旅&ドライブ

旅心をかき立てる道。絶景ドライブ100選「日本海オロロンライン(北海道)」

水平線の向こうに利尻富士が浮かぶ最果ての道。

日本海オロロンラインのハイライトは何と言ってもサロベツ原野を南北に貫く道道106号である。

天塩の町を出ると、目の前には定規で引いたような直線路がまっすぐに伸びていく。その先にまず見えてくるのはオトンルイ風力発電所。3kmにわたり、道路と並行して一直線に並ぶ巨大な風車群は、とらえようのない平原の広さを測るスケールのようである。

そこから北の道路沿いで、めぼしい人工物といえば、北緯45度のモニュメント、地吹雪からドライバーを守るパーキングシェルター、それにサロベツ原生花園への道が分岐する稚咲内交差点の信号機くらいのものだろう。

ちなみに天塩から稚内までの約60kmのあいだ、途中にある信号機はこのひとつだけ。もしここを青信号で通り過ぎてしまうと、次にブレーキを踏む必要に迫られるのは、27kmほど先にある抜海という集落の中のクランクコーナー手前ということになる。

 

サロベツ原野の中をまっすぐに延びる道道106号。

原生花園への分岐を過ぎてしばらく走ると、道路脇のガードレールや除雪位置を示す矢印看板もなくなり、視界をさえぎる人工物はほぼ皆無となる。目の前にあるのは緑の平原をゆったりとうねる一筋の道だけ。美しいけれど、時折すれ違う対向車がなければ、不安になってしまうような風景である。そして、ふと左手を見やると、水平線の向こうには利尻富士の姿がぽっかりと浮かび上がっているのに気付く。

 

オロロンラインのシンボルとも言えるのが、洋上にぽっかりと浮かぶ利尻富士の姿。日本百名山のひとつで標高は1719m。

オロロンラインという名前

オロロンラインという名前は、オロロン鳥という海鳥にちなんだものだ。体長45cm、体重は1kgほど。学名ではウミガラスというが、国道沿いのあちこちに立っている巨大な像を見ても分かるとおり、その姿はカラスというよりペンギンに近い。実際、飛ぶことより泳ぐ方が得意な鳥で、主食は巧みに潜水して捕らえるイカや小魚。そして、「オルルーン、オルルーン」という鳴き声から、オロロン鳥と呼ばれるようになったという。

 

道路沿いで時折見かけるオロロン鳥の像。ご覧の通りペンギンのような姿をしている。

ただ残念なことに、この道を走っていればオロロン鳥と出会えるわけではない。天売島などにコロニーを作り、2万羽ものオロロン鳥が棲息していたのは戦前のこと。昭和30年代に入ってニシンが穫れなくなると急激に数を減らし、北海道沿岸ではほとんど見られなくなってしまっている。ニシンとともに姿を消した幻の鳥なのである。

こんな由来をもつオロロンラインは国道231号/232号、道道106号という3本の道をつなぎ、北海道の日本海側をひたすら北上していく。起点は一般的に石狩川の河口周辺、終点は稚内。左手に美しい海原、右手には緑の大地という景色が300km近くにわたって延々と続く。

オロロンラインは留萌の先で北緯44度、サロベツ原野で北緯45度のラインを越える。緯度1度は距離にすると111km。オロロンラインを走っていると、緯度1度ごとにこれとほぼ同じ数字が距離計にプラスされていく。

 

ご当地情報

 

A:オトンルイ風力発電所
道道106号と並行して 一直線に並ぶ28基の風車
日本海からの風が吹き付けるオロロンライン沿いには、いくつもの風力発電施設が建設されている。なかでも圧巻は幌延町にあるオトンルイ風力発電所。ここに建つのは通常より一回り大きい高さ99mの風車28基で、それが道道106号に沿って南北3.1kmにわたり、ずらっと一直線上に並んでいる。見学用道路があるので真下まで行ける。
●天塩郡幌延町字浜里32-4/Tel:01632-5-1111(幌延町役場)

 

B:北防波堤ドーム
かつての栄華を物語る、樺太航路時代の遺産
第二次大戦まで樺太航路の発着場として栄えた稚内港。その北埠頭にあるドームは、防波堤を越えて押し寄せる大波から乗船客を保護するために作られた回廊である。昭和6年(1931年)から5年がかりで建設され、高さは13.2m、総延長は424m。当時、鉄道を降りた人たちはここを通って船に向かったという。北海道遺産に指定。
●稚内市開運/Tel:0162-24-1216(稚内観光協会)

 

C:民宿・最北の宿
稚内の名物たこしゃぶが味わえる宿
宗谷岬のすぐ近く、国道238号をはさんで、『最北の食堂』『最北のガソリンスタンド』などが建ち並ぶ一角にある民宿。稚内名物・たこしゃぶをはじめ、海の幸をふんだんに使った料理が自慢で、追加料金を払えばカニ三昧の夕食も堪能できる。名前こそ民宿ながら、館内の雰囲気はペンション風で、客室はベッドルームが基本となっている。
●1泊2食付7,500円から/ 稚内市宗谷岬2-15/Tel:0162-76-2408

 

ご当地情報

 

D:樺太食堂
獲れたてのウニを心ゆくまで味わえる店
ノシャップ岬のすぐ近くにあるライダーやチャリダーに人気の店。いちばんの人気メニューは、稚内や利尻で獲れた新鮮なウニをたっぷりと盛った“うにだけうに丼(4,536円/季節により変動)”。ウニの量は一般のウニ丼の2倍はあり、写真にあるイクラはサービスという北海道ならではの贅沢な丼だ。
●9:00-16:00(季節・天候により変動)/ 不定休/稚内市ノシャップ2-2-6/ Tel:0162-24-3451

 

E:稚内温泉 童夢
ノシャップ岬のすぐ近く、日本で最も北に湧く温泉
ノシャップ岬の南にある日帰り温泉施設。30年ほど前、石油の試掘で掘り当てた温泉で、淡い黄緑色のサラッとした湯からはかすかに石油臭も漂ってくる。晴れた日には露天風呂から利尻富士が一望。身体の芯まで温まる食塩泉で、最北端の入湯証明書(1部100円)も発行してくれる。
●入浴料600円/9:45-22:00/ 第1月曜など休館/稚内市富士見4-1487/Tel:0162-28-1160

 

F:てしお温泉 夕映
海岸近くの高台から夕焼けと利尻富士を一望
鏡沼海浜公園を見おろす高台にあり、露天風呂やレストラン、客室からは日本海に沈む夕陽や美しい利尻富士の姿 が一望にできる。公営の保養施設なのでリーズナブルな料金で利用できるのが魅力。日帰り入浴ができるほか、レ ストラン(営業時間は曜日により変動)のみの利用もできる。
●1泊2食付6,730円から/日帰り入浴 500円(10:00-22:00)/天塩郡天塩町 字サラキシ5807-1/Tel:01632-2-3111

 

日本海オロロンライン

◎正式名称/道道106号/国道231号/232号
◎区間距離/約290km(石狩市-稚内市)
◎冬季閉鎖/なし
◎撮影時期/7月上旬

アクセスガイド
日本海オロロンラインの南側起点、国道231号・石狩河口大橋までは札幌の中心部から約20km。30分ほどでアクセスできる。そこから国道231号で留萌までは113km、留萌から天塩までは国道232号で112km、そして、道道106号で天塩から稚内までは66km(トータル約290km)。一方、旭川を旅の起点にすると、稚内までは道央道や国道40号を走って290km、5時間程度。

観光情報
稚内観光協会 TEL:0162-24-1216
猿払村観光係 TEL:01635-2-3132
豊富町観光協会 TEL:0162-82-1728
中頓別町総務課 TEL:01634-6-1111
幌延町商工観光係 TEL:01632-5-1111
道北観光連盟 TEL:01654-9-6711

 

文:佐々木 節/写真:平島 格

※料金・営業時間・問合せ先などは平成27年9月時点のものですので、お出かけの際には最新情報をご確認ください。また特に表示のないものは消費税8%税込み料金で、宿泊料は原則2名1室利用時の1名分の料金です。

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