コラム

約30年ぶりのWRC復帰! ランチア・イプシロン RALLY2の激走と初夏のラリージャパン上陸

勝利のために研ぎ澄まされたサラブレッド「イプシロン RALLY2」

ランチア・ストラトス、そしてデルタ・インテグラーレ……。オールドラリーファンのみならず、すべてのクルマ好きの心を激しく揺さぶる伝説のブランド「ランチア・コルセHF」が、2026年のFIA世界ラリー選手権(WRC)開幕戦ラリー・モンテカルロにて、ワークスチームとして奇跡のカムバックを果たした。過去に10回ものWRCマニュファクチャラーチャンピオンに輝いた名門チームが、およそ30年ぶりに世界選手権のトップステージへ帰還したのである。復活の狼煙を上げる武器として仕立てられたのは、量産車をベースとしたRALLY2規定の「イプシロン RALLY2 HFインテグラーレ」だ。

【画像26枚】モンテカルロで牙を剥いた「野獣」。新生ランチア・コルセHFの激闘をフォトギャラリーで追う

全長4070mm、全幅1820mm、ホイールベース2550mmという緊縮されたコンパクトなボディは、車重わずか1230kgに抑えられている。その心臓部には、最高出力287ps/5000rpm、最大トルク425Nm/4000rpmを叩き出す「Lancia Corse HF」チューンの1598cc直列4気筒DOHCターボエンジン(ボア77.0mm×ストローク85.8mm)を搭載。Marelli製ECUで綿密にマネジメントされた強烈なパワーは、SADEV製の5速シーケンシャルギアボックスと機械式ディファレンシャルを介し、AWDシステムによって余すことなく路面へと叩きつけられる。

足元はマクファーソンストラット式サスペンションとReiger製ダンパーで引き締められ、Alcon製キャリパーを奢るベンチレーテッドディスクブレーキ(ローター径:355mm/300mm)が強靭なストッピングパワーを生み出す。まさに現代のラリーステージを制するために最適化された、生粋のコンペティションマシンである。

モンテカルロで剥き出しにした「牙」と、初夏の日本への期待

この新たな野獣を手懐けるステアリングの担い手は、ヨアン・ロッセル(フランス)とニコライ・グリアジン(ブルガリア)の両名。ともに本年トップカテゴリーへ昇格したオリバー・ソルベルグらと、2025年シーズンのWRC2クラスで激しいタイトル争いを演じたトップコンテンダーである。

1月22日にモナコ市街のパドックで行われたオープニングセレモニーでも、この2台のイプシロンRALLY2は熱狂的な視線を独占していた。いざ競技がスタートすると、そのポテンシャルは凄まじかった。開幕のSS1、SS3で早くもグリアジンがクラストップタイムを叩き出し、マシンの圧倒的な競争力を証明してみせる。

勝負の世界ゆえの不運もあった。ロッセルは序盤で壁にマシンをヒットし早々にデイリタイアを喫し、デビューウィンを狙っていたグリアジンも降雪によるシビアなコンディションに足元を掬われ、デイ3のSS12で痛恨のコースオフ。惜しくも優勝争いからは脱落してしまう。だが、名門の底力はここからだった。デイ2から再出走を果たしたロッセルがSS6、SS10、SS11でトップタイムを奪うと、最終日には全4ステージでベストタイムを記録。終わってみれば、ロッセルとグリアジンの2人で全17カ所のSS中、実に9カ所でステージウィナーを獲得するという離れ業を演じてみせたのだ。最終結果はグリアジンがクラス6位、ロッセルがクラス9位となったものの、不運さえなければと思わせる圧倒的な速さは特筆ものであり、今後のシーズンに大きな期待を抱かせるデビュー戦となった。

そして我々日本のファンにとって最大の朗報は、この「イプシロン RALLY2 HFインテグラーレ」が、愛知県と岐阜県を舞台に5月28日から31日にかけて開催されるWRC第7戦「フォーラムエイト・ラリージャパン2026」に登場予定であることだ。

ニコライ・グリアジン

2024年のラリージャパンでは『頭文字D』仕様のシトロエンC3 RALLY2で参戦し、日本でもお馴染みとなったグリアジンは、新マシンについてこう語っている。
「新しいイプシロンRALLY2は、昨シーズンの車両とは全く異なるフィロソフィーで開発されたマシンです。特にターマックでは、ドライビングを楽しめると思います。今年は新緑の季節の開催なので、良い気候になることを望んでいます。日本のファンに会えることは本当にいつも楽しみ。できればまた特別なリバリーを施して出場できたら、もっと面白いかも」と、心憎い予告まで残してくれた。

初夏の爽やかな日本のターマックを、復活の「ランチア・コルセHF」がどう駆け抜けるのか。5月のラリージャパンが、今から待ち遠しくてならない。

【SPECIFICATIONS】Lancia Ypsilon Rally2

全長×全幅: 4070mm × 1820mm
ホイールベース: 2550mm
車両重量: 1230kg
エンジン: Lancia Corse HF 直列4気筒 DOHC ターボ
排気量: 1598cc(ボア77.0mm × ストローク85.8mm)
最高出力: 287ps / 5000rpm
最大トルク: 425Nm / 4000rpm
エンジン制御: Marelli製ECU
駆動方式: AWD(全輪駆動)
トランスミッション: SADEV製 5速シーケンシャル
ディファレンシャル: 機械式ディファレンシャル
サスペンション: マクファーソンストラット / Reiger製ダンパー
ブレーキ: ベンチレーテッドディスク / Alcon製キャリパー
ローター径: 355mm / 300mm
ホイールサイズ: 8×18インチ / 7×15インチ
燃料タンク容量: 80L

【画像26枚】モンテカルロで牙を剥いた「野獣」。新生ランチア・コルセHFの激闘をフォトギャラリーで追う

フォト=三浦正人 M.Miura/ランチア
三浦正人

AUTHOR

モータースポーツライター。SUPER GTやスーパー耐久、ニュルブルクリンク、WRCラリーなどの取材活動をしている。

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