン/クローズドのスイッチを左右離してそれぞれ独立させたことも疑問が残る。本来、スポーツモデルというのは、確実に操作させるよう促すのが本質だ。ここだけは改善を望みたい。

【Specification】フェラーリ ローマ・スパイダー

■車両本体価格(税込)=32,800,000円
■全長/全幅/全高=4656/1974/1306mm
■ホイールベース=2670mm
■トレッド(前/後)=1652/1679mm
■車両重量=1556kg
■エンジン形式/種類=V8 DOHC 32V+ツインターボ
■内径×行程=86.5×82.0mm
■圧縮比=9.45:1
■総排気量=3855cc
■最高出力=620ps(456kW)/5750-7500rpm
■最大トルク=760Nm(77.5kg-m)/3000-5750rpm
■燃料タンク容量=80L(プレミアム)
■トランスミッション形式=8速DCT
■サスペンション形式=前:Wウイッシュボーン/コイル、後:マルチリンク/コイル
■ブレーキ=前後Vディスク
■タイヤ(ホイール)=前/後:245/35ZR20/285/35ZR20

【画像43枚】「クーペより美しい」は本当か? エレガンスを極めた「ローマ・スパイダー」の流麗なフォルムを徹底チェック

フォト=篠原晃一 K.Shinohara
野口優

AUTHOR

1967年生まれ。東京都出身。小学生の頃に経験した70年代のスーパーカーブームをきっかけにクルマが好きになり、いつかは自動車雑誌に携わりたいと想い、1993年に輸入車専門誌の編集者としてキャリアをスタート。経験を重ねて1999年には三栄書房に転職、GENROQ編集部に勤務。2008年から同誌の編集長に就任し、2018年にはGENROQ Webを立ち上げた。その後、2020年に独立。フリーランスとしてモータージャーナリスト及びプロデューサーとして活動している。

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