名機「CVCC」から初代「インサイト」、そして「e:HEV」へ。ホンダの環境技術への挑戦の歴史
2026年9月末、本田技研工業がメディアを対象に自社のものづくりや技術を伝える場として「Honda Technology Academy」を開催した。第1回となる今回は「ハイブリッド技術」をテーマに、若手編集者や配属まもない編集者を対象にして行われた。ということで、20代の『ノスタルジックヒーロー』編集部員である筆者が体験会に潜入。現代の自動車技術を支えるハイブリッド技術とは? また、ホンダのハイブリッドの開発思想とは? 実際に試乗も行いながら体感してきた。
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世界初のマスキー法クリアから始まった挑戦。現役エンジニアが語る初代「インサイト」誕生までの軌跡
今回の「Honda Technology Academy」では、第1部として、ハイブリッド開発に携わる現役のエンジニア陣による講義の後、実際に現行のシビック(ガソリン)、シビックe:HEV、シビックe:HEV RSの各モデルに試乗し、ホンダのハイブリッド技術を身をもって体感することができる、という構成になっていた。
一口にハイブリッドといっても、メーカー各社で開発思想にさまざまな違いがあるのだが、ホンダの最新ハイブリッド「e:HEV」はどのような思想から生まれたのだろうか。第1部の講義では、その発端とも言える1970年代の環境問題から解説が始まった。

第1部の講義の様子。開発に携わる現役のエンジニア陣が、プレゼンを行った。
クルマの普及により、公害問題が世界中で社会問題となっていた1970年。米国で排出ガス規制「マスキー法」が制定された。これは多くの自動車メーカーが達成不可能だと主張するほどの厳しい規制だった。
そんな中、ホンダは自動車メーカーとしての社会的責任を果たすべく、低公害エンジンの開発を決意。そして生み出した「CVCCエンジン」は、世界で初めてマスキー法をクリアしたエンジンとなった。

1999年に登場したホンダ初のハイブリッド「インサイト」。量産ガソリン車として当時世界最高の超低燃費35km/Lを実現した。
その後もホンダの環境技術への挑戦は続き、時代は電動化されたクルマの普及が急務となった1990年代へ。「実はホンダは当時からEV(電気自動車)やFCV(燃料電池車)の研究は続けていました」と担当エンジニアは語る。しかし、現実的にEVやFCVを市販化するのは時代的にもまだ難しく、日常の使い勝手を損なわずに環境・燃費にも配慮したハイブリッド車の開発に着手することに。そして1999年に同社初のハイブリッド市販車となる「インサイト」を発売した。
燃費がいいだけじゃない! 3つのモードと独自の制御で「走りの楽しさ」を追求した「e:HEV」の開発思想
現在のホンダのハイブリッド車には、2020年から導入された「e:HEV」が搭載されている。この「e:HEV」は、高効率のハイブリッド方式がもたらす優れた燃費はもちろんだが、最もホンダらしさを感じることができる特徴が「走りの楽しさ」である。
従来のハイブリッド車は「燃費はいいんだけど……」という印象や、強加速時に加速感とエンジン音の高まりが一致しないという違和感が課題となっていた。ホンダのハイブリッド開発思想は燃費の向上や環境への配慮にとどまらず、こうした従来のハイブリッドにあった課題を解決し「ハイブリッドなのに走りが楽しい」クルマを追求することにあるのだ。
従来のハイブリッド方式として一般的なものには、エンジンとモーターが駆動する割合を走行状況に応じて切り替えるシリーズ・パラレル方式と、エンジンで発電し常にモーターの力のみで走行するシリーズ方式がある。
それに対して、ホンダのe:HEVは3つのドライブモードを走行シーンに合わせて使い分ける独自のシステムを採用。発進時や市街地などはバッテリーからの電気のみで走る「EVドライブモード」、強加速時はエンジンで発電を行いながらモーターで走行する「ハイブリッドドライブモード」、高速クルーズ時はエンジンとタイヤをクラッチで直結して走る「エンジンドライブモード」を使い分ける。

講義では「e:HEV」の3つのドライブモードについての説明が。走行シーンに応じて最適なドライブモードが選択される。
一見、エンジンだけで走ると燃費が悪くなるんじゃないの? と思うかもしれないが、エンジンの動力を電気に変換する過程ではエネルギーの変換ロスが起こる。そのためエンジンが得意とする高速走行域では、エンジンとタイヤを直結して走行したほうが効率の良い場合があるのだ。
そして、特徴的な走りの楽しさについては、「リニアシフトコントロール」システムを採用することで実現している。リニアシフトコントロールは、従来のハイブリッドの弱点とされていた、加速感以上にエンジン音が高まる違和感(ラバーバンドフィール)を解消するために取り入れられたシステム。車速の上昇に合わせてエンジン回転数を段階的に制御することで、リズミカルにシフトチェンジするようなエンジンサウンドを実現。発進時や高速道路の合流時など、アクセルペダルを踏み込むシーンで、車速の伸びとエンジンサウンドに一体感のある爽快なフィールを楽しむことができるのだ。
「存在感を消す」から「主張する」ハイブリッドへ。操る喜びをさらに高める新機構「S+Shift」
講義ではさらに、「シビックe:HEV RS」に導入された「S+Shift」の話題にも触れられた。従来のハイブリッドは、ハイブリッドである違和感をなくすため、「存在感を消す」ことを念頭に開発されていた。しかしS+Shiftは、逆にエンジン車のように「存在を主張する」ことを目指して開発されている。
仮想の8段シフトを取り入れ、ドライバーの操作に合わせて変速やパワーマネジメントを緻密に制御することで、人とクルマのシンクロ感が高められている。さらに、エンジン回転に合わせたサウンドをスピーカーから追加する「アクティブサウンドコントロール」を採用し、高回転まで回したくなるサウンドが作り込まれているのだ。
現行シビック3モデル(ガソリン/e:HEV/RS)を乗り比べ! 実車試乗で体感した「e:HEV」と「S+Shift」の真価
ホンダのハイブリッド技術を頭で理解した後は、いよいよ実車に試乗。今回乗り比べたのは3台の現行シビック(ガソリン、e:HEV、e:HEV RS)だ。
まずはガソリンから。乗った瞬間に分かる完成度の高さと、スポーティながら上質な室内空間に気分が高揚する。アクセルを踏み込むと、リニアというよりはじっくりと伸びやかに加速していく感覚。ガソリン車ならではの慣れ親しんだ心地よい加速感だ。また、歴代のシビックと比べるとかなりサイズが大きくなったイメージがあったが、ガソリンモデルは特にハンドルワークがしやすく、軽快に曲がってくれる印象だった。

3モデルの現行シビックを乗り比べ! 各モデルでどのような違いが体感できるのだろうか?
次に標準のe:HEVに試乗。アクセルを踏み込んだ瞬間、リニアなレスポンスでスッとクルマが動き出した。ガソリンモデルに乗った直後だったので、はじめはこのレスポンスの良さに若干とまどったものの、扱いにくさはまったくない。慣れると加速もスムーズで違和感がなく、いつまでも運転したくなるような心地よさがある。加えて高い静粛性にも驚かされた。
最後に「S+Shift」を採用したe:HEV RSに試乗。標準のe:HEV同様にスッと動き出すレスポンスの良さは健在。走り出しは標準のe:HEVとあまり変わらないかも? と感じたが、長い直線でアクセルを踏み込んだ瞬間に大きな違いが。速度の上昇とともに、スピーカーからはまるでガソリン車のスポーツカーのようなエンジンサウンドが響く。エンジン音の高まりと実際の加速感に違和感はまったくなく、爽快な加速フィールが感じられる。これは……楽しい!

「S+Shift」を採用したe:HEV RS。スピーカーから流れるエンジンサウンドの作り込みも秀逸。
さらにハンドルの横にあるパドルシフトを使うことで、実際にギアを変速しているような感覚も味わうことができる。これでハイブリッドならではの燃費の良さや快適性も併せ持っているというのだから、すばらしいのひとことだ。
やはり「運転して楽しい」ことは、クルマを選ぶうえでとても重要なこと。ハイブリッド時代においても、燃費の良さを実現しながら走りの楽しさも忘れないホンダの「e:HEV」。今回の講義と試乗を通して、その魅力を肌で体感することができた。
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