八幡平アスピーテライン(No.021)
南部富士を振り返りながら奥羽山脈を越えてゆく。
奥羽山脈を越えて、岩手県の八幡平市と秋田県の仙北市を結ぶ全長40kmの八幡平アスピーテライン。そのピークは標高1570mの見返峠で、標高1613mの八幡平山頂との高度差はわずか43mしかない。見返峠の駐車場から30分も歩けば、百名山のひとつを登頂できるのである。
アスピーテラインはなだらかな八幡平山頂のすぐ近くを抜けていく道で、岩手側も、秋田側も、タイトなコーナーの連続する登り口で高度を稼いでしまうと、あとは高原地帯を抜けるようにゆったりとしたコーナーを描いていく。ピークに近づくにつれて道の雰囲気が穏やかになっていくという、ちょっと変わった印象の峠道なのだ。
峠ならではの走りを楽しみたい向きには少々物足りない道かも知れないが、しかし、それを補ってなお余りあるのが、見返峠の南東にそびえる岩手山の存在だろう。
南部富士とも呼ばれる岩手山は、標高2038mの独立峰で、昔から地元のシンボルとして親しまれてきた。奥羽山脈から颯爽と独立し、大きな裾野をゆったりと広げる様は、まさに「富士」の呼び名がふさわしい。
かつて八幡平一帯は岩手側も、秋田側も南部藩領で、昔から人の行き来は盛んだった。そんななか、松尾村など岩手山麓に住む人々は、故郷の山を何度も何度も振り返りながら八幡平を越えていったことから、見返峠という優雅な峠の名前が付いたのである。